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緊急入院と夏
怠薬
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診察から2日後、ホルモン剤の副作用はすぐに出た。
吐き気と腹痛が、一日中続く。
……今日、仕事休みで良かった。
ベッドの中でうずくまりながら、目をつむる。
船に乗っているみたいに、体が揺れている感じがして気持ち悪い。
これ、ほんとに良くなるの……?
大海先生を心の中で疑う。
明日の勤務はパートさんが1人休みになってしまっているから、わたしが休んで穴を開けるわけにはいかない。
「うー……これじゃあ働けないよ……」
誰に聞かせるでもなく、つぶやく。
働けないどころかベッドから離れられない。
でもこれ、もし大海先生に相談に行ったら……
血液採られて、内診されたりするのかな……
それだけは避けたい。もうこれ以上しんどいのは困る。
『少しつらくても継続してほしいなぁ』
脳裏に大海先生の言葉が過ぎったけれど……
薬、今日くらい……お休みしてもいいよね。
テーブルに置いた薬に背を向けるように、寝返りを打った。
ゆっくりと呼吸を繰り返し、どうにか不快感を鎮める。
そうしているうちに、眠りに落ちていた。
翌日、薬を飲まなかったのもあって、吐き気も腹痛もなかった。
今日から、また飲めばいいよね。
そう思っていたけれど、あの吐き気が怖くて、薬を飲むことができずに、日々が過ぎていく。
この時点で、大海先生に相談するべきだった。
しかし、明日こそは……と思えば思うほど、診察室へ行くことはなく、次の診察日が迫ってきていた。
診察日、前日。
ずっと薬飲んでないの……さすがにバレるかな。
血液検査で引っかかると悪いから……。
そんな気持ちから、婦人科で処方されたホルモン剤を飲み込む。
久しぶりに飲んだのも相まって、翌日は絶不調だった。
前回よりも酷い吐き気が来て、1日だけなのにきつかった。
できれば、厨房で休みたくない。
なんとかみんなにも、先生たちにも気付かれずに……。
先生たちが食堂に来る時間は、裏方に引っ込み、顔色を見られないように誤魔化す。
どうにかその日をやり過ごして、吹田先生と大海先生の診察を受けに行く。
採血をして、結果が出たあと。
吹田先生と向き合った。
「今回の血液検査も異常なかったよ」
「……良かったです」
「でもちょっと気になるのは……んー、ホルモン値がねー。これは婦人科の薬の効果だと思うけど」
ドキッ……
「まあ、様子見ようかな。大海先生にも言ってあるから」
吹田先生は画面の数値を険しい顔で見ている。
「それと、のんちゃん。薬はちゃんと飲めてるね?」
バレる……かな。
「はい」
何事も無かったように、頷く。
心臓がどきどきとうるさい。変な風に、胃がねじ曲がるような感覚が襲って、嘘をつく罪悪感に潰されそうになる。
「のんちゃん、厨房にいる感じ大丈夫そうなんだけど、絶対に無理はしないことね。今日も、良さそうで悪いよ、顔色が」
え、バレてる……?
自分の頬に手を当てる。鏡があるわけじゃないから、咄嗟に俯いてしまう。
「まあ、そんな感じで。自分は大丈夫と思っても、無理しないことだね」
「…はい」
「じゃあ、今日はあと喘息の検査して終わりにしようか」
「えー……」
まだやるの、検査。
「さっき胸の音聞いた感じ、そろそろ喘息出ると思うんだよね。大丈夫、すぐ終わるから。」
……
検査は言われた通り、直ぐに終わった。
吹田先生が言っていた、喘息の薬も追加になって、診察は無事に終了する。
ホルモンの薬……どうしよう。
飲めてないことは吹田先生にも大海先生にも言えなかった。
ホルモン剤が飲めないまま、また月日が過ぎていく。
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