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ー本編ーその辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。
第63話 覚悟はいいか
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「今のは痛かった…痛かったぞぉぉぉおっ!!」
「何だお前もノリが良いじゃないか?漫画は…大好きかぁあっ!?」
更に殴り飛ばし堕天使の時間を巻き戻し翼も無くした。
「クソ…!くそっ!このチート野郎め!
羨ましいんだよ!お前!僕にないもの全部持っていやがって!やっとの思いで手に入れた僕の神の力も軽々しく無くしやがって…!!ちくしょう…ちくしょぉぉっ!!」
「何だ?それが本音か?お前だって転生者ならいくらでもチャンスはあったろう?俺だって、別に最初からこんな力や、ハンドメイドアクセのセンスや、ファッションセンスがあった訳じゃない。
失恋をバネに色々と努力した結果、今の俺があるんだよ。
チート能力だって、俺がハンドメイド趣味に目覚めてこうやって極めてなければこうも行かなかった。」
「だが君は女性にモテるじゃないか!魔女に至っては君が異世界人というだけで惚れている!
きっと彼女は…僕が異世界人だったとしても惚れてはくれない!」
「だろうねぇ。て言うかお前それ俺にもだけど魔女さんに対しても失礼だぞ?俺が異世界人ってだけであの人が本当に惚れると思うか?」
堕天使がひょろひょろパンチで俺に殴りかかってくる。
「うるさい…うるさいうるさいうるさい!!愛されたことのある奴に、愛されない奴の気持ちがわかるか!!」
「わかるわボケ。俺だって26歳までは童貞だったつーの。女性に好かれるために色々と努力して、それでも一回フラれてまたそっから努力して今に至ってんだよ!
自分で言うのもアレだが、こんな下っ腹でも努力さえすりゃそこそこモテるようにはなれるの!
お前みたいに転生を機にイケメンボディとかになったとしても中身がクソならモテないの!よーくわかったろクソが!!」
だんだんバカらしくなってきたので変身を解いて、思いっきりグーパンする。
「て言うかお前転生者って言ってたけど…記憶的には俺らとそうそう変わらないよな?
何年生まれだよ?」
「1998年だ。日本の西暦ならな。
そこから、今から約20年ほど前のこの世界に転生し君達の知る流れがあって今に至っている。」
「何で、せっかく転生したのにまともにやり直そうと思わなかったんだよ?」
「そんなもの、この世界で手に入れた力を使って大量虐殺をしてみたくなったからに決まっている!せっかくの力なのだ。
存分にふるってみたくなるのは当然だ!」
「でも、この世界で恋をしてしまったから色々と拗れたと?お前アホだろ。初めからまともにやっておけば何とかなったかも知れないのに…。」
「仕方ないだろう!僕にはそんな考えに至れる程の心の余裕はなかった!
誰も…愛してくれるなど思ってなかった…。
恋した時点で全てが手遅れだった…!ならば…強引な手を使ってでも手に入れると思ったまでだ!」
足払いして転かして思いっきり顔面に蹴りを入れてやる。
「遠慮がないな…君は…!」
「今までの怨みの分だ。まだ足りてすらいねえよ。それにしたってお前本当にクズだな…。
性根が多少まともなら…やり直すチャンスくらいなんて思ってたけど…。」
「ハッ!なんだい?同情かい?こんな奴相手に同情など、君もまたおめでたいやつだな!」
「今の俺には、お前を殺すのは簡単だ。
でも、お前がそうなった理由があるなら…そう言うの全部受け止めとかないとなんつーか後味悪いだろう…。」
俺たちのやり取りと言うか、さっきからの戦闘を安全圏で見ていた死者の都の住人と天上界の住人たちがざわめき出す。
「殺さないんですか…あなたは?
