オレにだけ「ステイタス画面」っていうのが見える。

黒茶

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雷雨。

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 この日の放課後はヴァルター先輩と、
いつもの校舎裏の噴水横のガゼボではなく、同じく学院内にある鍛練場に来ていた。
いつもより規模の大きい魔法の鍛錬をするためだった。

「クラウス、だいぶ広範囲の水魔法も使えるようになったじゃないか!」

先輩に褒められてオレは少しいい気にになっていた。

「このペースなら、あとちょっとで先輩抜いちゃうかな」

「全く持って意味不明な発言だな。そんなわけないだろう」

先輩と軽口をたたきあう。

 すると晴れていたはずの空に雲がでてきた。
しかもあきらかに灰色の、雨を運んできそうな雲。

「あ、先輩、これはひと雨きちゃうかも」
「そうだな、そろそろ君は寮に戻ったほうがいいかもな」

そんなことを言っているうちに大粒の雨が降り出した。
これはもう手遅れだ。

「この感じの雨なら通り雨だろうから、あの樹の下で雨宿りをするか」

と言う先輩の後について、樹の下まで走った。

「少し濡れてしまったな、風魔法で乾かそう」

と先輩がオレの髪と制服に暖かい風魔法をかけてくれた。

「ありがとうございます。先輩、さすが!」
「もっと心を込めて言え」

オレがちゃかして言うと、先輩も同じく軽い感じで返してくる。
そんな会話をしながら雨が止むのを待っていた。

「そういえばルーカスが前に言ってたんですけど」
「ああ、君の想い人のルーカスか」

心なしか、先輩の機嫌がちょっと悪くなったような気がするのは気のせいか。

「炎魔法の使い手は、雨の日は無能。って言ってたんですよ。
前の母さんがよく言ってたって。
アイツの家が再婚だとは聞いたことないんですけどね。
前の母さんってなんだろ・・・」

「確かに、雨の日には炎魔法は扱いが非常に難しいな。
かなり威力が落ちる」

「前に先輩が教えてくれた水魔法の索敵、
あれも雨の日はかなり無効化されちゃうんじゃないかなーって・・・」

ちらっと先輩のほうを見ると、
ちょっと楽しそうな先輩がいた。

「まあ、素人が考えそうな意見だな。
しかし、気づいただけでもエライぞ。
実際はそんなことでは無効化されない。企業秘密だが。
だから俺は雨の日でも無能じゃない」

いや、雨の日はむしろ水魔法はブーストがかかるのか!?
やっぱり魔法は奥が深いな。

 実は、こんなとりとめのない話を先輩に次々と話しかけてしまうのには
訳があって。

ずっと気になっているのだ。

空に流れてくる雲の色が。

こんな雲の色のときには、あいつがやってくる可能性・・・

その瞬間、
周りが光ったかと思うと、
轟音が鳴り響いた。

「うわぁぁぁぁ」

オレは慌てふためきながら、耳を押さえ、目をぎゅっと閉じてしゃがみこんでしまった。

そう、オレは雷が大の苦手なのだ。

「クラウス、大丈夫か?」

先輩が心配そうにオレをのぞきこむ。

「大丈夫です・・・って言いたいところですけど、
大丈夫じゃないです・・・オレ、雷が大の苦手で・・・」

半泣きになりながら、先輩に訴える。

すると先輩は地面に腰を下ろし、両腕を広げて、

「クラウス、こっちにおいで。ここに座って」

と言った。

オレはおずおずと先輩の前に座った。
すると先輩はオレを後ろから包み込むように腕を回した。
これは先輩後輩の距離じゃないような!?
恋人同士がやる、バックハグというやつでは!?

