妾の子として虐げられていた私が、爵位を継いだお兄様から溺愛されるだけ

下菊みこと

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本邸の案内

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お兄様から本邸に連れてこられて、ナタリーと仲良くなりました。ナタリーが良ければ私に本邸を案内すると言ってくれました。お言葉に甘えます。色々な部屋を見て回ります。すると当たり前ですが、使用人達とすれ違います。その時に嫌な目を向けられることはなく、なんだか微笑ましいものを見るような目を向けられてむずむずします。一体何故妾の子である私がこんなに歓迎されているのでしょうか?本邸の使用人達も私のことを知らないはずないのに。

「お嬢様、こちらが執務室ですよ」

「ここでお兄様はお仕事をしているのですね」

「はい。入ってみますか?」

「え、でもお兄様はお忙しいですし…」

「お嬢様なら大丈夫ですよ!ね?」

「えっと…じゃあ少しだけ…」

実はお兄様の仕事をしているところが見てみたかった私はまたもお言葉に甘えてしまいます。控えめにドアをノックすると、お兄様が入っていいと許可をくれました。

「あの、お兄様…」

おずおずとドアを開いて隙間から顔を覗かせると、お兄様は立ち上がって満面の笑みで手招きしてくださいます。

「エレナ。来てくれて嬉しいよ。エレナの顔を見るだけで執務で疲れた心が癒されるようだ。でもどうした、何かあったか?」

お兄様は私をご自分の膝の上に乗せてそう問います。

「いえ、その、ナタリーが本邸の案内をしてくれたのです。とても楽しくて…他の使用人達も優しく見守ってくれました」

「それは良かった。嫌なことはないんだな?」

「はい、全然!私なんかにもすごく良くしていただいて、幸せです」

「…それは良かった。でもな、エレナ」

「はい」

「私なんか、なんて言っちゃダメだ。エレナはセヴラン公爵家の大切にされるべきご令嬢なんだからな。それに何より、可愛い私の妹なんだ。なんか、なんて言われたらお兄様はとても悲しい。わかってくれるな?」

「は、はい、お兄様」

なんか、というのはセヴラン公爵家の品を落とす失言だったようです。やはり私はダメな子です…。でも、お兄様が教えてくださって良かったです。頑張って治しましょう。

「で、なんで執務室に入ってくれたんだ?」

「その、お兄様の仕事をするところを見たくて…かっこいいんだろうなって思って…ダメでしたか?」

「まさか!とても嬉しいよ、ありがとう。では、執務に励む姿を我が妹に見せようか。そちらのソファーに腰掛けて好きなだけ眺めているといい。私は今猛烈にやる気が出ているからな。かっこいい姿を見せられそうだ」

「ふふ、はい」

そうしてお兄様が執務を終えるまでの間ずっとお兄様を観察させて貰いました。お兄様は集中力がすごいです。仕事が早いし、何よりその姿がとてもかっこいいです。執務を終えたお兄様に正直にその感想を伝えると、お兄様から頭を撫でられました。また伸ばされた手にびくっと反応してしまいましたが、お兄様は気にせず優しい手つきで頭を撫でてくれました。はやく慣れたいな。
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