彼が私たちや、魔女さんにどんなことをしたかは知っているでしょう!」
研究者の一人がそう言うと怒号や非難、殺せと言う声が次々上がる。
「それでもだ!俺だって…ガキの頃の話だし…規模は違うけど…女の子に手をあげたことがある。
母さんにめちゃくちゃ怒られたし、おばあちゃんも泣かせた。でもそうやって間違いを正してくれて、やり直すチャンスをくれた人が居たから、俺は今、こうやって間違わない大人になれた。
間違ったガキに説教くれて正しい道に導いて、やり直すチャンスを与えるのは…大人の仕事だ。」
俺は堕天使にビンタでもくれてやろうと構える。
「だったら、それは俺が引き受けてやるよ。
俺もな、当事者じゃないがそん時に仲間をたくさんやられちゃ居る。恨んでも居る。
だが、アンタがそう言うなら俺も大人として受け入れてやらねぇとな。」
戦士父と盗賊首領が俺の前に割って入る。
「まぁ、どうにもならなさそうだったら頼むぜ?ダンナ。」
盗賊首領が、堕天使の頭をワシっと掴み一度ギロリと睨む。
「よう堕天使野郎。てめぇにゃ言いてぇこた山ほどある。だがよぉ、こちらのお方に免じて今はそいつの話は無しにしてやる。
で、オメェは何で間違っちまったんだ?
一体何がお前の過去にはあったんだ?」
「フン!お前らに話すようなことはない!」
「おいコラ。こっちはせっかく聞いてやろうってなんてんだよ?ちゃんと目見て話せよクソガキ?」
ギリギリギリと頭を掴んで無理やり正面に向ける盗賊首領。
イケオジな見た目に反してなかなかの迫力である。
「わかった!わかったからその万力のような手を離せ!!
言っておくが、面白い話じゃないぞ?」
「あぁ。わかってんよそんくれぇ。面白い人生送ったやつがこんなにひねくれるもんか。」
「僕の世界ではよくある話さ…。
最初は普通に学校にも行っていた。
良い成績を収めて誰もが僕を尊敬し、敬うような状態だった。
だが、親にとっては足りなかったんだ。
私がお前くらいの時は…が口癖のような親で、自分を超えられない僕を理不尽に叱るような奴さ。
友達が欲しくて、話題に乗りたくて、漫画やゲームを買えばすぐに捨てられ怒号を浴びせてくる…。
アニメを見ていればそれもまた怒号を浴びせてテレビを消す…。そんな親さ。
それが嫌で学校帰りに友達の家でそう言うのを楽しんで帰ると友人やその親まで怒るんだ…。
最悪だったよ…。当然、友人は居なくなった。
酷いイジメにもあった。だが、誰も助けてはくれない。むしろ当然だと言い放った。そんな人生さ。」
「わりぃ、こいつ何言ってんだ?」
「あーえーっと…、要するに絵本とか舞台劇とかそう言う娯楽を全て奪われてたって事かな?」
「なるほど!オメェもクソだが親ももっとクソだな!ぶん殴ってやりてぇぜ!」
盗賊首領は涙を浮かべながらブンブンと勢いよく頷く。
「あぁ、だから殺したんだよ。最初は親を。次に友人や教師を…。最後はこの世界が僕を産み出したことを知らしめるために無差別にね!
きっとあの後は、日本では初の、未成年を警官が正当防衛で撃ち殺した事件になったんじゃないかなぁ?
まぁひとまずこんなもんですよ。僕がこうなった流れは。
同情していただくのは結構ですが、僕が犯した罪は前の世界でもこの世界でも消えませんよ?
もういいですよ。さっさと僕を殺して頂けませんか…?」
「その前に一応聞くけど、魔女さんの呪いを解呪するにはお前を殺さないといけないのか?」
「えぇ。そう言う呪いですから。」
「あぁ?呪い?魔女さんってのはさっきからそこにいる東の魔女か?どんな呪いかけたんだテメェ。言ってみろ。」
服を掴んで凄い気迫で問いただす盗賊首領。
「一定年齢までに子どもを産まないと死ぬ呪いだよ。頑なに異世界人としか子を作らないと拒むのでね。異世界人が現れても、そう言う関係には至らないだろうと言う賭けとしてかけてやったのさ。」
「んっとにゲスだなぁテメェは…。
はぁ…。【王泥棒】!!」
「は…?貴様…僕の呪いをスキルで取り去ったと言うのか…?」
「正確には奪っただ。俺のスキルは奪いたいと思ったものは命だろうが何だろうが簡単に奪える。んで、奪った物を押し付けることも出来る。
オラ、お前にこの呪い押し付けてやるよ。」
そう言って盗賊首領は堕天使に腹パンする。
「お前も死ぬまでにガキ作って頑張って呪いを回避するんだな。」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ!私が何年も苦労して、そして皆でここまで頑張ってここまで来たと言うのに君はそのスキルで簡単にわたしから呪いを奪った挙句、彼に押し付けたと言うのかい!?」
「あぁ。間違いなく奪い取ったぜ?
