1 / 33
女公爵は屋敷を見つめる
しおりを挟む
今はターブルロンド神歴五千年、ここはターブルロンド皇国のエルドラド領。エルドラド公爵家の治る領地で、最近までは主に金鉱から取れる金で成り立っていたが、未だ幼い女公爵、アンジェリク・エルドラドが爵位を継いですぐに個人資産を元に観光地化事業を展開して、今では花畑や遊園地、動物園に水族館、カジノにホテルなど様々なレジャー施設を完備。観光事業で金鉱だけに頼っていた頃よりもむしろとても潤っている。
さて、では何故アンジェリクは十三歳という幼さで、女でありながら公爵位を継げたのか。それは、とある凄惨な事件と、幼き皇女殿下の最上位の慈悲からだった…。
「ご主人様」
「あら、リュカ」
彼はリュカ・フォルクロール。フォルクロール伯爵家の三男にして、アンジェリクの執事。
「本日のお茶とお茶菓子をお持ち致しました」
「ありがとう」
「…ご主人様、また、ここ…中庭から屋敷を眺めておいででしたか」
「ええ。お父様とお母様…それに、親戚筋のみんなを思っていたの」
「…」
「黙って部屋を離れてごめんなさい」
「…いえ。まだ、ご主人様には必要な時間でしょう」
リュカは痛ましいものを見る目で主人を見つめる。その視線から逃れるようにもう一度屋敷に目をやるアンジェリク。その目は今は亡き父や母、そして『あの日』の惨劇に巻き込まれた親戚達全てを慰めるように優しいものだった。
「本当にありがとう。まあ、今日のおやつも美味しそうね」
「ええ。エルドラド公爵家の使用人たるシェフたちが腕によりをかけて作ったアップルパイですよ」
「まあ!素敵!」
「お茶もアップルパイに合うものをご用意させていただきました」
「うふふ。私は本当に使用人たちに恵まれているわ」
「ええ。そうでしょうとも」
「あら、自分で言う?」
「ええ。ご主人様の執事として恥ずかしくないだけの自信はありますので」
「うふふ!…ああ、この生地のサクサク感。りんごの上品な甘さ。今日も最高の仕事をしてくれたものだわ…紅茶との相性も抜群ね」
「それはよかった」
「ところで」
「はい」
「…このお茶の時間が終わったら、お仕事をしましょう」
「ええ。本日はどのような無理難題を押し付けられたのです?」
「うふふ。我らがお姫様は幻の石、コント・ド・フェ・アレキサンドライトをお求めよ」
「…おやおや。持ち主に祝福と呪いをもたらすという奇跡の石ですか」
「ああ、今日も骨が折れそう」
「子供のお守りも大変ですね?」
「言って私や貴方と一つ違いじゃない」
「ですが私とご主人様は本来なら貴族学院に通い始まる年齢。そう考えると皇女殿下はやはり子供では?」
「ふふ。私の恩人にそんなこと言わないの。…ああ、もうアップルパイがなくなってしまったわ。さあ、仕事ね」
「お供致します」
「当たり前よ。さて、アルファのところに行きましょうか」
こうして今日も、アンジェリクはベアトリス・ターブルロンド皇女殿下のために貢物を探しに行くのだ。
さて、では何故アンジェリクは十三歳という幼さで、女でありながら公爵位を継げたのか。それは、とある凄惨な事件と、幼き皇女殿下の最上位の慈悲からだった…。
「ご主人様」
「あら、リュカ」
彼はリュカ・フォルクロール。フォルクロール伯爵家の三男にして、アンジェリクの執事。
「本日のお茶とお茶菓子をお持ち致しました」
「ありがとう」
「…ご主人様、また、ここ…中庭から屋敷を眺めておいででしたか」
「ええ。お父様とお母様…それに、親戚筋のみんなを思っていたの」
「…」
「黙って部屋を離れてごめんなさい」
「…いえ。まだ、ご主人様には必要な時間でしょう」
リュカは痛ましいものを見る目で主人を見つめる。その視線から逃れるようにもう一度屋敷に目をやるアンジェリク。その目は今は亡き父や母、そして『あの日』の惨劇に巻き込まれた親戚達全てを慰めるように優しいものだった。
「本当にありがとう。まあ、今日のおやつも美味しそうね」
「ええ。エルドラド公爵家の使用人たるシェフたちが腕によりをかけて作ったアップルパイですよ」
「まあ!素敵!」
「お茶もアップルパイに合うものをご用意させていただきました」
「うふふ。私は本当に使用人たちに恵まれているわ」
「ええ。そうでしょうとも」
「あら、自分で言う?」
「ええ。ご主人様の執事として恥ずかしくないだけの自信はありますので」
「うふふ!…ああ、この生地のサクサク感。りんごの上品な甘さ。今日も最高の仕事をしてくれたものだわ…紅茶との相性も抜群ね」
「それはよかった」
「ところで」
「はい」
「…このお茶の時間が終わったら、お仕事をしましょう」
「ええ。本日はどのような無理難題を押し付けられたのです?」
「うふふ。我らがお姫様は幻の石、コント・ド・フェ・アレキサンドライトをお求めよ」
「…おやおや。持ち主に祝福と呪いをもたらすという奇跡の石ですか」
「ああ、今日も骨が折れそう」
「子供のお守りも大変ですね?」
「言って私や貴方と一つ違いじゃない」
「ですが私とご主人様は本来なら貴族学院に通い始まる年齢。そう考えると皇女殿下はやはり子供では?」
「ふふ。私の恩人にそんなこと言わないの。…ああ、もうアップルパイがなくなってしまったわ。さあ、仕事ね」
「お供致します」
「当たり前よ。さて、アルファのところに行きましょうか」
こうして今日も、アンジェリクはベアトリス・ターブルロンド皇女殿下のために貢物を探しに行くのだ。
2
あなたにおすすめの小説
失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた
しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。
すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。
早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。
この案に王太子の返事は?
