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一番の友達
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僕はたっくん。
ある日川に河童が出るという噂を耳にして、きゅうりを持って川に遊びに行った。
「…河童だ」
「くえー」
本当にいた。
なんか当たり前みたいにいた。
僕はきゅうりを河童に差し出した。
「ねえ、一緒に食べよう!」
「くえ」
「僕はたっくん!きみは?」
「くえー」
「くえだね!よろしく、くーくん!」
その日から、僕はくーくんと仲良しになった。
「くーくん!今日のきゅうりだよ!」
「くえー!」
人間の友達のいない僕は、しかしくーくんとはすごく仲良しになった。
くーくんは優しい。
僕の話を聞いてくれる。
「それでね、くーくん。明日は不良たちが川に遊びにくるらしいから、明日は来れないや。ごめんね」
「くえ!」
「ふふ。くーくん、不良たちに見つかったら何されるかわからないから隠れてるんだよ」
「くえ!」
くーくんは言うことを聞いて、隠れててくれるかな。
「母さん、大慌てでどうしたの?」
「実は川ですごいことになってて…」
「…!」
「え、たっくん!?」
僕はお母さんの言葉で、家を飛び出した。
くーくんが不良たちに見つかったのだと思ったのだ。
だが事態はそれどころではなかった。
「りっくん!今助けるからな!」
川で少年が溺れていたのだ。
不良たちの連れてきた弟分らしかった。
間違えて深いところに入ってしまったらしい。
「でも、助けるってどうやって…」
「大人たちに助けは求めたけど…」
まごまごしている不良たち。
僕は、彼らのことは嫌いだ。
学校ではいじめてくるし、それでなくてもうるさいし、というかなんかもう理由なんてどうでもいいくらい大嫌い。
でも、放って置けなかった。
「あのさ」
「あ!お前!な、なんだよ!」
「僕のお友達なら助けられるかも。どうする?」
「え…」
不良たちはいつもと打って変わって、僕に頭を下げる。
「頼む!」
「りっくんを助けてくれ!」
「わかった…くーくん!お願い!あの子を助けてあげて!」
「くえー!」
近くにいたらしいくーくんにその声は届き、くーくんは溺れた子供をあっという間にここまで連れてきてくれた。
「はぁっ…はぁっ…」
「くえー!」
「くーくん!ありがとう!」
「くえ!」
「…か、河童?いや、それよりりっくん、大丈夫か!?」
不良たちに心配された少年は微笑んだ。
「大丈夫!河童さんのおかげだよ!」
「くえ!」
「すげぇ…ありがとうな、河童。お前も」
「にいちゃん、お前もって僕を助けてくれた人に失礼だよ」
「…たっくん、ありがとうな」
こうしてくーくんはひとりの少年を救い、子供達の間では一躍有名になった。
子供達のヒーローとなったくーくんだが、一番の仲良しは変わらず僕!
そのおかげか僕にも人間のお友達が徐々に出来始め、夏の日の思い出が積み重なっていった。
「くえー」
「くーくん!そんなに大荷物持ってどうしたの?」
「くえ」
「まさか、お引越し?」
こくりと頷くくーくん。
僕たち子供は泣いて引き止める。
「行かないでよくーくん!」
「寂しいよー!」
「くえ」
くーくんは一人一人子供達を抱きしめる。
そして最後に、僕を一際強く抱きしめた。
「くえ」
「…いつか、また会える?」
「くえ!」
僕はその日、初めて友達との別れを経験した。
僕は今でも時折川に遊びに来る。
再会を願って。
「くえー!」
あの元気な声を、いつかまた聞けるかな。
ある日川に河童が出るという噂を耳にして、きゅうりを持って川に遊びに行った。
「…河童だ」
「くえー」
本当にいた。
なんか当たり前みたいにいた。
僕はきゅうりを河童に差し出した。
「ねえ、一緒に食べよう!」
「くえ」
「僕はたっくん!きみは?」
「くえー」
「くえだね!よろしく、くーくん!」
その日から、僕はくーくんと仲良しになった。
「くーくん!今日のきゅうりだよ!」
「くえー!」
人間の友達のいない僕は、しかしくーくんとはすごく仲良しになった。
くーくんは優しい。
僕の話を聞いてくれる。
「それでね、くーくん。明日は不良たちが川に遊びにくるらしいから、明日は来れないや。ごめんね」
「くえ!」
「ふふ。くーくん、不良たちに見つかったら何されるかわからないから隠れてるんだよ」
「くえ!」
くーくんは言うことを聞いて、隠れててくれるかな。
「母さん、大慌てでどうしたの?」
「実は川ですごいことになってて…」
「…!」
「え、たっくん!?」
僕はお母さんの言葉で、家を飛び出した。
くーくんが不良たちに見つかったのだと思ったのだ。
だが事態はそれどころではなかった。
「りっくん!今助けるからな!」
川で少年が溺れていたのだ。
不良たちの連れてきた弟分らしかった。
間違えて深いところに入ってしまったらしい。
「でも、助けるってどうやって…」
「大人たちに助けは求めたけど…」
まごまごしている不良たち。
僕は、彼らのことは嫌いだ。
学校ではいじめてくるし、それでなくてもうるさいし、というかなんかもう理由なんてどうでもいいくらい大嫌い。
でも、放って置けなかった。
「あのさ」
「あ!お前!な、なんだよ!」
「僕のお友達なら助けられるかも。どうする?」
「え…」
不良たちはいつもと打って変わって、僕に頭を下げる。
「頼む!」
「りっくんを助けてくれ!」
「わかった…くーくん!お願い!あの子を助けてあげて!」
「くえー!」
近くにいたらしいくーくんにその声は届き、くーくんは溺れた子供をあっという間にここまで連れてきてくれた。
「はぁっ…はぁっ…」
「くえー!」
「くーくん!ありがとう!」
「くえ!」
「…か、河童?いや、それよりりっくん、大丈夫か!?」
不良たちに心配された少年は微笑んだ。
「大丈夫!河童さんのおかげだよ!」
「くえ!」
「すげぇ…ありがとうな、河童。お前も」
「にいちゃん、お前もって僕を助けてくれた人に失礼だよ」
「…たっくん、ありがとうな」
こうしてくーくんはひとりの少年を救い、子供達の間では一躍有名になった。
子供達のヒーローとなったくーくんだが、一番の仲良しは変わらず僕!
そのおかげか僕にも人間のお友達が徐々に出来始め、夏の日の思い出が積み重なっていった。
「くえー」
「くーくん!そんなに大荷物持ってどうしたの?」
「くえ」
「まさか、お引越し?」
こくりと頷くくーくん。
僕たち子供は泣いて引き止める。
「行かないでよくーくん!」
「寂しいよー!」
「くえ」
くーくんは一人一人子供達を抱きしめる。
そして最後に、僕を一際強く抱きしめた。
「くえ」
「…いつか、また会える?」
「くえ!」
僕はその日、初めて友達との別れを経験した。
僕は今でも時折川に遊びに来る。
再会を願って。
「くえー!」
あの元気な声を、いつかまた聞けるかな。
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