女公爵は軽薄に笑う

下菊みこと

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女公爵は薄く笑う

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テンペスタファミリー。アルカンシエル王国で最近結成されたマフィア。ボスであるウィット・テンペスタの手によって異様なまでのスピードで大きく成長している。そしてその手はターブルロンド皇国にまで伸びていた。しかしウィットが目を付けたエルドラドのカジノは一切ウィットに傾くことはなかった。そこでウィットはカジノに横槍を入れつつ、エルドラドの女公爵アンジェリクを従えるベアトリス皇女の好みそうな宝石を闇オークションで買った。その情報をアンジェリクが仕入れて、自分の城とも言えるテンペスタファミリーの屋敷まで来るように。あとは蜂の巣にでもしてやればいいのだ。そしてそのまま芋づる式に全てを手に入れる。荒事は慣れている。きっと上手くいくはずだ。

「すみません。エルドラド家の者ですが、急なことで申し訳ありません。我が主人がウィット様とお話したいとのことで、お時間いただけますでしょうか?」

「もちろん!さあ、上がってください」

自室に誘い込む。そこには部下を十人ほど待機させてある。そこで蜂の巣だ。

「うふふ。急なことでごめんなさいね?実はこの間貴方が手に入れたというコント・ド・フェ・アレキサンドライトのことなのだけれど」

「それでしたら自室にありますが?」

「是非見せてくださる?そして、出来れば譲っていただきたいの」

「そうでしたか、アレキサンドライトの件で。見せるのは吝かではないのですが、譲るとなると結構致しますよ?」

「ふふ、構わないわ。我らがお姫様の願いだもの」

「そうですか、ではこちらへ」

自室に上手く連れてこられた。あとは部下たちに合図を送るだけだ。

「あら、あれがコント・ド・フェ・アレキサンドライトね。綺麗だわ」

「ええ、そうでしょうとも。冥土の土産に持っていきますか?」

「え?」

「今だ!野郎ども!」

待機していた部下たちが現れる。アンジェリク公爵と執事は目を丸くした。

「ご主人様!」

「リュカ!」

「もう遅い!」

執事はアンジェリク公爵を庇うように抱きしめたが、無慈悲に銃声が響く。これで蜂の巣に出来た。俺の勝ち、だ。

…そのはず、だった。

「…もう、リュカ。服が穴だらけよ。男も身嗜みは大事よ?」

「すみません、ご主人様。ですが、ご主人様の衣服が汚れなくてよかった」

「うふふ。それもそうね。このドレス、お気に入りだもの」

「な、なんで…」

なんで、生きていやがる?しかも、無傷?

「あらあら、うふふ。そんなに怯えられると悲しいわ」

「では、種明かしといきましょうか」

「…っ、や、野郎ども!びびるな!銃がダメなら拳で殺せ!」

「おやおや」

しかし部下たち十人は一瞬でのされた。

「ば、化け物…」

「ええ、そうですよ。化け物です」

「え…」

「だって、私もリュカもターブルロンド皇国の貴族だもの。ねぇ?」

「ええ」

「な、何言って…」

「ターブルロンド皇国の皇族や貴族はね、みんな化け物の混血なのよ?」

「…は?」
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