色々な愛の形、色々な恋の形

下菊みこと

文字サイズ
小 中 大 特大
2 / 80

お爺ちゃん

私の実家は男爵家です。家族構成は両親と姉五人に弟一人。 姉弟仲はとても仲良しでした。ですが両親は跡取り息子である弟ばかりを可愛がり、姉達や私は良家に嫁がせるための道具としてしか見られていませんでした。一応その為の淑女教育は受けさせてくれました。それは救いでしたが、いずれは政略結婚させられる身。それに何の意味があるのか、と思う時もありました。そして、姉達は十七歳になると爵位の高いお爺さんの後妻にされたり、裕福な商家のおじさんの後妻にされたりしました。そして、私も十七歳になった時、裕福で爵位の高いお爺さんの後妻になりました。

私からは持参金を。夫になるお爺さん、トーマス様からは実家に結納金、私に寡婦財産を差し出しました。そして結婚式を挙げ、夫婦になった私達。私は愛のない結婚をして、これからどうなるのだろうと不安になっていました。でも、トーマス様はにこりと優しく微笑んで言いました。

「私には跡取りの子供もいるし、無体なことをするつもりはないよ」

「それよりも、こんなお爺さんの後妻にしてしまってすまないね」

「大丈夫。息子達も君の立場に理解があるからね」

「勉強だって好きなだけしていいんだよ。亡き妻の形見ではあるけれど、色々な本もたくさんあるんだ」

「ほら、おいで。書庫を見せてあげよう」

そこには、私にとっては宝の山。たくさんの本がありました。私は思わず、トーマス様に許可を得て本を読み耽りました。それはそれは充実した時間でした。気が付いたらお夕食の時間になっていました。そしてトーマス様は私を書庫まで迎えに来てくれました。

「気に入ってくれたようでよかった」

私はすぐにトーマス様にお礼を言いました。そうするとトーマス様は、これからここは君の城だよ、と言ってくれました。その日から私はまるで孫のようにトーマス様に可愛がっていただきました。

その後トーマス様の息子さん達やお孫さん達にもお会いしました。結婚式の時にもお会いしましたが、その時にはあまり言葉を交わさず、挨拶程度でした。嫌われているかな、疎まれているかな、と思っていましたが、全然そんなことはなく、快く受け入れてくれました。

「いやー、義母上も父上の奥さんとか大変だねー」

「おばあちゃん、なにかあったらすぐマリーにそうだんしてね」

「おじいちゃんがおばあちゃんにいじわるしたら、マーカスがやっつけてあげるー」

「はっはっはっ、これは手厳しいなぁ」

私はそこでようやく安心してぽろぽろと泣いてしまいました。そんな私を新しい家族はみんな温かく受け入れてくれました。

夜の営みなどもなく、孫のように可愛がっていただいて、数年。もはやトーマス様…お爺ちゃんのいない生活など考えられなくなっていたある日。それは唐突に起こりました。お爺ちゃんが突然の心臓発作で亡くなってしまいました。

跡継ぎであるマークス様が諸々の手続きをしてくださっている間も、私はお爺ちゃんの柩に縋り付いて泣いていました。心無い方々はああやって取り入ったのか、などと酷いことを言っていましたが、それよりもお爺ちゃんが亡くなったことがショックで全然気になりませんでした。それに、マークス様やマリーちゃんやマーカスちゃんが私の代わりに怒ってくれたので、それでもう十分でした。

その後数ヶ月経ち、マークス様とお話ししました。

「あのさ、お節介かもしれないけど、義母上の再婚相手を探してきたんだ。年齢も近いし、悪い話じゃないと思うんだけど、どうかな?」

「マークス様…ありがとうございます」

「とっても良い人だよ」

「はい」

「とりあえず会ってみる?」

「わかりました」

「じゃあ今度呼んでくるよ」

その後、再婚相手を紹介されて驚きました。幼馴染のレオンだったのです。レオンは幼い頃からずっと一緒に育ち、私の初恋の人でもありました。まだ物事をよく理解していなかった時に、結婚の約束をしたこともありました。

「レオン!」

「迎えにくるのが遅くなってごめんな。あの時の約束を叶えに来た」

「レオン…私…!」

「俺の花嫁になってくれますか?マイレディ」

「レオン…!」

私は思わずレオンに抱きつきました。マークス様もマリーちゃんやマーカスちゃんも祝福してくれました。

そして時は流れて早数年。私とレオンは夫婦として幸せに暮らしています。子宝にも恵まれ、可愛い男の子が一人と、可愛い女の子が二人います。

「ねえ、レオン」

「ん?」

「幸せね」

「そうだな。お前を大切にしてくれたトーマス様のおかげだよ」

「お爺ちゃんには頭が上がらないわ」

「本当にな」

「パパー!シエルがいじめるー!」

「ちがうよー!ミアとアイラがいじめるんだよー!」

「パパー!ママー!」

お爺ちゃん。お爺ちゃんのおかげで、私は今すごく幸せです。これからもお爺ちゃんとの思い出を胸に、幸せに生きて行こうと思います。どうかまた会える日まで、私達を見守っていてね。
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢、二度目の人生は「愛」が痛い。〜冷酷王子の執着から逃れるために国外追放(スローライフ)を目指します〜 表紙

