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落とし物に気づくとき
あの子たち
しおりを挟む「咲、ちょっと」
夕食後、優に手招きされて近寄ると、わたしの目の高さに優がしゃがんだ。両手で頬を包まれる。下瞼をめくられて、貧血の確認をされた。
「腹、触るぞ」
右手をスッとパジャマの裾から手を滑り込ませて、左手でわたしの腰を支える。
温かくて大きな掌で、下腹部をゆっくりと押された。
「んっ……」
思わず反射で声が出る。
ご飯を食べた後だったから、少し苦しかった。
優は眉間に皺を寄せて、その反応を素早く気にかける。
「ん? 痛むか?」
わたしが首を横に振ると、眉間の皺は一層濃くなる。
お腹がいっぱいで苦しいなんて、ちょっと恥ずかしくて言えない。
目を逸らすと、もう一度お腹を押された。
「ぅ……」
「正直に」
優は正面から見わたしの表情を捉えて、目を離すことをしない。もじもじしながら、小さい声で告げた。
「お腹、いっぱいで、ちょっと苦しい……」
優は眉間の皺を解いて、今度は目じりに皺を寄せる。……わたしから目を逸らすと、小さく喉を鳴らすように笑っていた。
「……ごめん。食べ過ぎか?」
優が笑いながらそう言うので、恥ずかしくて、膨れながら頬を赤くする。
「もう……笑わないで」
「悪かったって。痛いのかと思って心配したんだわ」
それでも笑いながら、わたしの頭をぽんぽんと撫でる。
優の笑顔があまりにも無邪気で、むくれた頬をつい緩めてしまう。
あれから2日が過ぎて、わたしの生理痛は落ち着いた。わたしが始業式で倒れたことは、春ちゃんによって優にも報告された。
優によると、痛み止めで痛みが引くくらいなら、生理痛と判断して良いらしい。
病院行きにならずに済んで、心底ほっとしていた。
あの時助けてくれた隣のクラスの子達には、なかなかタイミングが無くて、お礼が言えずにいた。
別なクラスの教室って、なんとなく入るのに勇気がいる。それに、最初に助けてくれた子は、男の子だ。
彼に、クラスの違うわたしが突然、個人的に話をしに行くのは、さらに勇気がいることのような気がした。
それと……
絶対に緊張してしまう自分が想像できた。もともと男の子と親しくするようなタイプではないと、自分でもわかっていた。
さらに、あの綺麗な、茶色の瞳と目を合わせてしまったら……そしたら、上手く話せる自信は全くない。
そんなことも考えて、2人に直接お礼を言うことに、少し臆病になってしまっていた。
なんとか、伝えなくてはと、手紙を書いてみたけれど、名前も知らないので渡しようもない。
春ちゃんに名前を聞くというのも考えたけれど、なんとなくそれは憚られた。
色々考えて、ぐるぐる、もやもやとしたまま、始業式から2日が経過していた。
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