エステル家のお姫様は、今日も大切に愛される。

下菊みこと

文字の大きさ
2 / 62

天使とは

しおりを挟む
「それでお父様、魔導師様は今日いらっしゃるのよね?」

「ああ、そうだよ」

「魔導師様ってどんな方?」

日傘のお礼を言った翌朝、アンリエットはジスランに訊ねる。

昨晩は夜も遅かったのですぐに眠るように言われて、魔導師のことを聞けなかったのだ。

「…まあ、なんというか。変な奴だよ」

「変な奴?」

「魔導にしか興味がないんだ。知っていると思うけど、魔導とは魔法や魔術の研究だね」

「それはもちろん知っていますわ!ようは学者先生なのよね?」

「そうだね」

アンリエットは魔法や魔術は使えない。魔法や魔術は、本人の適性が求められる。アンリエットは適性がなかった。それ故に、アンリエットは魔法や魔術に憧れている。

「じゃあきっと、すごい方なのね」

「…まあそうだね。魔導師として最先端の技術を持っているよ。人生の全てを魔導に捧げている奴だから」

「お会いするのが楽しみだわ!」

「…アン、多分アイツは不躾なお願いをしてくると思うけど、許してやってね。お願いは断っていいから」

「…?」

アンリエットはジスランの言葉に首を傾げる。しかし、こくりと頷いた。

「お父様がそう言うのなら。ところで、お父様と魔導師様はどんな仲なの?」

「んー…子供の頃からの付き合いだよ。アイツは伯爵家の次男で、ずっと魔導師になると張り切っていて。私もそんな自由なアイツを気に入って、お小遣いから資金提供したりしてたなぁ…」

「まあ」

「そしたら学生の内からどんどん魔導を極めてね、結局卒業と同時に王家から子爵位を授与され、国家魔導師として採用されて…それでも私とは友達付き合いを続けてくれてるんだ」

「思った倍はすごい方ね!?」

個人の力で子爵位を賜るなど、余程の研究成果を出したのだろう。アンリエットは思わず此処にいない魔導師に拍手を送る。

「そんなアイツに、アンのことを話したら日傘を魔道具にしようって言って研究を始めてくれて。他の研究と並行してあの日傘を作ってくれたんだよ」

「優しい方ね…尊敬するわ」

「いやそれは…ううん…」

「?」

ジスランはアンリエットに言うべきか悩むが、どうせ魔導師と会ったら聞くことだ。口を開いた。

「アンが、魔法にも魔術にも適性がないからなんだ」

「え?」

「普通は魔法か魔術、どちらかには適性がある。しかしアンには両方とも適性がない。そういう存在は、アンが思うより希なんだ」

アンリエットは外に出るのを極力控えていた。そのため教養はもちろん身に付けてあるが、知らないことも多い。

「まあ、そうなの?…それは、ちょっと悲しいわ」

「ああ、落ち込む必要はないんだよ。そういう存在は、魔導師達からは天使と呼ばれているんだ」

「天使?」

「そう。天使には魔法や魔術は決して扱えない。そういう言い伝えさ。そして、天使は魔法や魔術は使えない代わりにその身体には素晴らしい価値がある」

「え?」

きょとんとするアンリエットに、ジスランは言った。

「天使の爪や髪を魔術の触媒にするとね、素晴らしい効果を発揮するんだよ。だから、魔導師達はいつだってそれを求めている」

「あら…私ってすごいの?」

「そうだよ、アン。だから、日傘が完成したのは嬉しいし、アンが使ってくれるのはもっと嬉しいけど。外に出る時は、護衛を必ず連れて行くんだよ」

「はい、お父様」

こくりと頷いたアンリエットに、ジスランは満足そうに頷いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【コミカライズ決定】愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
【コミカライズ決定の情報が解禁されました】 ※レーベル名、漫画家様はのちほどお知らせいたします。 ※配信後は引き下げとなりますので、ご注意くださいませ。 愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

公爵令息様を治療したらいつの間にか溺愛されていました

Karamimi
恋愛
マーケッヒ王国は魔法大国。そんなマーケッヒ王国の伯爵令嬢セリーナは、14歳という若さで、治癒師として働いている。それもこれも莫大な借金を返済し、幼い弟妹に十分な教育を受けさせるためだ。 そんなセリーナの元を訪ねて来たのはなんと、貴族界でも3本の指に入る程の大貴族、ファーレソン公爵だ。話を聞けば、15歳になる息子、ルークがずっと難病に苦しんでおり、どんなに優秀な治癒師に診てもらっても、一向に良くならないらしい。 それどころか、どんどん悪化していくとの事。そんな中、セリーナの評判を聞きつけ、藁をもすがる思いでセリーナの元にやって来たとの事。 必死に頼み込む公爵を見て、出来る事はやってみよう、そう思ったセリーナは、早速公爵家で治療を始めるのだが… 正義感が強く努力家のセリーナと、病気のせいで心が歪んでしまった公爵令息ルークの恋のお話です。

【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...