悪役令嬢、二度目の人生は「愛」が痛い。〜冷酷王子の執着から逃れるために国外追放(スローライフ)を目指します〜

「今度こそ、君を離さない。例えその足を折ってでも——」 日本の現代女子だった主人公は、トラックに轢かれた拍子に、乙女ゲーム『聖女の祈りと、銀の誓い』の世界の悪役令嬢リナリアへと転生してしまう。 リナリアを待ち受ける未来は、冷酷な婚約者・アルフレッド王子の手による無慈悲な処刑エンド。 「死ぬのはもう御免! 今世こそは断罪を回避して、平和な隣国でスローライフを送ってみせる!」 そう決意したリナリアだったが、転生直後の彼女を待っていたのは、冷たい罵倒ではなく、窒息しそうなほどの熱い抱擁だった。 前世では「氷の王子」と恐れられ、リナリアをゴミのように扱っていたはずのアルフレッド。しかし、なぜか今世の彼は、リナリアが指一本動かすだけで過呼吸になりそうなほど彼女に執着し、甘すぎる(そして重すぎる)愛を囁き続ける**「ヤンデレ王子」**へと変貌を遂げていた。 実は、アルフレッドもまた**「死に戻り」**の当事者だったのだ。 前世でリナリアを処刑せざるを得なかった絶望から、彼は狂気にも似た誓いを立てていた。 **「二度目の人生では、世界を敵に回しても彼女を檻の中に守り抜く」**と。 逃げたい転生令嬢 vs 逃がしたくない死に戻り王子。 一歩間違えれば即軟禁!? 命がけの「すれ違い溺愛」ラブストーリー。
恋愛 連載中 長編
文字数 738,366
悪役令嬢の生産ライフ 表紙

悪役令嬢の生産ライフ

コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。 女神『はい、あなた、転生ね』 雪『へっ?』 これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。 雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』 無事に完結しました! 続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。 よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m
恋愛 完結 長編
文字数 514,234
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎ 表紙

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
恋愛 完結 長編 R15
文字数 576,733
悪役令嬢の心変わり 表紙

悪役令嬢の心変わり

不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
恋愛 連載中 長編
文字数 180,396
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました 表紙

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。
恋愛 完結 長編
文字数 30,331
【完結】もしかしてヒロインなのでしょうか?断固拒否ということで 表紙

【完結】もしかしてヒロインなのでしょうか?断固拒否ということで

オリエンス王国では十五歳になったら、教会で魔力の有無と属性を調べることが義務付けられている。 リーリエが検査石板に手を当てた瞬間、虹色に輝き出した。それを見た瞬間、気を失ったリーリエは不思議な夢を見ていた。 前世と思われる数々の記憶。 ん?わたしのピンクブロンドの髪、ざまぁされるヒロインの定番では? いやいやいや…断固拒否で!
恋愛 完結 長編
文字数 64,892
乙女ゲーのサポートキャラに転生した私は、死亡ルートの推し教師を救いたい ~命がけで運命を変えたら、推しからの執着が止まりません~ 表紙

乙女ゲーのサポートキャラに転生した私は、死亡ルートの推し教師を救いたい ~命がけで運命を変えたら、推しからの執着が止まりません~

その日、私は思い出した。 自分が乙女ゲームのサポート保健医“アニエス”であることを。 そして――最推しの教師テオドールが、物語の途中で命を落とす運命にあることを。 推しを救いたい。 ヒロインの恋も応援したい。 全員生存のハッピーエンドを目指し、前世のゲーム知識を頼りに行動を始めるアニエス。 しかし、事態はアニエスの予想を裏切った。 本来とは異なる属性を持つヒロイン。 予定より早く動き出す攻略対象。 そして何より――。 「あなたには何手先まで、見えているんです?」 未来を知っているかのようなアニエスの言動に、推し教師テオドールが強い関心を抱き始めて――? 彼を救うため運命に抗うアニエスと、彼女の秘密を暴こうとするテオドール。 アニエスが運命を変えようと動くたびに、テオドールは彼女から目が離せなくなっていく。 推しを救いたい主人公と、彼女の正体を追う教師。 二人の思惑が交差する、乙女ゲーム転生ファンタジー。
恋愛 完結 長編
文字数 135,399
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね! 表紙

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。
恋愛 完結 長編 R15
文字数 557,662