んで、そのクソガキに押し付けてやった。
まぁそのあとどうするかはもうお前さんに任す。
と言うか、東の魔女、トドメはお前がさすべきだな。
下手なことできないように縛ってあるから後は好きにしな。」
コツコツと床を鳴らしながら堕天使に近付く魔女さん。
「さて、どうしてあげようかな…。
君の境遇に確かに同情はするよ。そんなに歪んでしまったことについてもね。
だが…、賢者くんが言うように罰するのはとても簡単な事だ。
しかし、君を正すのはとても難しい。
君を怨む物は天上界にも地上にも沢山いる。
君を許すのはとてつもなく難しい事だ。
多くの命を奪い、別の未来では私に最悪の屈辱と悲劇を味あわせた君をどう許せと言うのか…。
私には…わからないよ。
一つだけ言っておく。君が例えどんな男になろうと私は君を愛することはないだろう。
それは君が異世界人かどうかと言う話ではない。
私の大切な人や私自身を傷付けたからだ。
それはもう覆らない。
だから君は、誰かに恋をするなら私以外の誰かにしたまえ。
男を磨き、一人の女に愛される男になりたまえ。
400年もあればそれくらい出来るだろう。
しかし、君は今までそんな辛い気持ちを抱えていたんだね…。つらかったね…。苦しかったね…。」
魔女さんはそう言うと、そっと優しく微笑みながら堕天使の頬を撫でて、優しく抱きしめてあげていた。
「僕を…許してくれるのか…?こんな事をした僕を…。」
「許すとは言ってないさ。それに私にその権限があるとも思ってない。
最後に沙汰を下すのは、私でも大賢者でもなく天使長の役目だろうからね…。」
そう言うと皆がザッと移動して奥から天使長と思われる人が…。
天使長と…思われる…が…。
「えっ!?えっ?僕がこれどうするか決めるのぉっ!?ふぇぇえぇっ!?待って待って!どうすれば正解なのこの流れ!僕無理ぃいっ!こんな重たいの決めるの無理ぃいっ!誰か代わってぇえっ!
やぁだぁぁあっ!!」
駄々っ子の僕っ子少女が現れた。
「…………。」
一斉に皆が沈黙しながら天使長を見守る。
「じゃーーーー。しけい!」
「って、軽いなオイ!!もっとこう…!あるだろぉっ!?例えば、過去の記憶リセットして地上にエルフ族として落として育て直すとかそう言うの!!」
「良いねぇ!だいけんじゃ~!うんっ!じゃ、それ採用ね?みんなー!意義はー?」
皆が顔を見合わせる。
そして一斉に意義なぁぁあし!の声が響き渡る。
「おいおい。軽いな…。みんなこいつに殺されたわけなのに…。」
「私たちの死の概念なんてこんなもんさ。死んだら天上界で暮らすことになる。死者は天上界から地上に残った家族を見守る。そして、そのうち天使長のタイミングで地上に再び記憶をリセットされて転生する…。
この世界はそう言うものだからね。
もちろん、天と地は早々簡単に行き来出来るものじゃないから、死に別れっていうのは結構辛いものはあるけどね。
ただ、こうやって特例で来ることは出来たんだ…。
私も悔いはないよ。皆にきちんと謝罪とお別れをしてからここを離れることにしよう。
目的も達せられた事だしね…。」
と言うと天使長に腹のあたりをツンツンされてにこーっとこっちを見られる。
何か嫌な予感がするぞ…。
「だいけんじゃっ!問題です!私たちの住むお家はどうなっているでしょーかっ!?」
……………。
「す、すみません…。戦いの果てに思いっきり破壊してしまいました…。」
「どする?これ、僕たちどするー?」
「あははは…。時間を巻き戻して再生させるなりしますかね…。」
「んにゃ、そこまでしなくて良いよ。んとね、僕考えたの!
そこの堕天使だけを地上に転生させて生き返らせて人生リセットなんて不公平だと思わない?
だからね、そいつに殺された人みーーんな、エルフ族にしちゃおっかなって♪」
「……。まじぽんですか…。」
「うん!まじぽん!だから、君が君のお城と城下町で面倒みてよ!西の国の長なんでしょ?
