君が僕に心をくれるなら僕は君に全てをあげよう

下菊みこと

文字の大きさ
24 / 88

家に招く

しおりを挟む
「あのね、兄様」

「なに?コトハ」

コトハがモジモジと言いにくそうにする。

「あのね、今度の日曜日にみんなが兄様に会ってみたいんだって」

「ああ、なるほど」

そういうことであれば、コトハのためにも引き受けよう。

「いいよ、連れておいで」

「いいの?」

「うん、何人くらい?」

「五人…」

なるほど、結構な人数だな。

とはいえ、問題はない。

「大丈夫だよ」

「本当に?」

「うん」

パッと笑顔になるコトハ。

受け入れてよかった。

そうと決まればジュースとお菓子を買っておかないとだ。










当日になって、五人の女の子が遊びにきた。

「こんにちは!」

「お邪魔します!」

「いらっしゃい」

玄関で出迎えれば、みんなきゃーきゃー言う。

「本物のナギさんだー!」

「すごーい!」

「ふふ、いつもコトハがお世話になってます。みんなありがとうね」

「はい!」

「これからもコトハをよろしくね」

にっこり微笑めば、またきゃーきゃーと騒ぐ。

リビングに案内して、そこで七人でジュースとお菓子でお茶会をする。

「ナギさんってかっこいいですよね!」

「ありがとう」

「恋人とかいるんですか!?」

「いないよ」

「えー!?うそー!?」

嘘なもんか。

コトハに出会うまでは孤独だったのだから。

「今まで交際経験は?」

「ん…昔、一人だけ」

僕が愛した村で、僕の生まれながらの許嫁だった女の子が一人いた。

もう、名前も顔も思い出せないけれど。

ただ、優しくて無垢な子供のような性格だったのは覚えている。

ずっと擦れることはなくて、純粋で…大切だった人。

「一人だけ!?」

「どんな人だったんですか!?」

「…優しくて、純粋無垢な人だったよ。同い年だったけど、どこか幼い印象だったかな」

「幼馴染とか?」

「そうだね、そんな感じかな」

同じ村で育った、仲のいい女の子。

幼馴染と言っていいだろう。

ただ、当時は許嫁としての意識の方が強かったけれど。

僕がこの子を守るんだ、なんて息巻いてたっけ。

結局あの子は、あの野蛮な奴らに殺されて守れなかったのだけど。

祟り神に転じたその時、仇こそ討ったが。

「今は連絡とか取ってないんですか?」

「んー、ちょっと色々あってね。そういうのはないかな。円満に別れたわけじゃないし」

「そうなんですか…」

「でも気にしないで!僕はあの子の話をするのは嫌いではないし」

まだ、何もかも忘れてしまったのに未だに好きだからね。

僕も、未練がましいなぁ。

「今でも好きなんですか?」

「うん、好きだよ」

にっこり笑って答える。

好きだよ、本当に。

大好きだった。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

駄犬の話

毒島醜女
恋愛
駄犬がいた。 不幸な場所から拾って愛情を与えたのに裏切った畜生が。 もう思い出すことはない二匹の事を、令嬢は語る。 ※かわいそうな過去を持った不幸な人間がみんな善人というわけじゃないし、何でも許されるわけじゃねえぞという話。

処理中です...