妾の子として虐げられていた私が、爵位を継いだお兄様から溺愛されるだけ

下菊みこと

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奇跡

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私はひたすら邪魔にならないように屋敷で大人しく過ごしていましたが、ふと思います。このままでいいのかと。何もできない自分でいいのかと。

思い詰めていたら、エルが私の周りをふわふわ飛んで鳴きました。

「…みゅう!」

そして先程お兄様が助けた少年とそのご両親の周りをふわふわ飛んで、色々な指示を出すセバスチャンの周りを飛んで、そしてもう一度私の周りを飛んでから玄関の方を手で指し示しました。

「…うん!行こう!」

「お嬢様…?どこに行かれるおつもりですか!?」

「ナタリー、ごめんなさい。後で叱られるから、今だけ行かせてください!」

「お嬢様、いけません!」

「ナタリア。行かせて差し上げなさい」

「セバスチャン!」

「行かせて差し上げろ、分かるだろ」

「…」

「お嬢様、くれぐれもご無理はなさらないでくださいませ。旦那様から我々が叱られますのでなあ」

「はい!」

私はエルに魔力を回して大きな身体になってもらいます。そしてそのモフモフの背中に飛び乗って、エルに空を飛んでもらいます。落っこちないように必死にしがみつきました。

「みゅう」

そういえば避難所の場所わからないやと飛び出してから気付きましたが、エルが着地したところは避難所でした。なんでだろうと思いましたが、エルは嗅覚に自分の魔力を回してお兄様とルーヴの匂いを辿っていたそうです。言葉はわからないけれど、エルのジェスチャーで伝わりました。

そして避難所に入ると、少年が少女を抱いて助けてと叫んでいました。私はお兄様の元へ急ぎます。

「お兄様ー!」

お兄様は目を見開きます。

「エルの力、使っていいですか!?使いますね!」

「使うの前提じゃないか。…頼む」

「エル、あの二人に治癒魔法やっちゃって!」

「…みゅー!」

エレオノールがエルに魔力を有りったけ回し、エルの渾身の治癒魔法が今にも死にそうな兄妹を包む。それはまるで奇跡のよう。光が溢れて、兄の身体の震えは止まり妹は目を覚ました。

「…お兄ちゃん?」

「…よかった!よかった…よかった…ありがとうございます!ありがとうございます!」

その奇跡に誰もが歓喜した。奇跡だと。公爵様の妹君は奇跡の姫君だと。

マクシミリアンは、助けられたのは良かったがどうしてこうなったと頭を抱えていた。
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