オレにだけ「ステイタス画面」っていうのが見える。

黒茶

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ほぼ初対面の先輩に、恋の相談をしてみた。

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 昨日ちょっと話しただけなのに、
なぜかヴァルター先輩にオレの素性がバレていて、
半ば拉致られて、ひとけのないガゼボで面談をさせられ。
なんかもう怖いから
「『ステータス画面』っていうのが見えて、
そこにその人の名前や性格などが書かれている」
とヴァルター先輩にぶっちゃけちゃった後。

ヴァルター先輩は続けて言った。

「今後も『ステータス画面』が見えるという話は、
他の人間にはするなよ」

オレはなんでほぼ初対面のヴァルター先輩にそんなこと言われなきゃいけないんだと思いつつ、
偉大な先輩であることには違いないので、

「あ、はい、わかりました」

と答えた。

「それから!
俺の本性も絶対に他の人間には言わないように!
この学園で俺の本性を知っているヤツは、
アルベルトと、レグルスと、君の3人だけだからな。
バラしたらどうなるか・・・わかるよね!?」

ヴァルター先輩は笑顔なのに鬼気迫る雰囲気で続けた。
ひぃ、怖い!

「わかりました、わかりました、誰にも言いませんから!」

オレは慌てて答えた。

「よし、わかればいい。
じゃあそのお礼に、君の悩みを俺に相談してみろ。
これでも俺はこの魔法騎士学院の中では優秀な部類に入るからな、
俺ならきっと解決の糸口がつかめるはずだ」

唐突になんだ。

実はこのとき、ヴァルター先輩は自分だけ秘密がバレたのが不服で、
オレの秘密も自分でにぎろうと思ってこんなことを言いだしたらしいのだが、
このときのオレはそんなことは夢にも思わず、

ちょっと考えた。

『ステータス画面』のこともばらしちゃったし、
案外この先輩、話しやすいんだよなぁ。
オレの言うことを、
「そんなこと、あるわけない」
とか言って遮ったり否定したりもしないし、
ちゃんとオレの話を最後まで聞いてくれる。
じゃあオレの悩みもちゃんと聞いてくれるかもしれない。

そしてオレはおもむろに話し始めた。

「じゃあ遠慮なく・・・」

「なんだ」

「オレ、好きなヤツがいるんですよ」

「いきなり恋バナか」

「はい。いけませんか?」

「いや、いけなくはないが・・・」

ちょっとヴァルター先輩が困惑しているように見えたが、
おかまいなしにオレは続けた。

「その相手というのはどういうヤツなんだ?」

「それが、同じクラスの、一番仲がいいルーカスっていうやつなんですよ。
一緒にいて楽しくて」

「そうか、いいじゃないか」

「いや、よくないんですよ。
オレが好きだって気持ちを伝えているのに、
本人に全然伝わってないんですよ」

「いや、どういうことだ?
そんなことあるのか?」

ヴァルター先輩は心底不思議そうに言った。

「それがあるんですよ。
好きだって毎日のように伝えているのに、
オレも好きだぜ~って軽く返されてて。
このままじゃいつまでたってもアイツにオレの気持ちが伝わんないんすよ・・・
どうしたらいいですかね!?」

ほぼ初対面の大先輩にこんなことを聞いて、
我ながらどうかしてると思うけど、
きっと人生経験豊富な先輩ならいいアドバイスをくれるに違いない!

するとヴァルター先輩は、
言葉を選びながらゆっくりと答えた。

「あー、申し訳ないのだが、
俺は何かを手に入れたくて、でも手に入らない、
という経験はしたことないんだ」

え、そんな人いるの!?

「だから君の気持ちはさっぱり理解できないし、
解決策もわからない」

えええ、全然頼りにならないじゃないか。

「それに俺が人間嫌いなのは君がよく知っているんだろう?
そんな俺が恋愛とか、経験があるわけないじゃないか」

ああ・・・完全に相談する人を間違えた。

「そうですよね、
先輩に変なこと言っちゃってゴメンナサイ、
どうぞ忘れてください。
オレの存在ごと忘れてもらってかまわないです。
先輩の秘密は誰にもいいませんから、
どうぞご心配なく」

そう言ってオレは席を立とうとした。
するとヴァルター先輩も立ち上がって、オレの左肩に手を置いて言った。

「待ってくれ。

俺が経験したことがない、
欲しいものを手に入れたい、でも手に入れない、
という気持ちと、
それに悩む君に、
俺は俄然興味がわいたぞ。

もっと俺と話をさせてくれないか?」

え、どんな環境で生活してきたんだよ、この先輩。

「申し訳ないんですけど、
オレは先輩に少しも興味ないです」

 すると先輩はショックを受けた顔をしていた。
なんでだよ。
オレは何もおかしなことを言っていないぞ。
再び立ち去ろうとするオレに先輩は慌てて言った。

「じゃあ、
これから俺が定期的に魔法や勉強を教えてあげるというのはどうだろう?
魔法や勉強ができるようになれば、
そのルーカスとやらも君に一目置くようになって、
君に好意を抱くようになるかもしれない」

お、
恋愛未経験のヴァルター先輩にしてはいいアドバイス!
ルーカスは強いのが大好きでルーカス自身もめちゃくちゃ頑張り屋さんだからな、
強いヤツには惹かれる可能性大だ!

「それは助かります!
ぜひよろしくお願いします!」

オレが笑顔でそう答えると、
心なしかヴァルター先輩はほっとした顔をしていた。
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