それくらい良いよねー?
これだけ僕たちの世界壊しちゃったんだから…。」
俺はみんなの方を見る。
やれやれとかこっち見るなって顔をされる。
「はい…。心得ました…。」
「そいつに殺された人…か。
じゃ、俺たちやそこの嬢ちゃんたちのお父ちゃんお母ちゃん達は、対象外…だな。」
そっか…。そう言うことになるのか…。
「……。次元斬を使えば会おうと思えば幾らでも会いには来れるとは思うけど…。
本当はいけないことよね…これって…。
あの…天使長様…。キチンと…みんなにお別れさせてもらっても…?」
「うん!良いよー!許すっ!
ただ、君が言うように本来肉体を持つものが天上界に来ると言う行為は確かに地底界に落とされても文句は言えないね!ただ、今回は君達が居なかったら僕たちが危なかったからオッケー!次はないからね?」
そんなこんなわけで、堕天使は記憶をリセットして地上にエルフ族として堕とす。
即ち、転生させる事に。
堕天使が殺したものたちはエルフ族の肉体を与えて記憶や見た目年齢はそのままに復活させると言う事になった。
大盤振舞いも良いところである。
これは俺が天上界に現れた邪神を結果はどうあれ討伐したから、それに対する余り懐が痛まない報酬として…と言うことのようだ。
特例中の特例なのは間違いない…。
尚、堕天使はすぐには転生はさせないと言う事、転生後も一定年齢までに子を産まないと死ぬ呪いの継続、そして、その運命は生前犯した大罪によりその魂に刻まれたものであることを告げる事も約束の一つとして取り決められ、その場で転生前の準備として卵にされた。
心なしか、卵にされる瞬間の堕天使は救われたような顔をしていた。
これで今回の件は全て終わった。
あとは…戦士ちゃんと妹ちゃん、盗賊ちゃんには大切な人たちとの別れをして貰って地上に変える事にしよう…。
これが本当に良い結果だったのかはわからないが…。
どんな奴にだってやり直すチャンスの一つくらいはくれてやるべきだ。
例えそれがどんなに性根の腐った悪党だろうと…。
願わくば、彼の新しい人生に幸福があらんことを…だ。
「何だお前もノリが良いじゃないか?漫画は…大好きかぁあっ!?」
更に殴り飛ばし堕天使の時間を巻き戻し翼も無くした。
「クソ…!くそっ!このチート野郎め!
羨ましいんだよ!お前!僕にないもの全部持っていやがって!やっとの思いで手に入れた僕の神の力も軽々しく無くしやがって…!!ちくしょう…ちくしょぉぉっ!!」
「何だ?それが本音か?お前だって転生者ならいくらでもチャンスはあったろう?俺だって、別に最初からこんな力や、ハンドメイドアクセのセンスや、ファッションセンスがあった訳じゃない。
失恋をバネに色々と努力した結果、今の俺があるんだよ。
チート能力だって、俺がハンドメイド趣味に目覚めてこうやって極めてなければこうも行かなかった。」
「だが君は女性にモテるじゃないか!魔女に至っては君が異世界人というだけで惚れている!
きっと彼女は…僕が異世界人だったとしても惚れてはくれない!」
「だろうねぇ。て言うかお前それ俺にもだけど魔女さんに対しても失礼だぞ?俺が異世界人ってだけであの人が本当に惚れると思うか?」
堕天使がひょろひょろパンチで俺に殴りかかってくる。
「うるさい…うるさいうるさいうるさい!!愛されたことのある奴に、愛されない奴の気持ちがわかるか!!」
「わかるわボケ。俺だって26歳までは童貞だったつーの。女性に好かれるために色々と努力して、それでも一回フラれてまたそっから努力して今に至ってんだよ!
自分で言うのもアレだが、こんな下っ腹でも努力さえすりゃそこそこモテるようにはなれるの!
お前みたいに転生を機にイケメンボディとかになったとしても中身がクソならモテないの!よーくわかったろクソが!!」
だんだんバカらしくなってきたので変身を解いて、思いっきりグーパンする。
「て言うかお前転生者って言ってたけど…記憶的には俺らとそうそう変わらないよな?
