オレにだけ「ステイタス画面」っていうのが見える。

黒茶

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先輩と色々話すようになった。

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 オレがヴァルター先輩に定期的に呼び出されて、
魔法や勉強を教えてもらうようになってしばらくの月日が経った。

先輩もオレも、お互いにかなり打ち解けてしゃべれるようになってきた。

「そういえば、先輩の本性ってオレのほかにご友人のお二人も知ってるんですよね。
元から仲がよかったんですか?」

「ああ、そうだな。
幼い頃から家同士の交流があって、ずっと腐れ縁だ」

「へぇ~。オレはそんな幼馴染とかいないから、羨ましいっす。
どんな人なんですか?」

「んー、そうだな、
アルベルトは、いろんな意味でヤバいやつだ。
絶対に敵に回したくないタイプだな」

「え、先輩にそこまで言わせるなんてよっぽどじゃないですか」

オレはつい笑いだしてしまった。

「大げさに言ってるんじゃないぞ。
アイツは魔法も剣も規格外だし、
なにより頭の回転とか洞察力とかがすごすぎるんだ。
そして性格が悪い。
アイツには隠し事とか出来ない気がする・・・。」

ひえー、どんだけだよ、アルベルト先輩。
友達に性格が悪いって断言されるとか。
それでも友達を続けてるってことは、そこが癖になるのかな?

「レグルスもすごいヤツだが、
あいつはいいやつだ。
アルベルトもレグルスだけには頭が上がらないというか、
レグルスがいいようにコントロールしているというか・・・
まああいつらは・・・とても仲がいい」

へ、へえ・・・
性格だけだけみたら水と油の関係っぽいけど、仲がいいんだ。
レグルス先輩が一枚上手ってことなのかな?

「アルベルト先輩には隠し事ができないって先輩は言ってましたけど、
この勉強会のことはお二人には伝えてるんですか?」

とオレが聞いたら、先輩は、

「いや・・・」

と言葉を濁した。

「そうなんですか、仲がいいお二人にはてっきりこの勉強会ことは
お伝えしているもんかと思ってました」

「そうだな・・・
二人には伝えてもかまわないはずなんだけどな・・・
なぜか俺とクラウスの二人の秘密にしておきたいと思ってしまったんだ」

なぜ。

まあ、先輩には先輩の付き合い方があるんだろう。

ついでに、実はずっと気になっていたことを聞いてみることにした。
いや、ここは踏み込んでいい所なのかずっと迷っていたけど、
なんだか今日は答えてくれそうな気がして、聞いてみた。

「先輩は、『ステータス画面』には『人間嫌い』って書いてあるんですけど、
それってなにか理由があるんですか?」

すると先輩はオレが思ったよりずっとさらっと答えてくれた。

「ああ、そうだな、
子供の頃・・・
俺は大変かわいらしい見た目をしていたらしい」

ほう。
この人、急にすごいこと言い出したな。

「それで、誰が俺の世話係をするかでもめて、
メイド同士が殺傷事件を起こした」

え、予想外の展開。急に血なまぐさい。

「メイドや教育係から
過度のスキンシップをされたり、
寝所にしのびこまれたり、
誘惑されたりしたのは、
一度や二度ではない」

え、怖い。怖すぎる。

「幸い、俺の親はまともな人間だったからすぐに対処してくれたけどな」

よかった。ご両親のおかげで先輩の貞操?は守られていたわけだ。

「その後も俺はなにかと他人の好意を引き寄せてしまうらしい。

俺の見た目に魅せられたもの、
俺の魔法の技術に魅せられたもの、
俺の肩書や家の財産に魅せられたもの。

どれもこれも、俺の気持ちなんかこれっぽっちも考えてはいない。
自分の欲望を押し付けてくる奴らばかりだ。

幼少期からそんな環境に身を置いていれば、
おのずと性格は歪み、本当の自分を見せるのがばからしくなる。

あいつらが望む、
いつも穏やかで自分に優しい俺を演じてやれば、
俺に、自分にとって都合のいい嘘をつかれているとも気づかずに、
あいつらはバカみたいに喜ぶ。

まあそれが余計なトラブルを起こすこともなく、一番楽なんだ。
それに、
内心では、そんな奴らを冷めた目でさげすんでいる。

それが本来の『人間嫌い』の俺だ。

どうだ?こんな俺でがっかりしたか?」

俺は先輩の話を聞いて、下を向き、怒りに震えていた。

「本性を知ってたとはいえ、俺がこんなことを考えていたなんて、
許せないか。それはそうだろう・・・」

「違いますよ!
先輩に怒ってるんじゃなくて、
周りのやつらに怒ってるんです!」

オレは先輩の話をさえぎるように叫んだ。

「子供の頃から他人の欲望に振り回されて、
今も先輩の内面じゃなくて外づらしかみてないやつらに囲まれてるってことでしょ?
先輩の気持ちも考えず。
先輩、もっと怒っていいですよ!
おまえらふざけんなーって!!
そんなやつらのために、優しいふりなんかしてやんなくてもいいですよ!!!」

するとそんなオレの様子を見た先輩はフフっと笑った。

「クラウスは、ほんとに、かわいいね。」

「え、待ってくださいよ、今の流れでどうしてそういう感想になるんですか!?」

「クラウスは、ずっとそのままでいてほしい」

「先輩、なんかオレ、馬鹿にされてます・・・!?」

オレがむっとした顔をすると、先輩は

「不思議だな、クラウスにはなんでも素直に話してしまう。
俺はクラウスに素直になる魔法でもかけられているのかな」

とオレを見つめながら微笑んだ。

「そんな魔法、使ってないしし使えないっすよ!」

と反論しながらも、
オレは自分の心臓がドキっと跳ねたのを感じていた。
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