40 / 59
アメとムチと無知
過保護の保護者
しおりを挟むside:春斗
事後、優が咲の陰部を洗浄する。
洗われている感覚もないくらいに、咲は深い眠りに落ちていた。
俺は、咲の額の汗を拭って、頭を撫でながら、優に言った。
「ねぇ、優。次は咲に自分で触らせた方がいいと思うんだよね」
優は一瞬手を止めて、驚いてこちらを見る。
しかし、また手を動かしながら、言った。
「……まだ早いだろ。治療2回目だし。子どもだぞ」
洗浄しながら、咲の表情を見た。
子どもと言われて、ぐっすり眠る咲の顔は幼い。
「でも、恥ずかしさはあるみたいだし、気持ちいい感覚もわかってきたと思うんだよね。2回目とは言え、これからずっと続くんだよ」
優は、洗浄を終えると、丁寧に咲の陰部を拭いた。下着とズボンに、咲の細い足を通していく。
俺は咲が起きないのを見ながら、言葉を続けた。
「いっそのこと、咲に好きな人でもできればいいのにねぇ……」
つぶやくように言った言葉に、優が反応して、俺の方を見る。
優、なんだよ、その焦り方……。
おもしろくなってしまって、つい笑ってしまう。
優は自分の反応に、少し動揺しているようだった。
その顔に、悪戯心がくすぐられる。
「パパ。咲はもう思春期よ。今の子は早熟なのよ、咲は知らんけど」
「……パパって言うな」
どこか照れたように、優が目を逸らす。
優はおそらく、まだまだ先だと思っていた、自分の元から咲が離れていくことを考えて、動揺したのだろう。
悪戯心をしまい込んで、本気で思っていたことを優にぶつけた。
「この子が誰かを好きになれば、いろいろ学ぶでしょ。一気に大人になるよ。本当は気持ちいいことだって気づいて、自分で触りたくなる日も来るんじゃない? そうなれば、今みたいにつらくなることも無くなる」
咲が立てている寝息に合わせて、ゆっくりと頭を撫でた。
一緒に暮らして数ヶ月。
少しずつ、咲の中で止まっていた時間の流れを感じる。自分の思うままに、やりたいことを伝えたり、言葉を口にしたりする。嬉しい、楽しいと感じることに精一杯心を傾けて、笑顔を見せる。
……本来、14年間でしてくるはずだった経験を、時間を進めるように、少しずつ成長していることを実感する。
優と俺はその様子を見守っている。少しずつ、でも成長の速度は遅くない。
「……その時の為に、触り方、教えておくのか?」
優は咲に、ズボンを履かせ終えると、咲を布団の中に入れた。優と俺の中では、咲はまだまだ子どもだ。
でも今の咲だけじゃなくて、今後の咲のことも見てあげなければいけない。
起きない咲の寝顔をふたりで眺める。俺は静かに頷きながら言った。
「俺らがやるよりコントロールできるし、咲自身が恥ずかしくない。もちろん、数ヶ月間は見てあげた方がいいかもしれないけれど。介入できるうちに教えてあげるのがいいと思う」
ため息をつくように、優は息を吐き出す。
「……まぁ、早乙女先生にも、教えてあげてもいいって言われてるしな。でもこのことは、慎重になった方がいい」
「……優は、過保護だねぇ」
優は俺の言葉を受け止めて、部屋を出ていった。
ただの過保護じゃないのはわかっている。優は咲の親として、医者として、迷っているようだった。
俺は、もう一度だけ咲の寝顔を見つめる。
この調子だと、朝まで起きないだろう。
部屋を出て、咲の部屋からクマを持って来ると、咲の隣に寝かせた。
「寂しくないようにね」
言いつつ部屋を出る。
リビングのソファに座りながら、優が俺のその様子を見て笑っていた。
「どっちが過保護なんだか」
そう言われて、俺も笑う。
咲が寝てしまった静かなリビングに、俺と優の控えめな笑い声が響いた。
俺はコーヒーを淹れて、冷蔵庫からチョコレートを取り出すと、優に手渡す。
「お疲れ様」
マグカップを2つ、ローテーブルに置いた。リビングのソファに向かい合って座る。
優のコーヒーには、牛乳と砂糖を入少しれた。
「優、好きでしょ、このチョコレート」
「あぁ。ありがとう」
咲が寝たあとに、2人で夜を過ごす。
何をするわけでもない時間。
最近は、お互い忙しくしていたし、咲もいるしで、そんな時間もあまりとれていなかった。
コーヒーを啜りながら目を閉じる。
ほっと、一息付きながら、お互いが咲のことを考えていたと思う。生活の中心になった咲。
これからのこと。
「……海、どこにしような」
思い出したように、優が言った。
『海行きたい……』
ボロボロ泣きながら言っていた咲を思い出して、苦笑した。
「……ちゃんとご褒美あげないとね。車で行くでしょ? 交代で運転なら、行ったことあるところがいいかな」
運転は苦手だ。久しく運転していない。
「あぁ。……1泊するか、近くに宿とって」
「いいね、夏休みっぽい」
2人でスケジュールを詰めて、8月上旬、お盆の前に日程を決めた。旅館を探して、予約をとる。
咲の嬉しそうな顔を想像すると、どちらからともなく笑みがこぼれて、なんとなく2人で笑いあった。
11
あなたにおすすめの小説
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
【短編集】こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる