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緊急入院と夏

陽太先生と夕食2

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「陽太先生、それだけですか……!」

陽太先生の夕食は、コンビニの惣菜パン2つだった。

「いやー、急患入ったらと思うと、夜はいつもこんなだよね。カップ麺なんてさ、作ってる最中に急患が入るなんて、もはやジンクスみたいなもんだし」

陽太先生は、いつも変わらない。
いつも元気だし、いつも笑顔だ。忙しくても疲れていても、子ども相手に仕事をすると、そうなってしまうのか……意識的にそうしているのか。

「忙しいのに……わたしとご飯食べてて大丈夫ですか?」

恐る恐る聞くと、

「大丈夫! 今日のこの時間はのんちゃんのために空けておいたんだよ。……今日は、元気ないかと思って」

気遣ってもらってばかりだ……。

「すみません……」

「いいんだよ。俺もいつも1人で医局でパンは、寂しいからね。のんちゃん、あったかいうちに食べな」

言われて、ふたりで、いただきますをする。

ここの厨房で作っている病院食は、やっぱりおいしかった。

「……いつも、わたしが作ってるんです。入院患者さんの夕食」

本当は、今日だって夕食を作る側だったのに……入院して、食べることになるなんて。
……想像もしてみなかった。
自分で蒔いた種だけに、悔やまれる。

「そうなんだ」

陽太先生は、病院食に視線を落とす。

「普段は、のんちゃんが作ってるんだね……」

今日は、鯖の味噌煮とお浸し。味噌汁とご飯。
患者さんによって、食事の形態を変える。
……みんながみんな、全部を食べ切れるわけではないけれど、でも、片付けの時に残飯が少ないとうれしい。

誰かの役に立てている気がして。

「今日はきっと、同期の子がつくってくれてるはずなんです。出汁が効いてて、おいしい」

「そっか、だからここの病院食はおいしいって言われてるんだね」

「陽太先生も食べます?」

いたずらに、陽太先生を見つめた。
陽太先生は、笑いながらわたしの肩を軽く叩いた。

「こら、食べる量減らそうとしてるんじゃないよ」

「えへへ」

夕食をゆっくり食べる。

うれしかったし、楽しかった。
陽太先生と2人でご飯が食べられるなんて。


でも。

そんな矢先に……。

「……ようたせんせ……ちょっと横になりたい」

やばい、気持ち悪い。
座っているのに、目の前がぐるぐる回って、体を起こしていられなくなる。

「どうした、のんちゃん。……顔色悪いね、こっち向ける?」

「ウッ……ゴボッ……」

……吐いた。

間に合わなくて、病衣を汚した。

「苦しいね、ちょっとこっち向ける? 吐いても大丈夫だから。」

それにかまわず、陽太先生がわたしの体に触れて、わたしの姿勢を楽にしてくれた。
陽太先生の白衣が、わたしの嘔吐物で少し汚れて……それがすごく嫌だった。

「ようたせんせ……よごれちゃう……」

「気にしなくていいよ。調子悪いのに頑張って食べてたんだね」

言いつつ、わたしの口元にガーグルベースをあてる。

「……ごめんなさ……ウッ」

陽太先生がナースコールを押す。

「大丈夫だって……あ、のんちゃん嘔吐です。点滴お願いできますか? 着替えも。あと吹田先生呼んでもらって……お願いします」

「よーしよし、大丈夫。全部吐いちゃいな。楽になるから」

背中をさすられると、素直に食べたものが全て出ていく。なにも消化されずに。
苦しくて仕方なかったけど、陽太先生にこんな自分を見られたことが1番悲しかった。


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