王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。
可愛らしい人
はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」
「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」
「それにあいつはひとりで生きていけるから」
女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。
けれど、
「エレナ嬢」
「なんでしょうか?」
「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」
その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。
「……いいえ」
当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。
「よければ僕と一緒に行きませんか?」
あなたのためなら
天海月
恋愛
エルランド国の王であるセルヴィスは、禁忌魔術を使って偽の番を騙った女レクシアと婚約したが、嘘は露見し婚約破棄後に彼女は処刑となった。
その後、セルヴィスの真の番だという侯爵令嬢アメリアが現れ、二人は婚姻を結んだ。
アメリアは心からセルヴィスを愛し、彼からの愛を求めた。
しかし、今のセルヴィスは彼女に愛を返すことが出来なくなっていた。
理由も分からないアメリアは、セルヴィスが愛してくれないのは自分の行いが悪いからに違いないと自らを責めはじめ、次第に歯車が狂っていく。
全ては偽の番に過度のショックを受けたセルヴィスが、衝動的に行ってしまった或ることが原因だった・・・。
大嫌いな従兄と結婚するぐらいなら…
みみぢあん
恋愛
子供の頃、両親を亡くしたベレニスは伯父のロンヴィル侯爵に引き取られた。 隣国の宣戦布告で戦争が始まり、伯父の頼みでベレニスは病弱な従妹のかわりに、側妃候補とは名ばかりの人質として、後宮へ入ることになった。 戦争が終わりベレニスが人質生活から解放されたら、伯父は後継者の従兄ジャコブと結婚させると約束する。 だがベレニスはジャコブが大嫌いなうえ、密かに思いを寄せる騎士フェルナンがいた。
【完結】1王妃は、幸せになれる?
華蓮
恋愛
サウジランド王国のルーセント王太子とクレスタ王太子妃が政略結婚だった。
側妃は、学生の頃の付き合いのマリーン。
ルーセントとマリーンは、仲が良い。ひとりぼっちのクレスタ。
そこへ、隣国の皇太子が、視察にきた。
王太子妃の進み道は、王妃?それとも、、、、?
侯爵様の懺悔
宇野 肇
恋愛
女好きの侯爵様は一年ごとにうら若き貴族の女性を妻に迎えている。
そのどれもが困窮した家へ援助する条件で迫るという手法で、実際に縁づいてから領地経営も上手く回っていくため誰も苦言を呈せない。
侯爵様は一年ごとにとっかえひっかえするだけで、侯爵様は決して貴族法に違反する行為はしていないからだ。
その上、離縁をする際にも夫人となった女性の希望を可能な限り聞いたうえで、新たな縁を取り持ったり、寄付金とともに修道院へ出家させたりするそうなのだ。
おかげで不気味がっているのは娘を差し出さねばならない困窮した貴族の家々ばかりで、平民たちは呑気にも次に来る奥さんは何を希望して次の場所へ行くのか賭けるほどだった。
――では、侯爵様の次の奥様は一体誰になるのだろうか。
悪意には悪意で
12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。
私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。
ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。
乙女ゲームは見守るだけで良かったのに
冬野月子
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した私。
ゲームにはほとんど出ないモブ。
でもモブだから、純粋に楽しめる。
リアルに推しを拝める喜びを噛みしめながら、目の前で繰り広げられている悪役令嬢の断罪劇を観客として見守っていたのに。
———どうして『彼』はこちらへ向かってくるの?!
全三話。
「小説家になろう」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる