短いお話、SSの詰め合わせ

下菊みこと

文字の大きさ
2 / 17

彼に今度こそ捕まった

しおりを挟む
「で?僕から逃げて自由になった気分はどうだった?」

彼にナイフを突きつけられる。

「君が選べるのは二つに一つ。もう一度僕の元に戻るか、この場で死ぬか」

「私は…」

「僕を選んで。君だってまだ死にたくないだろう?」

そうして私は、また彼の元へ戻ることになった。









彼とはただの一般的な近所の友人として仲良くしていた。ある日偶然彼の仕事現場に鉢合わせてしまった。そこで初めて、彼が暗殺者だと知った。

彼が対象者を殺した後、隠れていた私を捕まえた。そして、なぜか殺しはせず私を家に連れ帰った。

それからは軟禁されて、でも彼はとても優しいし怖くはなかった。

「でも、やっぱり自由が恋しい」

そう思って、隙を見て逃げ出した。今まで私が大人しくしていたから、油断していたのだろう。逃げるのは簡単だった。

結局は、こうしてまた捕まったけど。

「今度は、軟禁じゃなくて監禁になっちゃったけど」

あのまま大人しく捕まっていればよかったのか。けれどそれはそれでと思うのだけど。

「どうすればいいんだろう」

ぶっちゃけ私は、家族はいないし友達も少ない。外に出られなくても誰にも心配や迷惑はかからないと思うけど。

「ずっとこのままなのもなぁ」

また、彼と普通のお友達になれたらいいのに。











ずっと彼女が好きだった。天涯孤独の身でありながら、誰にでも優しく、しかしそれ故利用されやすい彼女。本当に友達と呼べる相手は少ないだろう彼女だけど、僕のことは友達だと言ってくれた。

だから、彼女に仕事現場を見られたのは本当にショックだった。

仕事現場を見られた場合、相手を殺すのが殺し屋の掟。それでも、僕には彼女を殺すことはできなかった。

「…好きだ」

その一言を本人に言えない。ただ、軟禁した。それでも彼女は、僕に憎しみを向けてこない。

だから油断していた。

彼女はある日逃げ出した。

「まあ、簡単に見つかったけど」

逃げる先もない彼女は、結局元の家に戻っていた。そんな彼女を連れ戻して、今度はちゃんと監禁する。

「君の嫌がることや怖いことはしたくない。だから、もう逃げないで」

そう言った時、恐怖や憎しみではなく心配そうな表情で僕を見た彼女。どこまでも優しい彼女を、僕はもう手放せない。

ああ、神さま。いるのならどうか、僕から彼女を解放してあげてください。彼女には陽の光が似合う。けれど僕は彼女を解放できない。

そんな身勝手な願いは、もちろん誰にも届かない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

おしどり夫婦の茶番

Rj
恋愛
夫がまた口紅をつけて帰ってきた。お互い初恋の相手でおしどり夫婦として知られるナタリアとブライアン。 おしどり夫婦にも人にはいえない事情がある。 一話完結。『一番でなくとも』に登場したナタリアの話です。未読でも問題なく読んでいただけます。

義兄のために私ができること

しゃーりん
恋愛
姉が亡くなった。出産時の失血が原因だった。 しかも、子供は義兄の子ではないと罪の告白をして。 入り婿である義兄はどこまで知っている? 姉の子を跡継ぎにすべきか、自分が跡継ぎになるべきか、義兄を解放すべきか。 伯爵家のために、義兄のために最善の道を考え悩む令嬢のお話です。

欲しいものが手に入らないお話

奏穏朔良
恋愛
いつだって私が欲しいと望むものは手に入らなかった。

【完結】本当に愛していました。さようなら

梅干しおにぎり
恋愛
本当に愛していた彼の隣には、彼女がいました。 2話完結です。よろしくお願いします。

「ばっかじゃないの」とつぶやいた

吉田ルネ
恋愛
少々貞操観念のバグったイケメン夫がやらかした

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

処理中です...