エステル家のお姫様は、今日も大切に愛される。

愛に包まれる

アンリエットとジェイドが婚約して二週間経つと、その婚約は大々的に発表された。

中にはジェイドに嫉妬する貴族の男もいたが、ジェイドに己では敵わないことなど知っているのだろう。奥歯を噛み締めて祝福した。

一方、アンリエットはたくさんの祝福を受けた。身体が弱くまさに『深窓の令嬢』であるアンリエット。周りにいる貴族の令嬢も、選び抜かれた一部の者のみだったため下手な嫉妬を受けることはなかった。

「ふふ、ジェイド様。私幸せです」

「俺もだ、アンリエット」

婚約を結んだアンリエットとジェイドは、距離感を一気に詰めた。つまりはラブラブになった。しかし、いきなりのそれに違和感を感じないほど二人はお似合いだった。そして、お互いそれを悪く思っていない。

「ジェイド様はお父様から次期公爵になるにあたって色々教わっていらっしゃるのですよね？」

「そうだな」

「順調ですか？」

「まあ…そうだな。順調に色々覚えてる。というか、ジスランの奴すごい色々詰め込んでくるから覚える他ない」

「ええっ…？だ、大丈夫ですか？」

アンリエットは心配するが、ジェイドは笑って答える。

「これでも天才だからな、座学もお手の物さ。ただ、すごく甘いものが欲しくなるけど。キャンディーだけじゃ足りないな」

「で、でしたら何か…ココアでもお持ちします！」

「いや、それよりもっと良いものがあるだろ？」

「え？…ん、」

ジェイドがアンリエットの柔らかな唇を奪う。アンリエットは嫌がる様子はない。

「ん…ジェイド様？」

「甘い」

「…もう！」

アンリエットは照れてぽかぽかジェイドを叩く。軽くぽかぽかされても全然痛くない。そんな可愛いじゃれ合いを、ジェイドは気に入っている。

「愛してるよ、アンリエット」

「ジェイド様…私も、大好きです」

そうして二人は、婚約者として新たな関係を深めていく。












「…」

「…」

時は流れて、結婚式当日。アンリエットはすっかり緊張しきっている。

「…が、頑張らないと」

「大丈夫です、アンリエット様。ほら、深呼吸」

「すー、はー」

「お上手です、ご主人様！」

「ぴゃっ」

そこにジェイドが来た。

「アンリエット」

「ジェイド様」

「…綺麗だ」

花嫁姿のアンリエットに見惚れるジェイド。そんなジェイドに、緊張が吹き飛んで照れてしまうアンリエット。

「て、照れてしまいます…っ」

「…可愛い、アンリエット」

ジェイドの慈しむような瞳に、アンリエットはますます照れる。

「うう…ジェイド様…」

「…アンリエット。待ってるから」

そして誓いの場に向かうジェイド。アンリエットも覚悟を決めた。ジスランのエスコートで、会場に入る。アンリエットは、優しい父に導かれてジェイドの元へ向かう。

「アン。幸せになるんだよ」

「はい、お父様…」

婿入りの結婚なのでこれからもジスランの元で暮らしていくアンリエットだが、この時ばかりはどうしても感極まってしまう。そして、ジェイドの隣に来たアンリエット。神父が誓いの言葉を聞く。

「貴方は、夫となり彼女を幸せにすると誓いますか？」

「誓います」

「貴女は、妻となり彼を支えていくと誓いますか？」

「誓います」

「では、誓いのキスを」

二人はお互いに向かい合い、見つめ合う。

「…ずっと、一緒にいよう」

「はい、ジェイド様…」

そして二人の唇が重なった。

見守っていたアンリエットを大切に思う人々は、涙を流したりひたすら祝福の言葉を繰り返したりと反応は様々。

アンリエットはこれからも、たくさんの愛に守られて幸せに暮らすだろう。アンリエットは、そっと幸せそうに微笑んだ。