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回想、はじめまして
のんちゃんの主治医
しおりを挟む「ごめん、陽太先生。のんちゃんの担当、交代してもらってもいいか?」
翌日の休憩中、優先生は言った。
優先生の負担を少しでも軽減するため、のんちゃんの主治医を俺に交代することにしたのだ。
「のんちゃんですね、大丈夫ですよ。昨日の子……大変でした?」
聞くと、優先生は渋い顔のままだった。
「状態は安定してきたが……、今後のことがちょっと気掛かりでな……」
あとに聞いた。それは、優先生の人生すらも揺るがす、のっぴきならない事態だったことを。
「わかりました、お任せください」
基本、頼まれたことは断らない。
情けは人のためならず、そんなことを思って、二つ返事で了解した。
のんちゃんの主治医。
……不安がなかったとは、言いきれないけれど。
「助かる。これ、のんちゃんのカルテだから。引き継ぐことはだいたいまとめてある。なんかあったら聞いてくれ」
安堵したような表情でそう言うと、そっと、俺のそばにカルテを置いていく。
優先生は珍しく昨日の疲れが抜けないような雰囲気で、インスタントコーヒーをマグカップに淹れていた。
今日はコーヒーに入れる角砂糖の個数が半端ではない。
何個入れたのか目で追えないほど、角砂糖はダボダボと鈍い音を立てて、ブラックコーヒーに落ちていった。
「ゆ、優先生……! 砂糖、砂糖……!」
小声で優先生に言ってみるが、聞こえないようだったし、聞こえたところで砂糖の数は減らなそうだった。
その、直後だった。
休憩室に看護師が現れて、優先生を見るなり急用を伝えた。
「あ、優先生! 白河咲ちゃんの学校の方がお見えになってて、先生と話したいと……」
「誰だ? 担任か?」
「ええ、そうだと思います。若い方だったので」
「井田か……すぐ行く」
その、大量の砂糖入りコーヒーをひと息で飲み干すと、頭を振って、さっさと休憩室から出ていった。
ここまで頭を抱える優先生を見たのは初めてだった。
……なにか、相当参っているらしい。
優先生が置いていったカルテに目を落とした。
俺は、その丁寧につくられたカルテに、感嘆のため息を漏らしていた。
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