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彼女は小麦の病気を癒す
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「ふむ……」
ボーモンはこの日、悩んでいた。領内の畑で、小麦が病に侵されて今年の収穫量が下がりそうだと報告が上がっていた。
「我が領内だけでなく、国内全域で小麦の病が広がっているのか。厄介だな」
それはバスチアン領だけでなく全国的にみられる傾向らしい。小麦の物価が一気に上がるかもしれない。早め早めに買い溜めすることも検討しなければ、最悪飢饉が起きる可能性もある。バスチアン侯爵家には潤沢な資金はあるので、あとはどのくらい買い込むか考えなければ。
「ボーモン様ー!」
その時、ボーモンの耳にいつもの能天気な声が聞こえてきた。険しくなっていたボーモンの表情が自然と和らぐ。
「テレーズ、どうした?」
「そろそろ三時のおやつの時間ですよ!今日は一緒に食べる約束です!」
「ああ、そうだったな。遅れてすまない。一緒に食べよう」
「わーい!」
ボーモンは一度悩むのを中断してテレーズに付き合う。
「でもボーモン様。さっき資料とにらめっこしているお顔がとっても怖かったです。なにかありましたか?」
「ん?ああ……小麦が病に侵されて、それでなくても収穫が遅れているのに今年の収穫量が少ない可能性があってな。小麦が高級品になるかもな」
「え、大変!」
「しかも、国内全域でその傾向がある。思ったより大事になりそうだ」
そこまで聞くとテレーズはうんうんと唸りだす。
「どうした?テレーズ」
「いや……幸福の木を育てられる私の魔力なら、ひょっとして小麦の病気も癒せたりしないかなって思って」
「!……なるほど」
確かに一理ある。テレーズの魔力を歌に乗せて小麦に聞かせるのは、有りかもしれない。
「絶対無理のない範囲で押しとどめますから、試してみませんか?ボーモン様」
「早速明日、二人で農地に行ってみよう。」
「はい!」
こうしてテレーズはボーモンと共に領内の畑に向かうことになった。
「んー……農地はのどかで素敵ですねー」
「自然豊かでリラックスできるな」
そして、翌日。テレーズとボーモンは馬車を走らせて畑に出向いた。ここ最近テレーズの良い評判ばかりを聞き、すっかりテレーズ大好きになった領民たちがテレーズを大歓迎して、お菓子やらお茶やらお花やら、ありとあらゆる方法でおもてなしをしてしばらく身動きが取れなくなったのは余談である。ちなみにボーモンはついで程度の扱いだったが本人は全く気にしていない。むしろテレーズが丁重に扱われて喜んでいるくらいである。
「では、歌ってみますね」
「ああ」
テレーズが目を閉じて集中し、魔力を歌に乗せて畑全域に届ける。優しい歌声に、ボーモンはもちろん領民たちも聞き惚れた。
「奥様の声綺麗!」
「うっとりしちゃう……」
「さすが奥様!」
「素敵……」
「見ろ!枯れかけていた小麦が元気を取り戻したぞ!」
テレーズが歌い終わり目を開けた頃には畑の小麦はすっかり元気を取り戻し、たくさん実っていた。あとは収穫して出荷するだけという状態になっており、テレーズはほっとする。
「病のせいで収穫が例年より遅れましたが、これでなんとか出荷できます!ありがとうございます、奥様!」
「ありがとうございます!」
「いえいえそんな!皆様のお役に立てればなによりです!」
すっかり領民たちのアイドルと化したテレーズは、感謝されて喜ばれ揉みくちゃにされていた。
ボーモンはこの日、悩んでいた。領内の畑で、小麦が病に侵されて今年の収穫量が下がりそうだと報告が上がっていた。
「我が領内だけでなく、国内全域で小麦の病が広がっているのか。厄介だな」
それはバスチアン領だけでなく全国的にみられる傾向らしい。小麦の物価が一気に上がるかもしれない。早め早めに買い溜めすることも検討しなければ、最悪飢饉が起きる可能性もある。バスチアン侯爵家には潤沢な資金はあるので、あとはどのくらい買い込むか考えなければ。
「ボーモン様ー!」
その時、ボーモンの耳にいつもの能天気な声が聞こえてきた。険しくなっていたボーモンの表情が自然と和らぐ。
「テレーズ、どうした?」
「そろそろ三時のおやつの時間ですよ!今日は一緒に食べる約束です!」
「ああ、そうだったな。遅れてすまない。一緒に食べよう」
「わーい!」
ボーモンは一度悩むのを中断してテレーズに付き合う。
「でもボーモン様。さっき資料とにらめっこしているお顔がとっても怖かったです。なにかありましたか?」
「ん?ああ……小麦が病に侵されて、それでなくても収穫が遅れているのに今年の収穫量が少ない可能性があってな。小麦が高級品になるかもな」
「え、大変!」
「しかも、国内全域でその傾向がある。思ったより大事になりそうだ」
そこまで聞くとテレーズはうんうんと唸りだす。
「どうした?テレーズ」
「いや……幸福の木を育てられる私の魔力なら、ひょっとして小麦の病気も癒せたりしないかなって思って」
「!……なるほど」
確かに一理ある。テレーズの魔力を歌に乗せて小麦に聞かせるのは、有りかもしれない。
「絶対無理のない範囲で押しとどめますから、試してみませんか?ボーモン様」
「早速明日、二人で農地に行ってみよう。」
「はい!」
こうしてテレーズはボーモンと共に領内の畑に向かうことになった。
「んー……農地はのどかで素敵ですねー」
「自然豊かでリラックスできるな」
そして、翌日。テレーズとボーモンは馬車を走らせて畑に出向いた。ここ最近テレーズの良い評判ばかりを聞き、すっかりテレーズ大好きになった領民たちがテレーズを大歓迎して、お菓子やらお茶やらお花やら、ありとあらゆる方法でおもてなしをしてしばらく身動きが取れなくなったのは余談である。ちなみにボーモンはついで程度の扱いだったが本人は全く気にしていない。むしろテレーズが丁重に扱われて喜んでいるくらいである。
「では、歌ってみますね」
「ああ」
テレーズが目を閉じて集中し、魔力を歌に乗せて畑全域に届ける。優しい歌声に、ボーモンはもちろん領民たちも聞き惚れた。
「奥様の声綺麗!」
「うっとりしちゃう……」
「さすが奥様!」
「素敵……」
「見ろ!枯れかけていた小麦が元気を取り戻したぞ!」
テレーズが歌い終わり目を開けた頃には畑の小麦はすっかり元気を取り戻し、たくさん実っていた。あとは収穫して出荷するだけという状態になっており、テレーズはほっとする。
「病のせいで収穫が例年より遅れましたが、これでなんとか出荷できます!ありがとうございます、奥様!」
「ありがとうございます!」
「いえいえそんな!皆様のお役に立てればなによりです!」
すっかり領民たちのアイドルと化したテレーズは、感謝されて喜ばれ揉みくちゃにされていた。
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