妾の子として虐げられていた私が、爵位を継いだお兄様から溺愛されるだけ

下菊みこと

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美人なんだそうです

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「エレナの手は細っそりとしていて綺麗だね。肌もすべすべだし」

「そうでしょうか?」

ある日、急にクリス様からそう褒められました。自分ではあまりそうは思わないのですが…。

「でも、クリス様から褒められるのは嬉しいです。ありがとうございます」

「あはは。そう言ってもらえれば嬉しいよ。でも、本当にとても綺麗な手だよ」

そう言ってクリス様が私の手を取り、自分の手を重ねます。

「ほら、僕のゴツゴツした手と違ってすごく細っそりして綺麗に伸びた指だよ。それに、ほら、肌触りが僕より全然良いだろう?ああ、爪も綺麗に手入れされているね。とても素敵だ」

「く、クリス様。そんな褒められたら照れちゃいます」

「頬を染めるのも可愛らしいね」

「もう!クリス様!」

からかってくるクリス様にタジタジです。

「く、クリス様だって、素敵な手だと思います」

「本当に?」

「はい。豆もできているゴツゴツした手は、剣術のお稽古をたくさん頑張っている証でしょうし、クリス様の手だって充分過ぎるくらい肌触り良いですよ?私はナタリーのお手入れのお陰で肌を保てているわけですし…それに、爪だってクリス様もとっても綺麗です!」

「そうかな…でも、嬉しいよ。ありがとう、エレナ」

微笑むクリス様。

「それに、クリス様はとってもお顔立ちが綺麗です」

「まあ、顔はね」

「すごく素敵です。私で釣り合うか心配なくらいです」

「エレナはすごく綺麗だ。僕たち、割とかなりお似合いだと思うけど」

「そうだと良いのですが…お母様に似たので、決して悪くはないとは思いますが」

クリス様の両手に両頬を挟み込まれます。

「エレナ、君は間違いなく美人だよ。もう少し自覚しなさい。変な男に言い寄られたら嫌だからね」

「そう…なのでしょうか?でしたら使用人たちのお陰ですね。いつも存分に磨き上げてくれていますから」

「それもあるだろうけど、まず素材が良いんだよ。エレナ、君は自覚が無さすぎる。心配だ」

クリス様の真剣な表情に、自分を卑下するような言葉は何も言えなくなります。

「…美人、なんでしょうか」

「ものすごく。ねえ?」

「はい!お嬢様は紛うことなき美人です!お美しいです!」

クリス様がナタリーに同意を求めて、ナタリーにまで美人だと言われてしまいました。…美人なんですかね。

「…自覚できるように頑張ります?」

「それがいいね。悪い男は排除するつもりだけど、いつ誰が言い寄ってくるかなんてわからないもの」

「そんなものでしょうか?」

「そんなものだよ。君が美しいからね」

そんなものなのですね…。
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