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回想、主治医の苦悩
甘えん坊のんちゃんとお約束
しおりを挟む「よーたせんせー……だっこ」
何かしら処置が終わった後は、涙目でだっこを求めてくることが多くなった。
片付けの手を止めると、のんちゃんの伸ばした両手を受け止めて、抱き上げる。
「きらいなんだもん。いやなことするよーたせんせーは、だめなんだもん」
のんちゃんは、そんなことを言いつつ、白衣にしがみつく。
「……でもだっこはするんだね」
小さな体は、いつも以上に熱く、息も絶え絶えだった。
「ごめんね。でも楽になったでしょ?」
「ん。」
肯定とも否定ともとれない返事を聞いて、少し笑ってしまう。
「寝な~、ここ数日、暴れ疲れて体が熱出しちゃったんだよ」
ベッドにあったブランケットで、のんちゃんの背中を包むと、病室を歩き回る。
窓の外が見えるように、ゆらゆらと揺れていると、のんちゃんは言った。
「おそと、いきたい。おそとで、あそびたい」
その表情は、ひどく落ち着いて見えた。
……3月末から入院しているのんちゃんは、1ヶ月近く、家に帰っていない。
外に出せるような状態ではなかったからだ。
ひどい喘息で発熱している今は、到底、叶えられる願いではない。
しかし……
主治医としては、のんちゃんの願いを叶えてあげたかった。もう少し良くなったら。
一時帰宅は無理でも……病院の中庭を散歩させるくらいなら、できるかもしれない。
「のんちゃんが毎日頑張って、お薬飲んだりもしもししたり、ちっくんできたりしたら……陽太先生が連れて行ってあげる」
「……うん」
熱で潤んだ瞳は、眠たげに閉じていく。
「今日は寝ようね」
とんとん、とリズムを一定に体を揺らす。
「うん……だっこしてて」
「いいよ、今日だけ特別だからね」
まだ苦しそうな息を少しだけ残しながら、のんちゃんは俺の腕の中で、すーすーと寝息を立てた。
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