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夏の訪れ
お目覚め
しおりを挟むside:咲
朝、目が覚めると右には優がいて。
左には……なぜか、クマがいて。その奥に、春ちゃんがいて。
カーテンから差し込む光が、朝を告げていた。夏は、朝が早く来る。
時刻はまだ、午前5時10分。
……2人とも寝ている。
昨日は……2人の治療を受けて…………そのまま寝てしまった。先月も、こんなことがあったなと思いつつ、小さくため息をつく。
思い出したらまた恥ずかしくなりそうで、ぎゅっとクマを抱きしめた。
その、ほんの少しの衣擦れの音で、優が目を覚ます。
ぼんやりとした声で、わたしに言った。
優は起きて直ぐに、わたしの体調を気にかける。
「……おはよう。気分は悪くないか?」
きかれて、わたしが静かに頷くのを確認すると、
「まだ寝てろ」
ぽんぽんと頭を撫でながら、わたしに言う。
優の体温が、触れられた頭からじんわりと伝わってくる。なんとなく安心していた。
優もそのまま、もう一度眠りにつく。
わたしはゆっくりと頷くと、目を閉じた。
昨日の優は厳しかった。澤北先生だったからかもしれない。
『……それなら、海は連れて行かん。頑張れないと、連れて行かない』
優に言われた言葉を思い出していた。
つらくなるわたしを見たくないとも言っていた。
結局押さえられながら、治療は終わって寝落ちしてしまったけれど、わたしは海に行けるんだろうか……。
一度起きてしまうと目が冴えて、2度寝をしようとしても、眠りは来ない。
今度は、春ちゃんの方からアラームの音が鳴った。響く前に音が止まる。ちょうど5時半だった。
春ちゃんは、いつも、わたしや優を起こさないように、すぐにアラームを止めているようだった。
わたしはまた、ぎゅっとクマを抱きしめて目を瞑った。なんとなく、春ちゃんに起きているのがバレないようにしなくてはいけない気がして、そうしていた。
気だるそうに起き上がる春ちゃんが、わたしを見つめる。
ふっと笑うと、今度は春ちゃんがわたしの頭を撫でた。
「……起こしたかな」
ふと、春ちゃんが呟く。わたしは目を閉じたまま、首をふるふると振った。
「……ふふ、起きてんじゃん」
そう言われて、目をゆっくりと開けた。
寝癖がついたままの春ちゃんが、こっちを見ていた。
今度は春ちゃんの手が、頭に触れている。
温かい。2人の温度が、好きだった。
「咲……もう眠れないなら、おいで」
春ちゃんが言いながら部屋を出て行く。わたしはクマのぬいぐるみを、優の隣にそっと置くと、春ちゃんの後を追った。
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