何年生まれだよ?」
「1998年だ。日本の西暦ならな。
そこから、今から約20年ほど前のこの世界に転生し君達の知る流れがあって今に至っている。」
「何で、せっかく転生したのにまともにやり直そうと思わなかったんだよ?」
「そんなもの、この世界で手に入れた力を使って大量虐殺をしてみたくなったからに決まっている!せっかくの力なのだ。
存分にふるってみたくなるのは当然だ!」
「でも、この世界で恋をしてしまったから色々と拗れたと?お前アホだろ。初めからまともにやっておけば何とかなったかも知れないのに…。」
「仕方ないだろう!僕にはそんな考えに至れる程の心の余裕はなかった!
誰も…愛してくれるなど思ってなかった…。
恋した時点で全てが手遅れだった…!ならば…強引な手を使ってでも手に入れると思ったまでだ!」
足払いして転かして思いっきり顔面に蹴りを入れてやる。
「遠慮がないな…君は…!」
「今までの怨みの分だ。まだ足りてすらいねえよ。それにしたってお前本当にクズだな…。
性根が多少まともなら…やり直すチャンスくらいなんて思ってたけど…。」
「ハッ!なんだい?同情かい?こんな奴相手に同情など、君もまたおめでたいやつだな!」
「今の俺には、お前を殺すのは簡単だ。
でも、お前がそうなった理由があるなら…そう言うの全部受け止めとかないとなんつーか後味悪いだろう…。」
俺たちのやり取りと言うか、さっきからの戦闘を安全圏で見ていた死者の都の住人と天上界の住人たちがざわめき出す。
「殺さないんですか…あなたは?
彼が私たちや、魔女さんにどんなことをしたかは知っているでしょう!」
研究者の一人がそう言うと怒号や非難、殺せと言う声が次々上がる。
「それでもだ!俺だって…ガキの頃の話だし…規模は違うけど…女の子に手をあげたことがある。
母さんにめちゃくちゃ怒られたし、おばあちゃんも泣かせた。でもそうやって間違いを正してくれて、やり直すチャンスをくれた人が居たから、俺は今、こうやって間違わない大人になれた。
間違ったガキに説教くれて正しい道に導いて、やり直すチャンスを与えるのは…大人の仕事だ。」
俺は堕天使にビンタでもくれてやろうと構える。
「だったら、それは俺が引き受けてやるよ。
俺もな、当事者じゃないがそん時に仲間をたくさんやられちゃ居る。恨んでも居る。
だが、アンタがそう言うなら俺も大人として受け入れてやらねぇとな。」
戦士父と盗賊首領が俺の前に割って入る。
「まぁ、どうにもならなさそうだったら頼むぜ?ダンナ。」
盗賊首領が、堕天使の頭をワシっと掴み一度ギロリと睨む。
「よう堕天使野郎。てめぇにゃ言いてぇこた山ほどある。だがよぉ、こちらのお方に免じて今はそいつの話は無しにしてやる。
で、オメェは何で間違っちまったんだ?
一体何がお前の過去にはあったんだ?」
「フン!お前らに話すようなことはない!」
「おいコラ。こっちはせっかく聞いてやろうってなんてんだよ?ちゃんと目見て話せよクソガキ?」
ギリギリギリと頭を掴んで無理やり正面に向ける盗賊首領。
イケオジな見た目に反してなかなかの迫力である。
「わかった!わかったからその万力のような手を離せ!!
言っておくが、面白い話じゃないぞ?」
「あぁ。わかってんよそんくれぇ。面白い人生送ったやつがこんなにひねくれるもんか。」
「僕の世界ではよくある話さ…。
最初は普通に学校にも行っていた。
良い成績を収めて誰もが僕を尊敬し、敬うような状態だった。
だが、親にとっては足りなかったんだ。
私がお前くらいの時は…が口癖のような親で、自分を超えられない僕を理不尽に叱るような奴さ。
友達が欲しくて、話題に乗りたくて、漫画やゲームを買えばすぐに捨てられ怒号を浴びせてくる…。
アニメを見ていればそれもまた怒号を浴びせてテレビを消す…。そんな親さ。
それが嫌で学校帰りに友達の家でそう言うのを楽しんで帰ると友人やその親まで怒るんだ…。
最悪だったよ…。当然、友人は居なくなった。
酷いイジメにもあった。だが、誰も助けてはくれない。むしろ当然だと言い放った。そんな人生さ。」
「わりぃ、こいつ何言ってんだ?」
「あーえーっと…、要するに絵本とか舞台劇とかそう言う娯楽を全て奪われてたって事かな?」
「なるほど!オメェもクソだが親ももっとクソだな!ぶん殴ってやりてぇぜ!」
盗賊首領は涙を浮かべながらブンブンと勢いよく頷く。
「あぁ、だから殺したんだよ。最初は親を。次に友人や教師を…。最後はこの世界が僕を産み出したことを知らしめるために無差別にね!
