オレにだけ「ステイタス画面」っていうのが見える。

黒茶

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神子のパートナー。

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 オレが神子みこというやつになって、
騎士団のモチーフになっている黒竜、金獅子、銀鷲が実は実在する聖獣で、
帝国の危機のときにあらわれるというその聖獣たちを使役して、
『ステータス画面』が見える人物から1人パートナーを選び、
300年に1度現れる魔獣の長と戦ってほしい、
という話を王宮で聞かされ。

 その王宮からヴァルター先輩の家の馬車で魔法騎士学院の寮までの帰り道。

 先輩とオレの二人で馬車に乗っていたが、
先輩はずっと無言だった。

 オレはあの場では

「神子になります」

って即答したけれど、

さすがに脳内が混乱していたので、
1人で考える時間があったのは正直助かった。

 この前の魔獣の森のときとは比べ物にならないくらい大変なんだろうなぁ、
とか、
聖獣ってどんな感じなんだろうなぁ、
とか、

色々考えてしまった。

 でも、

神子になりますと言ったことには後悔はなかった。

選ばれしヒーローになりたいわけじゃない。
みんなを救って賞賛をあびたいわけではない。

 ただ、
ヴァルター先輩や、ルーカスや、他にも大事な人たちがいっぱいいる、
この帝国を守りたい。

 オレにそれができると言われるなら、オレがやりたい。


 いつの間にか、馬車は魔法騎士学院に到着していた。
日は落ち、すっかり夜の暗闇に包まれていた。

「寮の入り口まで送るよ」

と先輩が一緒に馬車から降りてきてくれた。

二人で無言で歩いた。

寮の入口が見えたので、

「先輩、今日はついてきてくれてありがとうございました。また明日。おやすみなさい」

とオレが言おうとしたとき。

 先輩がオレを後ろから抱きしめた。

「先輩・・・!?」

 オレが先輩の様子を気遣おうと、
後ろを振り向こうとしたけれど、

先輩の力が強くて身動きがとれなかった。

 そして先輩は何も言わず、しばらくオレを強い力で抱きしめ続けていた。

 どのくらい時間が経っただろうか、

先輩が吐息と思うような小さな声を発した。

「なんで・・・クラウスが神子なんだ・・・」

「もしかして今日先輩がずっと元気なかったの、そのせいですか?」

「そうだよ。
どうしてクラウスが・・・」

「オレじゃ頼りないですか?」

「そうじゃない!

俺は・・・俺はクラウスに危険な目にあってほしくないんだ。

この前の魔獣の森のときだって、
クラウスが傷ついたらどうしようって
不安で不安でしょうがなかったんだ。

できることなら、
安全な場所で、平和な世界で、
ずっと俺のそばで笑っていてほしい。

それなのに、
この国の危機の一番危険なところに行くことになるなんて・・・

クラウスに万が一のことがあったらと思うと、
俺はもう耐えきれそうにないんだ・・・

このままクラウスを誰にも見つからないところへ連れ去ってやりたい」

 先輩の悲痛な声を聞きながら、
ああ、オレって愛されてるな、と実感する。

けど。

 オレは先輩に後ろから抱きしめられたまま、
先輩の腕の感触を存分に味わいながら、
ゆっくりと言葉を紡いだ。

「先輩、ありがとうございます。
先輩の想い、しかと受け取りました。

先輩しかいない世界、それも十分魅力的なんですけど。

でも、オレにもこの国を守らせてくださいよ。

それに先輩がついてきてくれるんでしょ?
先輩が隣にいてくれるならきっと大丈夫ですよ。
オレが先輩をパートナーに選んだの、ダメでした?」

すると先輩は、

「ダメじゃない!
むしろ俺以外を選ぶなんてありえない!

そうだよな、
クラウスが覚悟を決めているのに、
俺がこんな情けないことを言っていてはダメだな」

「あはは、
魔獣の森で魔獣相手に無双してた先輩も、
今みたいに不安で弱気になっちゃう先輩も、
オレにはどちらも大好きでいとおしい先輩ですよ。

ふふ、
オレたちがこの帝国の危機を救っちゃうらしいですよ。
ちょっと楽しみじゃありませんか?」

「楽しみなもんか。
俺にはクラウスさえいてくれればいいのに」

「ああ、そうでしたね。
でもオレは楽しみですよ。
先輩の横で、並んで、危機に立ち向かえるって、すごくいいなって。
オレだけでは無理ですから、
先輩、力を貸してください」

「わかった。
俺も覚悟を決める。」

 先輩はここでやっとオレから離れた。

「あの、今更ですけど、
立ち話もなんですからオレの寮の部屋に行きませんか?」

「いや、馬車を待たせているから今日はもう帰るよ」

「じゃあもうちょっとだけ!
お話してもいいですか?」

 オレは先輩に食い下がった。

「少しだけならかまわない」

と優しい目で先輩は答えてくれた。

「あ、あと、あの、手をつないでもいいですか?」

 オレが急にそんなことを言ったものだから、
先輩は虚を突かれたようだった。

「ああ、もちろん」

 先輩には楽しみだなんて言ったけど、
ほんと神子なんてちょっと怖い。

 なんたってオレは平凡な一魔法騎士学院の生徒にすぎないのだ。
『ステータス画面』が見えるメンバーみたいに
劇強な戦闘センスがあるわけでもない、
ごく平凡な生徒。

 先輩が差し出してくれた左手に
オレはおずおずと右手を絡める。

 先輩の手はオレより少し大きくて、
ちょっとごつごつしていて、
それでいて肌はなめらかで、
触れている手から温かみと安心感が流れ込んでくるみたいだった。
 オレは1人じゃない。
きっと大丈夫。


 オレたちは寮の壁にもたれて、
並んで手をつないだまま話し始めた。

「あの、ずっと不便だなって思ってたんですけど、
先輩からオレへはお手紙とかメモとかを教科書に入れてもらえるけど、
オレからは直接先輩に会いに行かなきゃダメじゃないですか。

・・・なんとかなりませんか?」

すると先輩は、ふむ、としばらく考えてから、

「じゃあ後からクラウスの部屋に箱を届けよう。
その中に手紙を入れてくれれば俺に直接とどく魔導具だ。
寮にいるときに俺に伝えたいことがあるときはそれを使ってくれ。

学院にいる間は、俺の名前を呼んでくれれば、
クラウスの言葉を認識できるようにしよう。」

「え!?ほんとですか!?」

先輩、すげぇ。
それにその不思議な箱もすげぇ。

これで先輩にいつでも連絡がとれる。
ありがとう先輩!

 正直、この先どうなっちゃうか不安なこともあるけど、
先輩もいてくれるし、頑張れそうな気がする!

 その後先輩と別れて部屋に戻った。
いろんなことがありすぎた一日だったけど、なんだかいい夢がみれそうな気がした。

 なお、その箱が先輩の生家であるノイエンドルフ家に伝わる国宝級のお宝だということは、
オレは知る由もなかった。
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