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家庭教師と使用人達の末路

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「なに!?私が解雇!?馬鹿な!あの愚鈍なお嬢様を立派な公爵令嬢に育て上げたのはこの私だぞ!!!」

家庭教師の男が声を荒らげる。が、私は冷たい目を向けるだけだ。

「お嬢様を愚鈍な、と仰いましたな。撤回していただきたい」

私の侍従…私がどんなに妹を大切に思うか一番知っている私の片腕…が私がキレそうになっているのを察して口を開く。

「本当の事を言って何が悪い!あの出来の悪い活発なだけのじゃじゃ馬娘を従順で大人しい淑女に変えたのはこの私だ!功績を認められて重宝されるならともかく、何故解雇など!」

「…決めた。手切れ金も紹介状も渡さん。とっとと立ち去れ」

「なっ…!そんな横暴、いくら公爵家とはいえ許されるわけが…!」

「なら訴えればいいだろう。裁判所に妹への暴力の証拠でも渡してやろうか?困るのはどっちだろうな。言っておくが、本当ならそれこそ治安部隊に貴様を『たかが男爵家の三男風情が公爵家の令嬢に家庭教師という立場を利用して暴力を振るった』と訴えてやってもいいんだぞ。どうする?」

「…っ!!!」

まあ、公爵家の令嬢の家庭教師として抜擢されたにも関わらず、辞めるときに紹介状すら書いてもらえなかった時点でもう、家庭教師としてはやっていけないだろうけどな。…むしろ、例え他の仕事をしようとしても、この国で生計を立てられるかも怪しくなるが。

「…かしこまり、ました…申し訳、ありませんでした…すぐに荷物をまとめますので、何卒治安部隊にだけは…」

「さっさと荷造りを終わらせて出て行け。…それと、もし妹のことで変な噂を流したら殺す。覚悟しておけ」

「…は、はい」

ああ、気に食わない。だが、この男はもう終わった。この国で生きていくのも難しくなるはずだ。あと、この男の実家である男爵家にも苦情の手紙を送りつけてやる。それだけでも男爵家への制裁としては充分な効果が出るだろう。誰がどこで見ているか分からないのが貴族社会、だからな。

…いや、実際にはこの男を別邸に閉じ込めて毎日鞭打ちくらいはしたかったのだが、腹心の部下に止められてしまったので仕方なくこんな甘い処分にしているのだが。

あと、その他使用人達にも紹介状無しで解雇、手切れ金も無し、もし妹のことで変な噂を流したらどんな手を使っても殺すと脅しをかけるのも忘れなかった。みんなもうこの国では生きて行けまい。もちろん実家にも苦情を入れるのも忘れない。これで実家にも頼れまい。ざまぁみろ。

…本当はもっと痛めつけてやりたかったしなんなら拷問にかけたかったけれど。

とりあえず、この処遇についてはエレナの耳に入れる気はない。あの子は別邸での記憶なんて早々に忘れて幸せになるべきだし、優しい子だから知ってしまえば心配するに決まってる。それはダメだ。だから秘密。可哀想な、可愛いエレナは私が守るのだ。いつか、可哀想じゃなくなるように。世界一幸せな、可愛いエレナにするために。
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