でも今は雷への恐怖が勝っているオレは、
抵抗することもなく、
先輩のご厚意に甘えることにした。

「目は閉じていろ」

と先輩が優しく言ってくれる。

魔法騎士学院の制服についているマントとともに
先輩が後ろから抱きしめてくるんでくれているせいか、いつもより雷が怖くない。

「なんでそんなに雷が怖いんだ?
答えにくいなら答えなくてもいいが」

先輩はいつもそうだ。
オレサマな態度なようで、いつもオレを気遣い、オレの意見を尊重してくれる。

「実は小さい頃王都に遊びにきたときに迷子になったときがあって。
1人で心細かったときにちょうど今みたいな雷雨にあったんですよ。
もう家に帰れないんじゃないか、とか、このまま死んじゃうじゃないか、とか
恐怖やら絶望やらでいっぱいになって。

雷はそれ以来ダメなんですよ・・・。」

オレがそう言うと、先輩は、

「その後はどうなったんだ?家族のもとに帰れたから今ここにいるんだろう?」

と聞いてきた。

「確か、通りすがりのお兄さんに助けてもらったんですよね。
従者とかをつれていたから貴族だったと思うんですけど。
そのお兄さん、ちょうどオレの3歳くらい上に見えたから・・・
え、まさか、そのときの・・・!?」

オレがそっと目を開け、後ろを振り返りながら言うと、

「いやいや、それは俺ではないよ。さすがにそんな偶然はないね、残念ながら」

と、やや苦笑いをしながら先輩は言った。

「先輩は、なにか苦手なものとか、怖いものとか、あるんですか?
あ、人間嫌い以外でお願いします」

とオレが聞いてみると、
先輩はちょっと悩んで、

「クラウス、かな」

とボソッといた。

え、オレ!?
オレ、苦手に思われてるの!?
そんなぁ、
大好き!とまでは思われてないにしても、
嫌われてるとまでは思ってなかった・・・

「クラウスの前では、

俺の本性を見せてしまったり、
本来の俺でいてしまったりするのも当たり前になってしまったが、

俺自身も今まで知らなかったような心の底の俺まで
さらけ出させられるような気がするんだよ。

クラウスに引っ張り出されるような。

それが、ちょっと、怖いかな」

「オレが怖い、ってことですか?」

「そうだね、ちょっと怖い」

「じゃあ嫌いって意味じゃないですよね!?」

「うん、嫌いじゃない。嫌いだったらこんなことしない」

「よかった。嫌われてなかった」

ほっとして思わず笑みがこぼれた。

「ほら、そういうところだよ。

俺が君の口からルーカスの話を聞いて、

君の息遣いや体温をこの距離で感じて、

君を俺の腕の中で君の苦手なものから守って、

俺が君のことを嫌っていないとわかって安心したと言う君の声を聞いて、

俺がどんな感情に襲われているか。

しかもそれらは全部、俺が今まで知らなかった感情だ。

君はきっと他にももっといろんな感情を俺から引き出すと思う。

それが俺はちょっと怖いんだ」

先輩はオレの肩に顔をうずめながらそう言った。

 オレからは先輩の表情は見えないし、
先輩の言うことはよくわからないことも多いけど。

え。

ちょっと待って。

待って待って待って待って。

どういうこと?

どんな感情って、

でも、今先輩が言ったことって、

まさか、

先輩はオレのこと、・・・好き?

オレのことが好きって感情を感じているってこと?

それは・・・今まで全く想定してなかった。

先輩も困惑しているっぽいけど。

え、どうしよう。どうしたらいいんだろう。

いやでも、まさか、先輩ともあろう人がオレなんかを好きになるだろうか。
今まで接したことのない人間だから珍しく思っているだけでは。

うん、早とちりはいけない。勝手に思い込んではいけない。

でも、

じゃあオレは?

オレは・・・先輩のこと、どう思っているんだろう。

先輩とオレが少しの間無言でお互いの体温を感じている間に、
いつの間にか雷雲は去り、青い空が戻ってきた。

 そこらじゅうにある雨上がりの雫に太陽の光が反射して、まぶしさで目がくらみそうだった。




------------------------------
実際の雷雨の際は、高い樹の下などは
落雷による感電の危険性が高いから、
高い建物や車の中に逃げようね!

ここは乙女ゲーの世界だから、
乙女ゲーの主人公や攻略対象には雷は落ちないけどね!

雨の日は無能、そういう意味じゃないんですけど、
伝聞の伝聞なんで、大目にみてやってください。
雨の日は無能な彼、私はかれこれ20年くらい大好きです。

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