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私には関係ない
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「コトハ、コトハ」
「なに?兄様」
「コトハに一つ相談なのだけど」
「うん?」
「両親のこと、知りたい?」
兄様にそう問われて戸惑う。
正直な話…兄様との生活を送る中で、両親から愛されていなかったことを改めて思い知ったのだ。
両親におそらく捨てられたのだろうことも悟った。
兄様が愛を注いでくれた分、それに飢えていたのを知ったのだ。
だから今両親のことを知るのは…正直怖い。
「…」
「やめておこうか」
「うん」
「わかった。ごめんね」
「ううん」
そう思えるようになったのは、兄様が愛情をたくさんくれたから。
むしろ兄様には感謝している。
「じゃあ、いじめっ子たちのことも聞きたくない?」
「…」
正直聞きたくない。
今はお友達に囲まれていて、幸せだから。
マミちゃんという大親友も得て、幸せだから。
殴る蹴るの暴行を受けた時のことはもう忘れたい。
「聞きたくない…かな」
「わかった。ごめんね」
「うん」
「最後の確認になるけど」
最後の確認?
「村のことは聞きたい?」
「…ちょこっとだけ」
村はあの時燃えてしまって、心配だったから。
兄様はにっこり笑って言った。
「大丈夫、死人は出てないよ」
「よかった」
「ただ、若い人は街に出たりしてるらしいね」
「へえ」
まああんな火事があったら、それを機に上京する人は多くなるよね。
「子供がいる世帯はむしろ残ったみたいだけど、老人の方が圧倒的に多くなったみたいだ」
「そうなんだ…」
「復興もそのせいでなかなか進まないみたいだね」
「そっか…」
みんな大変そうだ。
今になって、私は村で村八分の状況に置かれていたのだとわかるようになったけど。
それでも、みんなが心配だ。
殴る蹴るの暴行を受けたいじめっ子たちは許せないけれど、そうじゃない人たちも被害を受けたのだし。
みんなが幸せになれたらいいな。
…ただ。
「でも、もう私には関係ない…かな」
口をついて出た言葉は予想外に冷たい響きで。
しまったと思って口を塞ぐけど、兄様はなんてことなさそうに笑う。
「そうだね、もうコトハには関係ないか」
「あの、兄様…」
「よかった、コトハがそう言えるようになって」
「え…」
兄様は何故か嬉しそう。
「ずっと引きずってるより、そうやって割り切れるようになった方が健全だよ」
「そうかな…」
「そうだよ」
そうやって兄様が私を甘やかしてくれるから。
私は生涯知るはずのなかった家族愛というものを知ることが出来たのだ。
「なに?兄様」
「コトハに一つ相談なのだけど」
「うん?」
「両親のこと、知りたい?」
兄様にそう問われて戸惑う。
正直な話…兄様との生活を送る中で、両親から愛されていなかったことを改めて思い知ったのだ。
両親におそらく捨てられたのだろうことも悟った。
兄様が愛を注いでくれた分、それに飢えていたのを知ったのだ。
だから今両親のことを知るのは…正直怖い。
「…」
「やめておこうか」
「うん」
「わかった。ごめんね」
「ううん」
そう思えるようになったのは、兄様が愛情をたくさんくれたから。
むしろ兄様には感謝している。
「じゃあ、いじめっ子たちのことも聞きたくない?」
「…」
正直聞きたくない。
今はお友達に囲まれていて、幸せだから。
マミちゃんという大親友も得て、幸せだから。
殴る蹴るの暴行を受けた時のことはもう忘れたい。
「聞きたくない…かな」
「わかった。ごめんね」
「うん」
「最後の確認になるけど」
最後の確認?
「村のことは聞きたい?」
「…ちょこっとだけ」
村はあの時燃えてしまって、心配だったから。
兄様はにっこり笑って言った。
「大丈夫、死人は出てないよ」
「よかった」
「ただ、若い人は街に出たりしてるらしいね」
「へえ」
まああんな火事があったら、それを機に上京する人は多くなるよね。
「子供がいる世帯はむしろ残ったみたいだけど、老人の方が圧倒的に多くなったみたいだ」
「そうなんだ…」
「復興もそのせいでなかなか進まないみたいだね」
「そっか…」
みんな大変そうだ。
今になって、私は村で村八分の状況に置かれていたのだとわかるようになったけど。
それでも、みんなが心配だ。
殴る蹴るの暴行を受けたいじめっ子たちは許せないけれど、そうじゃない人たちも被害を受けたのだし。
みんなが幸せになれたらいいな。
…ただ。
「でも、もう私には関係ない…かな」
口をついて出た言葉は予想外に冷たい響きで。
しまったと思って口を塞ぐけど、兄様はなんてことなさそうに笑う。
「そうだね、もうコトハには関係ないか」
「あの、兄様…」
「よかった、コトハがそう言えるようになって」
「え…」
兄様は何故か嬉しそう。
「ずっと引きずってるより、そうやって割り切れるようになった方が健全だよ」
「そうかな…」
「そうだよ」
そうやって兄様が私を甘やかしてくれるから。
私は生涯知るはずのなかった家族愛というものを知ることが出来たのだ。
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