女公爵は軽薄に笑う

下菊みこと

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女公爵は本性を魅せる

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「あらあら…知らずに喧嘩を売ったの?可哀想」

「ふふ、ご主人様。彼が知らないことなどわかっていたでしょう?」

「うふふふふ」

「な、なんだよ…なんなんだよ…!」

「我らがターブルロンド皇国は、人間と交わった神たちが子孫のために残した国よ」

「そ、それは神話の話だろうが!」

「ええ。正しくは神ではなく化け物たちですからね」

「はあ!?」

「例えば私の家はエルドラドの黄金を守っていた邪竜の家系よ。特に私は先祖返りだから、邪竜の姿にもなれるわ。ここではあまりにも狭いから、変身してはあげないけれど」

「じゃ、邪竜…?そんな、バカな…」

「私は天使の家系ですね。まあ、ご先祖様は天使とは名ばかりの極悪非道だったそうですが。私も先祖返りですから、天使の羽根くらいは出せますよ?ほら、こんな風に」

化け物が白い羽根を広げた。本物…なのか。

「ひっ…」

「ついでにいうとね、我らがお姫様の家系…皇族は、私の家系とは別の系譜の竜種よ。極東の国にいらした頃は竜神として崇められていたらしいわ」

「…っ!」

「つまり貴方は、この国に手を出した時点で終わっていたのよ」

最初から負けなんて、なんで俺は欲をかいてこんな国に来てしまったのか…。

「…た、助けてくれ!なんでもするから!頼む!」

「んー…そうねぇ…まあ、貴方が私のカジノにちょっかいをかけていた証拠でも差し出してくれたら、命までは取らないけれど…」

「机の!一番上の引き出しだ!そこにある書類がある!」

「あら、ありがとう。リュカ」

「はい。…これですか?」

「そ、そうだ!だから許してくれ!」

「…ふーん。住民たちからの陳情書、ね。なるほど、カジノのせいで治安が悪化?よく考えたわね。実際には全く逆で、カジノのおかげで街が潤い治安が良くなってきたというのに」

「住民たちからの陳情書、というのが悪質ですねぇ」

「わ、悪かった!認める!それが偽造なのは認めるから!」

「…。リュカ。治安部隊に連絡。その書類を証拠として提出」

「はい、ご主人様」

「牢屋で一生反省していなさい」

「い、一生…?」

「公爵家のカジノにちょっかいをかけておいて、牢から出てこれると思って?まあ、ある意味牢は安全よ。私の手を離れるのだから」

一生牢など考えたくもないが、この化け物たちに殺されるくらいなら、その方がマシだ。

「わ、わかった…わかりました…」

「うふふ。素直は好きよ」

「治安部隊は今からゲートを広げて来てくださるそうです」

「あ、そうそう。アレキサンドライトは私が貰うわ。いいわね?」

「はい…」

俺はもう戦意を喪失していた。そのまま治安部隊とやらに捕まって、監獄の牢に閉じ込められた。

「はぁ…全く。普通の人間たちにとって私達が異質なのはわかるけれど、あんまりな反応をされると傷付くわ」

「ご主人様。そんな顔をなさらないでください。…あの人間、一発チェーンウィップで叩いておけばよかったな」

「ああ、そういえばあの人本人には暴力を振るってなかったわね。一発ハリセンで叩いてもよかったかも…なんてね?」

アンジェリクが戯けてリュカにウィンクしてみせると、リュカの表情は穏やかになる。

「ふふ。ご主人様がお気になさることなど何もありませんからね?」

「ええ。ああ、そうだ。せっかくここまで来たんですもの。美味しいカフェがあるそうよ、寄って行きましょう?」

「いけません。もうティータイムは楽しんだでしょう。夕飯が入らなくなります」

「はーい…せっかくリュカと一緒に楽しめると思ったのに…」

「それはまた別の機会に。さあ、帰りましょう、ご主人様」

「ちぇっ」

リュカが馬車を走らせる。アンジェリクは先程、リュカに庇われて抱きしめられた時の温もりを思い出してクフフと小さく笑う。アンジェリクはその胸の温かさの理由を、幼馴染との友情の延長線だと勘違いしたままだ。
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