妾の子として虐げられていた私が、爵位を継いだお兄様から溺愛されるだけ

下菊みこと

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一世一代の大舞台は無事成功した

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エレナとダンスパーティーを楽しんで、最後にもう一度エレナをダンスに誘う。エレナは受け入れてくれて、二人でダンスに没頭する。ここ数日何度もエレナと踊っているのに、この瞬間にはただただずっとこのままでいたいと思ってしまう。

それでも終わりは来る。エレナとのダンスも今回はこれでおしまい。離れるのも寂しくて、でもプロポーズのチャンスだと気持ちを切り替えて、ポケットから指輪の入った箱を取り出し跪く。

「貴女を愛しています。どうか、僕と結婚を前提としてお付き合いしていただけませんか?」

「…!」

エレナがしゃくりあげて泣く。こくこくと何度も頷くエレナに愛おしさが込み上げる。エレナの左手を取って薬指に指輪をはめる。

優しく微笑んで、エレナの涙をハンカチで拭う。化粧はマックスの魔法でも掛かっているのか、崩れていない。

そして僕はエレナの髪の毛を一房とってキスを一つ。真っ赤に染まるエレナの表情がとても綺麗だ。

僕がエレナの前に跪いてから空気を読むかのようにしんと静まり返っていた会場が、一気に湧く。拍手喝采の中、ヒューヒューと囃し立てるように口笛も吹かれ、歓声が響く。みんなの祝福ムードに僕もエレナも少し照れる。

そして、そんな僕達の元にオーギュスティナ嬢とジェシカ嬢が近付いてくる。今回ばかりは素直に祝福してくれる二人に、涙が止まらないエレナを抱き寄せて幸せにすると誓う。

こうして僕達は結ばれることになった。

ちなみにもちろん父上と母上には今回のプロポーズ大作戦は事前報告を済ませていて、父上も母上もエレナの身辺調査は済ませている。

そして一つだけ問題はあるけどまあいくらでも揉み消せるだろうと、婚約と今後の結婚を認めてくれた。

むしろエレナに問題があることが意外だったので聞いてみたが、本人は何も悪くない。妾の子というだけのことだった。

でもそんな噂聞いたことないけどなぁと思っていたが、なんてことはない。マックスが関係者を黙らせていたらしい。さすがシスコン。

まあそんなわけでこれからエレナは僕の正式な婚約者になる。これでエレナは悪い虫に寄って来られる心配もない。安心だ。

「父上、母上。エレナへの求婚は受け入れてもらえました」

「良かったね、クリス」

「母は嬉しいですよ、クリス」

「婚約の手続き、よろしくお願いします」

「もちろんです」

母上がしっかりと頷いてくれる。

「中央教会で婚約届けを出して、婚約式を挙げなければ。クリス、もう少しだけ頑張るんだよ。結婚するまでなんだかんだで面倒だから」

「はい、父上」

「大丈夫。母もそれを乗り越えてお父様と結婚しましたからね。クリスもきちんとエレナさんを支えるのですよ」

「はい、母上」

エレナと一緒にいられるのなら、いくらでも頑張れるさ。
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