きっとあの後は、日本では初の、未成年を警官が正当防衛で撃ち殺した事件になったんじゃないかなぁ?
まぁひとまずこんなもんですよ。僕がこうなった流れは。
同情していただくのは結構ですが、僕が犯した罪は前の世界でもこの世界でも消えませんよ?
もういいですよ。さっさと僕を殺して頂けませんか…?」
「その前に一応聞くけど、魔女さんの呪いを解呪するにはお前を殺さないといけないのか?」
「えぇ。そう言う呪いですから。」
「あぁ?呪い?魔女さんってのはさっきからそこにいる東の魔女か?どんな呪いかけたんだテメェ。言ってみろ。」
服を掴んで凄い気迫で問いただす盗賊首領。
「一定年齢までに子どもを産まないと死ぬ呪いだよ。頑なに異世界人としか子を作らないと拒むのでね。異世界人が現れても、そう言う関係には至らないだろうと言う賭けとしてかけてやったのさ。」
「んっとにゲスだなぁテメェは…。
はぁ…。【王泥棒】!!」
「は…?貴様…僕の呪いをスキルで取り去ったと言うのか…?」
「正確には奪っただ。俺のスキルは奪いたいと思ったものは命だろうが何だろうが簡単に奪える。んで、奪った物を押し付けることも出来る。
オラ、お前にこの呪い押し付けてやるよ。」
そう言って盗賊首領は堕天使に腹パンする。
「お前も死ぬまでにガキ作って頑張って呪いを回避するんだな。」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ!私が何年も苦労して、そして皆でここまで頑張ってここまで来たと言うのに君はそのスキルで簡単にわたしから呪いを奪った挙句、彼に押し付けたと言うのかい!?」
「あぁ。間違いなく奪い取ったぜ?
んで、そのクソガキに押し付けてやった。
まぁそのあとどうするかはもうお前さんに任す。
と言うか、東の魔女、トドメはお前がさすべきだな。
下手なことできないように縛ってあるから後は好きにしな。」
コツコツと床を鳴らしながら堕天使に近付く魔女さん。
「さて、どうしてあげようかな…。
君の境遇に確かに同情はするよ。そんなに歪んでしまったことについてもね。
だが…、賢者くんが言うように罰するのはとても簡単な事だ。
しかし、君を正すのはとても難しい。
君を怨む物は天上界にも地上にも沢山いる。
君を許すのはとてつもなく難しい事だ。
多くの命を奪い、別の未来では私に最悪の屈辱と悲劇を味あわせた君をどう許せと言うのか…。
私には…わからないよ。
一つだけ言っておく。君が例えどんな男になろうと私は君を愛することはないだろう。
それは君が異世界人かどうかと言う話ではない。
私の大切な人や私自身を傷付けたからだ。
それはもう覆らない。
だから君は、誰かに恋をするなら私以外の誰かにしたまえ。
男を磨き、一人の女に愛される男になりたまえ。
400年もあればそれくらい出来るだろう。
しかし、君は今までそんな辛い気持ちを抱えていたんだね…。つらかったね…。苦しかったね…。」
魔女さんはそう言うと、そっと優しく微笑みながら堕天使の頬を撫でて、優しく抱きしめてあげていた。
「僕を…許してくれるのか…?こんな事をした僕を…。」
「許すとは言ってないさ。それに私にその権限があるとも思ってない。
最後に沙汰を下すのは、私でも大賢者でもなく天使長の役目だろうからね…。」
そう言うと皆がザッと移動して奥から天使長と思われる人が…。
天使長と…思われる…が…。
「えっ!?えっ?僕がこれどうするか決めるのぉっ!?ふぇぇえぇっ!?待って待って!どうすれば正解なのこの流れ!僕無理ぃいっ!こんな重たいの決めるの無理ぃいっ!誰か代わってぇえっ!
