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入院
澤北先生と井田先生
しおりを挟むside:咲
目を開けると、真っ白で無機質な天井が一番最初に目に飛び込んできた。ベージュのカーテンが、わたしの周りを囲っている。
どこだ、ここは……。
だんだんと目が慣れてきて、今度は耳が音を拾う。カーテンの外から聞こえる音は、様々だった。パタパタと走る音や、人の話し声、機械の音。
そして、消毒のような匂い。
何となく、生きているんだということだけはわかって、どうして死にかけたかは思い出したくなかった。
カーテンが開いて、白衣を着た男性が一人入ってくる。目覚めているわたしを見て、少し驚いたような顔をしたが、直ぐにふっと笑顔を見せた。
どこかで見たことあると思って、思考を巡らせたが、上手く頭が回らない。
「目、覚めたな」
声が出なくて頷く。
「ここは病院だ」
彼は、そう言いながら、わたしの右手を握った。その温かくて大きい手が、なんとなく懐かしかった。
「これ、握れるか?」
起きたばかりで手に上手く力が入らなかったが、かろうじて微かに手を動かす。
少し手を動かすと、体がちゃんと自分のものになったみたいに、全身に感覚が戻ってきた。
お腹の辺りが少し痛い。
「い……たい」
思ったより声量が出なかったが、息を吐き出すようにして声が出た。
「腹か?」
そう訊かれて、頷いた。
「一昨日、手術したんだ。痛いだろうけど、大丈夫、ちょっとずつ良くなっていくから」
そう言われてほっとした。
ほっとしたら、ゆるゆると笑顔が溢れる。
「俺は、君の担当医の澤北だ。健康診断の時に一度会ったが……覚えてるか?」
あぁ、そうだ。たしか、この束ねた髪と綺麗な顔は、あの時の。会釈する代わりに、首を動かして頷いた。
その後は、ぼんやりとしていてよく覚えていない。服の前の方を開けられて何か確認されたが、何となく安心していい雰囲気に、眠くなって寝てしまった。
その日の夕方、井田先生がお見舞いに駆けつけてくれた。
ぼんやりと目を開けるわたしを見ながら、心底ほっとしたように、笑顔で「よかった」と繰り返した。
それもそのはず、わたしは一度、心臓が止まってしまったらしい。通りかかった澤北先生と井田先生が助けてくれたと聞いて、感謝してもしきれなかった。2人がいなかったら、わたしは今頃、死んでいた。そう思うとゾッとする。
井田先生と澤北先生は、知り合いのようで、親しそうに話していた。
何か大事な話も混ざっているようで、時折、深刻な表情も見せる。
井田先生は、それから毎日、時間があるときにわたしの病室にやって来た。
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