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侯爵令嬢は絶対に許さない

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シュシュがお茶会の後倒れた。毒を盛られたらしい。…俺がお茶会なんか開いたから。俺は報せを受けるとすぐにシュシュの元に駆けつけて、回復魔法を魔力が切れるまで掛け続けた。けれどシュシュを蝕む毒は強力なもののようで、シュシュは一命は取り留めたものの目を覚まさなかった。三日が経った今日も、シュシュが目を覚ます気配はない。

シュシュに毒を盛ったマルティーナ侯爵令嬢は自ら自首してきた。その場でマルティーナ侯爵令嬢を殺そうとした俺は、しかしその場にいた使用人達に力尽くで止められた。今マルティーナ侯爵令嬢は牢獄の中だ。

その供述によると、マルティーナ侯爵令嬢は俺に憧れていたらしい。俺の運命の番が自分ではないことに憤り、シュシュに一方的な怨みを抱いたそうだ。シュシュが王女とはいえ亜人族ではなく人族であることも理由の一つだとも言っていた。

俺が側に付き添うべきだった。そもそもお茶会なんか開かなければ良かった。シュシュにもっと薔薇のブローチを身に付けるように言い含めておけばよかった。シュシュを失ったら、俺はもう生きていけない。頼む、シュシュ、目を覚ましてくれ…。

今日も俺はシュシュに必死で回復魔法を魔力が切れるまで掛け続ける。そんな俺の横で、シエルが俺に魔力を譲渡してくれる。シエルもシュシュに目覚めて欲しくて一生懸命なんだろう。ああ、シュシュの笑顔が見たい。照れた顔が見たい。シュシュの目に俺を写して欲しい。シエルとはしゃぐ姿を見たい。中庭の花に微笑むシュシュが見たい。

シュシュ、シュシュ、シュシュ、シュシュ。ああ、どうしたら目を覚ましてくれるんだ。

ー…

結局、あれから一週間が経った。シュシュは目を覚まさない。俺は泣くことと回復魔法を掛けることしか出来ない。シエルも俺の横で、ベッドの上で眠り続けるシュシュの頬を舐める。そんなことしても、目覚めないと分かっているはずなのに。

ああ、苦しい。このままシュシュが目を覚まさないなら、いっそ一緒に眠り続けてしまおうか。毒の準備なんて、簡単なのだし。ああ、けれど。そんなことをしたら、シュシュが泣いてしまうだろうか。

今日も俺は、情けなくぼろぼろと涙を流す。ああ、シュシュ。目を覚ましてくれ。

「…ニタ?泣いているのですか?」

ー…!

「シュシュ、目が覚めたのか!?よかった…よかったぁ…」

「わん!わん!わん!」

「あれ?私…そっか、毒を盛られたんですよね。ニタが助けてくれたのですか?」

「優秀な医師団とシエルの協力が有って、なんとかな…おはよう、シュシュ」

「おはようございます、ニタ。…大丈夫ですか?」

「はは…俺もシエルも、ほとんど飲まず食わずだよ。あんまり心配させてくれるな、シュシュ」

「え!?大変!ニタもシエルもとりあえずご飯を食べてください!私も食べます!」

「…まずはお粥から始めようか」

「なんでもいいですから食べてください!はやく!」

「はは。よかった。本当に目が覚めてよかった」

「…心配かけてごめんなさい、ニタ、シエル。でも食事は怠らないでください」

「ん、ごめん」

「私こそ、心配をおかけしてごめんなさい」

「わん!わん!」

シュシュが目覚めたおかげで、俺とシエルは久々にきちんとした食事をとることが出来たのだった。
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