やぁだぁぁあっ!!」
駄々っ子の僕っ子少女が現れた。
「…………。」
一斉に皆が沈黙しながら天使長を見守る。
「じゃーーーー。しけい!」
「って、軽いなオイ!!もっとこう…!あるだろぉっ!?例えば、過去の記憶リセットして地上にエルフ族として落として育て直すとかそう言うの!!」
「良いねぇ!だいけんじゃ~!うんっ!じゃ、それ採用ね?みんなー!意義はー?」
皆が顔を見合わせる。
そして一斉に意義なぁぁあし!の声が響き渡る。
「おいおい。軽いな…。みんなこいつに殺されたわけなのに…。」
「私たちの死の概念なんてこんなもんさ。死んだら天上界で暮らすことになる。死者は天上界から地上に残った家族を見守る。そして、そのうち天使長のタイミングで地上に再び記憶をリセットされて転生する…。
この世界はそう言うものだからね。
もちろん、天と地は早々簡単に行き来出来るものじゃないから、死に別れっていうのは結構辛いものはあるけどね。
ただ、こうやって特例で来ることは出来たんだ…。
私も悔いはないよ。皆にきちんと謝罪とお別れをしてからここを離れることにしよう。
目的も達せられた事だしね…。」
と言うと天使長に腹のあたりをツンツンされてにこーっとこっちを見られる。
何か嫌な予感がするぞ…。
「だいけんじゃっ!問題です!私たちの住むお家はどうなっているでしょーかっ!?」
……………。
「す、すみません…。戦いの果てに思いっきり破壊してしまいました…。」
「どする?これ、僕たちどするー?」
「あははは…。時間を巻き戻して再生させるなりしますかね…。」
「んにゃ、そこまでしなくて良いよ。んとね、僕考えたの!
そこの堕天使だけを地上に転生させて生き返らせて人生リセットなんて不公平だと思わない?
だからね、そいつに殺された人みーーんな、エルフ族にしちゃおっかなって♪」
「……。まじぽんですか…。」
「うん!まじぽん!だから、君が君のお城と城下町で面倒みてよ!西の国の長なんでしょ?
それくらい良いよねー?
これだけ僕たちの世界壊しちゃったんだから…。」
俺はみんなの方を見る。
やれやれとかこっち見るなって顔をされる。
「はい…。心得ました…。」
「そいつに殺された人…か。
じゃ、俺たちやそこの嬢ちゃんたちのお父ちゃんお母ちゃん達は、対象外…だな。」
そっか…。そう言うことになるのか…。
「……。次元斬を使えば会おうと思えば幾らでも会いには来れるとは思うけど…。
本当はいけないことよね…これって…。
あの…天使長様…。キチンと…みんなにお別れさせてもらっても…?」
「うん!良いよー!許すっ!
ただ、君が言うように本来肉体を持つものが天上界に来ると言う行為は確かに地底界に落とされても文句は言えないね!ただ、今回は君達が居なかったら僕たちが危なかったからオッケー!次はないからね?」
そんなこんなわけで、堕天使は記憶をリセットして地上にエルフ族として堕とす。
即ち、転生させる事に。
堕天使が殺したものたちはエルフ族の肉体を与えて記憶や見た目年齢はそのままに復活させると言う事になった。
大盤振舞いも良いところである。
これは俺が天上界に現れた邪神を結果はどうあれ討伐したから、それに対する余り懐が痛まない報酬として…と言うことのようだ。
特例中の特例なのは間違いない…。
尚、堕天使はすぐには転生はさせないと言う事、転生後も一定年齢までに子を産まないと死ぬ呪いの継続、そして、その運命は生前犯した大罪によりその魂に刻まれたものであることを告げる事も約束の一つとして取り決められ、その場で転生前の準備として卵にされた。
心なしか、卵にされる瞬間の堕天使は救われたような顔をしていた。
これで今回の件は全て終わった。
あとは…戦士ちゃんと妹ちゃん、盗賊ちゃんには大切な人たちとの別れをして貰って地上に変える事にしよう…。
これが本当に良い結果だったのかはわからないが…。
どんな奴にだってやり直すチャンスの一つくらいはくれてやるべきだ。
例えそれがどんなに性根の腐った悪党だろうと…。
願わくば、彼の新しい人生に幸福があらんことを…だ。
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