女公爵は軽薄に笑う

下菊みこと

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女公爵は水族館を視察する

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アンジェリクはリュカを連れてエルドラド公爵家直轄の水族館に視察に訪れた。

「自分で用意させたとはいえ、やっぱり大きな水槽よね、これ」

「入場していきなりこの大型水槽をみると圧倒されますね」

「まあ、もっと進むと小さな海見たいな水槽があるんだけれどね」

「大型水槽はこの水族館の目玉ですから」

アンジェリクは大型水槽を悠々と泳ぐ魚を目で追う。優雅ささえ感じるほどに美しい魚達。だがアンジェリクはつい美味しそうだと思ってしまう。

「…こんなに魚を見ていると、お腹が空くわ」

「進んでいけばレストランもありますよ。新鮮な海の幸をふんだんに使っていますから、お腹を空かせて楽しみにしておきましょう」

「そうね、わかったわ」

アンジェリクはリュカを連れて水族館の展示をみながら進む。

「ここからは小さな水槽での展示がメインになりますね」

「あ、カニ」

「エビもいますね」

「食べられる種類なのかしら…」

「こちらのカニは食べられる種類のようですね。レストランで食べられるそうですよ」

「あら、それは楽しみだわ」

アンジェリクの頭の中では、すでにレストランでの食事が大半を占めていた。リュカはそんな幼さを見せるアンジェリクが可愛く思える。

「ご主人様、もうすぐ目玉の超大型水槽ですよ」

「あら、ウミガメは観れるかしら」

「寄って来てくれるといいのですが」

アンジェリクとリュカは超大型水槽の前に出た。

「…わぁ」

「これは…圧巻ですね…」

「すごいわ…まさに小さな海じゃない。あ、ウミガメだわ!こっちにきたわよ!」

「おや、可愛らしいですね」

「可愛いわ!…ねえ、本当に海ってこんな感じなの?」

「どうでしょう?かなり再現されているとは思いますが」

「…いつか、二人で行ってみたいわね」

「そうですね…海はともかく、ここにはまた今度一緒に来ましょうか」

「!絶対よ?約束よ?」

「もちろんですよ、ご主人様」

「うふふ!…うーん、ずっとみていたいけれど、そろそろ先に進みましょうか」

「ええ、行きましょうか」

アンジェリクとリュカはしばらく超大型水槽を楽しんだ後、先に進む。

「あ、やっとレストランね。待ち侘びたわ」

「何を頼みましょうか。海鮮丼もいいですが、シーフードカレーやフリッターなどもいいですね」

「うーん、せっかくだから海鮮丼にするわ」

「なら私はシーフードカレーにしますね」

アンジェリクとリュカはレストランでの食事に舌鼓をうつ。レストランの接客は丁寧であり、味も申し分ない。アンジェリクは満足して頷いた。そんなアンジェリクを見て安心するリュカ。

「このレストランも合格のようですね」

「ええ。最高だわ」

「それは良かった」

レストランでの料理を楽しんだ後、水族館の展示を見に戻るアンジェリクとリュカ。次の大型水槽では、アザラシへの餌やりが始まっていた。

「あら、アザラシ」

「貴重な餌やりシーンのようですね。お客様方が集まっていますね。ご主人様も見ていきますか?」

「せっかくだから楽しんで行きましょうか」

アンジェリクとリュカはアザラシへの餌やりシーンを楽しむ。一生懸命に餌を食べるアザラシは可愛らしい。

「可愛かったわね、リュカ」

「そうですね、ご主人様」

「そろそろイルカショーの時間よね。行ってみましょうか?」

「いいですね。この水族館のもう一つの目玉ですから」

アンジェリクはリュカを連れてイルカショーの会場に向かう。広い会場にたくさんの人が集まっていた。

「座れる場所はあるかしら?」

「ご主人様。こちらが空いていますよ」

「ありがとう、リュカ。リュカも隣に座りなさい」

「ありがとうございます、ご主人様。失礼致します」

アンジェリクの隣に座るリュカ。ちょうどその時イルカショーが始まった。

イルカが水中で速度をつけて水面から飛び上がり、様々なジャンプを披露する。最後に、空中にぶら下げたボールをジャンプしたイルカが尾で叩いた瞬間大きな拍手が巻き起こる。ちょっとうるさいくらいである。

「面白かったわね」

「なかなか見応えがありましたね」

「この後オットセイショーもあるのよね?見ていく?」

「目玉イベントではありませんが、楽しそうだと思いますよ」

「じゃあ見ていきましょうか」

アンジェリクとリュカはそのまま残り、オットセイショーを見ることにした。意外とオットセイショーも見ていく客は多いようで、空いた席は少ない。

「あら、意外とオットセイショーも人気じゃない」

「嬉しい誤算ですね」

「有り難いことだわ」

そしてオットセイショーは始まった。フラフープが投げられて、オットセイが身体を揺らして首でキャッチする。他にも、ボールを頭でトスしてトレーナーとリレーしたり、なかなか芸達者なオットセイのようだ。そして一番盛り上がったのは、なんとオットセイのお絵描きである。オットセイが絵の具が付いた筆を口にくわえてキャンバスにトレーナーの似顔絵を描いた。かなり再現されている。上手い。ギャラリーは大いに湧いた。

「…リュカ」

「…はい、ご主人様」

「これからはこのオットセイショーも目玉イベントに加えるわよ」

「かしこまりました」

「見に来て良かったわ。私、こんな金の卵を放置していたのね…勿体ない…」

「ですが、これから盛り上げていけますよ」

「そうね。あのオットセイちゃんには長生きしてもらわないと…餌のグレードを上げさせなくちゃね」

「他のオットセイに仕込むのもお忘れなく」

「もちろんよ。ああ、なんだか急にオットセイが可愛く思えてきたわ。元々嫌いではないけれど」

「私もですよ、ご主人様」

「あら、奇遇ね?」

「ふふ、ええ」

こうして視察に訪れた甲斐もあり、オットセイショーという一大イベントの価値に気付けたアンジェリクとリュカ。イベントも終了し、他の展示も見て回った二人はホテルに戻ってゆっくり休んだ。
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