妾の子として虐げられていた私が、爵位を継いだお兄様から溺愛されるだけ

下菊みこと

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皇太子殿下と寄り添いあいます

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「それにしても、最近寒いね。さすがに屋敷の中は暖かいけれど」

「温かいお茶を飲んでぬくぬくしましょう」

「それはいいね。そうしよう」

クリス様と、ナタリーの淹れてくれた美味しい紅茶を飲みます。

「温かいね」

「ぬくぬくですね。お口に合いますか?」

「もちろん。すっきりして素敵な味だね」

「よかったです」

「ちょっと失礼」

クリス様と対面で座っていましたが、クリス様が紅茶を持って私の隣に座ります。

「クリス様?」

「実は少し疲れていてね。エレナ成分が欲しい」

「大丈夫ですか?」

「問題はないよ。ただ、肩を貸して」

肩に心地の良い重み。クリス様か私の肩に身を預けています。

「重かったら…言って…」

そのままうとうとと、微睡みに沈むクリス様。寝かせておいて差し上げましょう。

「みゅー」

「エル、大きな声はダメよ」

「みゅ」

エルも私の膝に乗ります。ふふ、心地の良い重みで、私まで眠くなってしまいます。クリス様もエルも、私を信じ切って心も身体も預けてくれる。幸せです。

「お嬢様、ブランケットを皇太子殿下にお掛けしますね」

「ありがとうございます、ナタリー」

エルを撫でながら、クリス様にブランケットが掛けられるのを見守ります。クリス様は幸い起きる気配はなく、ぐっすりと眠っていらっしゃいます。

「本当はベッドに連れて行って差し上げたいですが、起こすのも可哀想ですしね」

「エル様が乗っていらっしゃいますから身動きも取れませんものね」

そっと起こさないように、クリス様の頭を撫でます。

「クリス様、お疲れ様です。偉い偉い、です」

「ん…」

すやすや眠るお顔を拝見したいですが、残念ながら肩に頭が乗っているので見えません。ちょっと残念。

「みゅ」

エルが自分も撫でろとばかりにすりすりしてくるので優しく背中を撫でてあげます。満足そうにゴロゴロと鳴くエル。とても可愛らしいです。

「みゅー」

「あら、私も気遣ってくれるの?ありがとう、エル」

エルが舌で私の手を舐めてくれます。毛繕いしてくれているつもりでしょうか?とても嬉しいです。

「穏やかな時間ですね、ナタリー」

「そうですね、お嬢様」

「将来私とクリス様が家族になって子宝にも恵まれたら、この時間がすごく賑やかになって、それはそれできっと楽しいんでしょうね」

「ええ」

「ナタリーもそこにいてくださいね」

ナタリーは一瞬目を丸くした後笑顔になります。

「ふふ、もちろんです」

「はやくクリス様と結婚したいなぁ」

「学園を卒業したらすぐですよ」

「学園も結局色々あってなかなか通えなかったですね。でも、ティナ様とジェシー様と仲良くなれたので得るものはありましたが。なによりも…クリス様と出会えて、こうして婚約者になれましたし」

幸せだなぁとしみじみ思います。お兄様が学園に入学することを勧めてくださって良かったです。

「ティナ様とジェシー様は魔法省の特殊科に行ってしまうので、私も皇太子妃になれば忙しいでしょうから会える機会が減ると思うとすごく残念ですけれど」

「お手紙でのやり取りもできますし、寂しくはありませんよ」

「そうだといいのですが…」

でも、たしかに私にはお兄様もクリス様も、ナタリーやエルもいてくれます。きっと大丈夫ですね。
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