妾の子として虐げられていた私が、爵位を継いだお兄様から溺愛されるだけ

下菊みこと

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何故かクラスメイトからダンスに誘われましたが、皇太子殿下が断っちゃいました

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皇太子殿下とファーストダンスを踊ります。まるで皇太子殿下と二人きりの世界になってしまったような、時が止まってしまったかのようなそんな錯覚。

ただ皇太子殿下だけを見つめて、ダンスだけに集中する。その短い時間が永遠に続けばいいのにと心から願います。

けれど、時は誰にでも平等にやってくるもの。ファーストダンスは終了して、私はクリス様と一緒にお兄様の元へ戻りました。

お兄様は踊り疲れただろう私達のために、シャンパンを貰っておいてくれました。クリス様と共にシャンパンを飲んで喉を潤します。

ほっと一息をついて三人で話していたところで、クラスメイトが近寄ってきて、そのままダンスのお誘いを受けました。

ダンスのお誘いを断るのはあまり良いことではありません。クリス様ともっと一緒に居たいですが、せっかく誘っていただいたので踊ってこようかと思ったのですが…。

「ごめんね。この子は僕だけの特別な人なんだ。他を当たってくれるかな」

クリス様がそう言って、私を抱き寄せました。

「く、クリス様!」

「し、失礼しました!」

その様子を見ていた貴族女性達の、きゃーきゃーという黄色い声があちこちから聞こえます。お兄様は頭を抱えていました。

「ごめんね、エレナ。君を他の男に取られるのは僕には我慢ならないみたいだ」

そう言って私の顔を覗き込んでくるクリス様。そんなことを言われたら怒れないじゃないですか。元々怒ってないですが。…なんだか、クリス様は少し狡いです。そんなクリス様が大好きなんて、私も少しおかしいのかも。でも、こうしている瞬間すら幸せなのです。

そのまま顔が近付いてきて、ぎゅっと目を閉じると頬に柔らかな感触。そっと目を開けると悪戯っぽい目を向けてくるクリス様。もう、本当に狡いです。

それを見てさらに会場中から大歓声。恥ずかしいです。お兄様は困り果てた様子でため息。ごめんなさい、お兄様。

なんだかすごい騒ぎになってしまいましたが、大人しくしていれば騒ぎにも収まって、ティナ様とジェシー様とも合流しました。

「セヴラン公爵様、ご機嫌よう」

「セヴラン公爵様ぁ、ご機嫌よう」

「ご機嫌よう、麗しいお嬢様方。いつも妹が世話になっている」

「うふふ。私の方がエレナ様にお世話になっていますわ」

「私もですぅ」

お兄様とティナ様、ジェシー様は和気藹々とした雰囲気。よかったです。

「おや、僕には挨拶は無しかな?」

「無しです無し。エレナ様、狼に頬を齧られたようですが大丈夫ですの?」

「エレナ様ぁ、嫌な時は嫌と言っていいんですよぉ?」

「君たちは本当にうるさいな!パートナーはどうした!」

「あら、私パートナーは決めていませんわ」

「私もクラスメイトと適当に踊るだけですぅ」

「…そう」

「卒業したら政略結婚ですもの。自由は謳歌しなければ」

「ということですぅ。ほっといてくださいぃ!」

「わかったわかった!悪かったよ」

こちらはこちらで楽しそうなので大丈夫ですね!
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