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皇太子殿下にエスコートされます
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クリス様のダンスパーティーのパートナーになることが決まってから、私はクリス様と何回もダンスの練習を積み重ねました。
クリス様のお陰で普段よりも上手く踊れて、練習だというのにすごく楽しくて時間を忘れて踊り続けました。
そして、クリス様は私にダンスパーティーで着るドレスと装飾品とダンスシューズを贈ってくださいました。
当日のメイクや髪型まで準備してくれようとしましたが、それではナタリーの仕事を奪ってしまうのでご遠慮させていただきました。ナタリーも私を着飾るのを楽しみにしていましたし。
ということで迎えたダンスパーティー当日。私は早起きして食事を抜いて、お風呂にマッサージにと念入りに準備をされ、クリス様が用意してくださったドレスや装飾品、ダンスシューズを身に纏いました。そしてメイクや髪型までナタリーにばっちりと決めてもらうと、自分でも美しいと感じるほど素敵な仕上がりになりました。
「ナタリー、ありがとうございます!すっごく素敵に変身出来ました!」
「お嬢様の元々のポテンシャルが高いからこそです!とてもお美しいです、お嬢様!」
「クリス様の贈ってくださったドレスもとっても素敵ですね…装飾品もとっても上品ですし、ダンスシューズもぴったりです」
「皇太子殿下は、お嬢様の好みとお似合いになる装いをとても良く分かっていらっしゃいますね。愛されていますね、お嬢様」
「な、ナタリー!」
「ふふ。お嬢様の一世一代の大舞台。ナタリーは見られずとも応援しておりますからね!」
「もう、ナタリーったら。…ありがとうございます。行ってきます!」
「行ってらっしゃいませ、お嬢様」
私は保護者としてダンスパーティーに参加されるお兄様の元へ行きます。正装に身を包むお兄様はとてもかっこいいです。
「お兄様!お待たせしました」
「いや、女性は身支度に時間をかけるものだ。気にするな。…エレナ、か?」
お兄様はなんだか信じられないものを見る目で私を見つめます。
「お兄様?」
「いや、すまない。…エレナの母君を、思い出した」
そう言ってお兄様は何かを詠唱しました。
「光魔法で化粧と髪型を保護した。これで泣いても髪を撫でられても化粧も髪型も崩れないぞ」
そう言いながら私の頭を思いっきり撫でるお兄様。
「…美しくなったな、エレナ。誰よりも愛している」
そうして私のおでこにキスをするお兄様に、私も背伸びをして頬にキスをしました。
そして、迎えに来てくださったクリス様の元へ向かいます。
「お待たせしました、クリス様」
「大丈夫だよ、今来たところさ」
そうして言葉を交わした後、私たちは…お互いに見惚れてしまいました。王族としての正装に身を包むクリス様はとても美しくて、私は言葉も忘れてしまいます。
クリス様も、私の方に視線が釘付けです。気に入ってくださったようで、数秒後には頬を染めつつも柔らかく微笑んで控えめに私の頭を撫でてくれました。
「エレナ、綺麗だ」
「ありがとうございます、クリス様。クリス様も、とても美しくて素敵です。正装がとても似合っていらっしゃいます」
「そうかい?エレナにそんなに褒められるなら、着て来た甲斐があったな。普段は堅苦しくて好きじゃないのだけど、初めて正装を好きになれそうだよ」
クリス様の軽口にクスクスと笑います。そして、お兄様に促されて馬車に三人で乗り込みます。
「本来ならマックスの妻か婚約者もこの場にいるべきなんだけどねぇ」
「私はまだ若いですから大丈夫ですよ」
「引く手数多だものね。だからこそ早く選べばいいのに」
「エレナと使用人たち以外の女性は苦手です」
「モテる男はつらいね」
「それを貴方が言いますか」
「僕は一人の女性以外に興味はない」
そう言い切ったクリス様に思わず顔が赤くなります。私のこと…ですよね、きっと。なんだかこそばゆいです。でも幸せです。
お兄様は顔を赤くしてクリス様から逃げるように視線を彷徨わせる私と、それを愛おしげな表情で見つめてくるクリス様を見て何かを悟ったのか驚いた表情を見せた後嬉しそうに微笑みました。
入場すると、先に入場していた方々が一斉にこちらを向きます。
「あの方が皇太子殿下の寵愛を一身に受けていらっしゃる奇跡の姫君…」
「なんとお美しい…」
「セヴラン公爵家のご令嬢なら申し分ないな…うちの娘を推薦したかったのだが、諦めるしかないか」
「なんでも領民達のために光魔法を惜しげもなく使われる心優しいお方とか」
「心根も清らかとは、文句のつけようもありませんな」
なんでそんな噂になっているのでしょう…尾ひれが付きすぎなのではないでしょうか?ふと、よくティナ様やジェシー様が仰られていた〝外堀を埋める〟という言葉を思い出して、クリス様を見ます。にこりと微笑まれました。好き。
じゃなくて、否定しないってことはクリス様の仕業ですか!?意地悪です!
