妾の子として虐げられていた私が、爵位を継いだお兄様から溺愛されるだけ

下菊みこと

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隣に君がいる幸せ

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今日も僕はエレナのところに会いに来た。中庭にテーブルと椅子を出して、二人で紅茶とお茶菓子を楽しむ。今日はタルトタタンらしい。とても美味しい。

「美味しいね、エレナ」

「はい、クリス様」

微笑むエレナに癒される。可愛らしい表情でタルトタタンと楽しむエレナは、なんだかとても愛おしい。

「今日は天気も良くていいね」

「雲一つない空、可愛らしい花達。素敵な一日ですね!」

「エレナが居てくれるから余計にね」

エレナは途端に真っ赤になる。林檎よりも美味しそうなその頬に、思わず吸い寄せられるように椅子から立ち上がる。近くまで寄って、その頬にキスを落とした。真っ赤な頬が更に赤くなり、エレナ本人から微かに香る甘い香りが僕を誘惑する。

「エレナ…」

「クリス様…」

もう一度、もう一度だけ、と何度も頬にキスを落とした。甘い。ケーキなんて目じゃないくらい、エレナは甘かった。

「…ここまでにしておこうか。お茶会どころじゃなくなるからね」

にっこり微笑む。エレナは真っ赤なまま、涙目で見上げてくる。刺激が強い。

「クリス様、あんまり意地悪しちゃ嫌です」

「あはは、ごめんね。でも、意地悪というよりエレナに誘惑されたんだよ」

「誘惑なんてしてません…」

「その真っ赤な頬と甘い香りが、僕を誘うんだよ」

「不可抗力です…」

むぅと怒っているつもりのエレナが可愛い。全然怒れていない。むしろ拗ねてるだけだ。そんなエレナの頭の上に、エルが乗ってくる。

「ふふ、どうしたの?エル」

「みゅー…」

「ごめんごめん。エル、怒らないでおくれ。本当に意地悪のつもりはなかったんだよ」

「みゅー」

エレナを守っているつもりなのか、僕に睨みをきかせてくるエルに謝る。エルは最近すごく懐いてくれているとはいえ、エレナを守る方が僕に甘えるより優先らしい。使い魔としてとても優秀でなにより。

「あらあら。大丈夫よ、エル」

「みゅー!」

エレナが大丈夫だと言えば、エルは嬉しそうに飛び回る。そして今度はエレナの膝の上に落ち着いた。

「ふふ、気まぐれさんね」

「可愛らしいね」

一応、嫌われていたら嫌なので確かめるようにエルを撫でる。エルは特に嫌がる様子もない。良かった。

「嫌われていないようで安心したよ」

「エルがクリス様を嫌うなんて、無いと思いますよ?すごく懐いていますから」

「そうだと嬉しいのだけれど。僕としてもエルとは上手くやっていきたいしね。なんせ一生の、長い付き合いなわけだし」

「そうですね。一生、一緒ですものね」

僕の何気ない言葉が嬉しかったようで、綺麗に微笑むエレナ。僕はそんな可愛いエレナのおでこにキスを落として席に戻る。その後は二人でまた紅茶を楽しみながらタルトタタンを美味しくいただいた。
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