…でも、そんなクリス様も好きだなんて、私はどうしてしまったのでしょうか。
クリス様のお陰で普段よりも上手く踊れて、練習だというのにすごく楽しくて時間を忘れて踊り続けました。
そして、クリス様は私にダンスパーティーで着るドレスと装飾品とダンスシューズを贈ってくださいました。
当日のメイクや髪型まで準備してくれようとしましたが、それではナタリーの仕事を奪ってしまうのでご遠慮させていただきました。ナタリーも私を着飾るのを楽しみにしていましたし。
ということで迎えたダンスパーティー当日。私は早起きして食事を抜いて、お風呂にマッサージにと念入りに準備をされ、クリス様が用意してくださったドレスや装飾品、ダンスシューズを身に纏いました。そしてメイクや髪型までナタリーにばっちりと決めてもらうと、自分でも美しいと感じるほど素敵な仕上がりになりました。
「ナタリー、ありがとうございます!すっごく素敵に変身出来ました!」
「お嬢様の元々のポテンシャルが高いからこそです!とてもお美しいです、お嬢様!」
「クリス様の贈ってくださったドレスもとっても素敵ですね…装飾品もとっても上品ですし、ダンスシューズもぴったりです」
「皇太子殿下は、お嬢様の好みとお似合いになる装いをとても良く分かっていらっしゃいますね。愛されていますね、お嬢様」
「な、ナタリー!」
「ふふ。お嬢様の一世一代の大舞台。ナタリーは見られずとも応援しておりますからね!」
「もう、ナタリーったら。…ありがとうございます。行ってきます!」
「行ってらっしゃいませ、お嬢様」
私は保護者としてダンスパーティーに参加されるお兄様の元へ行きます。正装に身を包むお兄様はとてもかっこいいです。
「お兄様!お待たせしました」
「いや、女性は身支度に時間をかけるものだ。気にするな。…エレナ、か?」
お兄様はなんだか信じられないものを見る目で私を見つめます。
「お兄様?」
「いや、すまない。…エレナの母君を、思い出した」
そう言ってお兄様は何かを詠唱しました。
「光魔法で化粧と髪型を保護した。これで泣いても髪を撫でられても化粧も髪型も崩れないぞ」
そう言いながら私の頭を思いっきり撫でるお兄様。
「…美しくなったな、エレナ。誰よりも愛している」
そうして私のおでこにキスをするお兄様に、私も背伸びをして頬にキスをしました。
そして、迎えに来てくださったクリス様の元へ向かいます。
「お待たせしました、クリス様」
「大丈夫だよ、今来たところさ」
そうして言葉を交わした後、私たちは…お互いに見惚れてしまいました。王族としての正装に身を包むクリス様はとても美しくて、私は言葉も忘れてしまいます。
クリス様も、私の方に視線が釘付けです。気に入ってくださったようで、数秒後には頬を染めつつも柔らかく微笑んで控えめに私の頭を撫でてくれました。
「エレナ、綺麗だ」
「ありがとうございます、クリス様。クリス様も、とても美しくて素敵です。正装がとても似合っていらっしゃいます」
「そうかい?エレナにそんなに褒められるなら、着て来た甲斐があったな。普段は堅苦しくて好きじゃないのだけど、初めて正装を好きになれそうだよ」
クリス様の軽口にクスクスと笑います。そして、お兄様に促されて馬車に三人で乗り込みます。
「本来ならマックスの妻か婚約者もこの場にいるべきなんだけどねぇ」
「私はまだ若いですから大丈夫ですよ」
「引く手数多だものね。だからこそ早く選べばいいのに」
「エレナと使用人たち以外の女性は苦手です」
「モテる男はつらいね」
「それを貴方が言いますか」
「僕は一人の女性以外に興味はない」
そう言い切ったクリス様に思わず顔が赤くなります。私のこと…ですよね、きっと。なんだかこそばゆいです。でも幸せです。
お兄様は顔を赤くしてクリス様から逃げるように視線を彷徨わせる私と、それを愛おしげな表情で見つめてくるクリス様を見て何かを悟ったのか驚いた表情を見せた後嬉しそうに微笑みました。
入場すると、先に入場していた方々が一斉にこちらを向きます。
「あの方が皇太子殿下の寵愛を一身に受けていらっしゃる奇跡の姫君…」
「なんとお美しい…」
「セヴラン公爵家のご令嬢なら申し分ないな…うちの娘を推薦したかったのだが、諦めるしかないか」
「なんでも領民達のために光魔法を惜しげもなく使われる心優しいお方とか」
「心根も清らかとは、文句のつけようもありませんな」
なんでそんな噂になっているのでしょう…尾ひれが付きすぎなのではないでしょうか?ふと、よくティナ様やジェシー様が仰られていた〝外堀を埋める〟という言葉を思い出して、クリス様を見ます。にこりと微笑まれました。好き。
じゃなくて、否定しないってことはクリス様の仕業ですか!?意地悪です!
…でも、そんなクリス様も好きだなんて、私はどうしてしまったのでしょうか。
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