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初恋の人との再会は甘く幸せなものとなった
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王太子殿下から、婚約破棄を告げられた。
「お前のようなどこの馬の骨ともわからない女と結婚など出来るか!」
私は身寄りのない孤児。それを戦場で、公爵であるお父様に拾われた娘。
ー…そういうことになっている。
だから、彼の反応はある意味当たり前なのだ。
「公爵家も、お前が居なくなれば清々するだろうな!」
「そうかもしれません」
「私は聖女候補であるミレイユと結婚する。お前は貴族籍を剥奪させてもらう!そして国外追放処分だ!」
「そうですか」
ああ、結局こうなるのか。可哀想に。
「お、王太子殿下!大変です!」
「む?どうした?」
「魔獣の群れが今、我が国に向かって怒り狂うような猛々しさで迫っています!」
「なに!?す、すぐに父上と作戦会議だ!…ああ、お前はさっさと帰れ!邪魔だ!」
「はい、失礼致します」
そして私は、公爵家の屋敷に戻った。
公爵家では、既にお父様が王太子殿下の婚約破棄宣言を把握していた。
「よく頑張ったね。これまで人間のフリをするのは大変だっただろう」
「はい、お父様。でも、もうすぐパパが迎えに来てくれますから」
「人間のことを学ばせたいと、魔王陛下から娘である君を託されたのに。こんなことになって申し訳ない」
「いえ。この十八年、人の子として生きてきて人間の良いところもたくさん見てきました。すごく勉強になりました。これからは魔王国で、たくさんの人間の国との穏やかな協力関係の一助となれるよう頑張りますわ」
私がそう言えば、お父様は私を抱きしめる。
「今までありがとう。亡くした娘にそっくりな君との生活は、実に温かかった」
「私も、パパが大好きですがお父様も大好きですわ!」
そして、迎えがきた。
「お待たせ、可愛い可愛い我が娘よ。パパが迎えにきたよ」
「パパ!」
パパに抱きつけば軽々と抱えられる。
「公爵、今までご苦労だった。娘を傷つけた王族と、それを守ろうとした騎士たちの被害は甚大だがそれ以外には手は出していない。だが、トップである王族が全員居なくなった今こそ、国を乗っ取る好機だぞ」
「では、私もそちらの準備を進めます」
「乗っとったら、うちの国と仲良くして欲しい」
「はい、乗っ取ることができた暁には、ぜひ」
こうしてお父様とはお別れして、私は魔王国に帰った。そして、人間の国での様々な出来事を数日かけてパパやママ、弟妹たちに事細かく説明した。
「お姉様、人間の国のお話は面白いね!」
「そうだね」
「これから先は、長く人間たちと仲良くしていきましょうね」
「はーい!」
こうして私は魔王国に戻り、魔王国で生活するようになった。人間の国と違って瘴気が濃いけれど、私にはこの空気がとても落ち着く。
「ふふ。さて、私も新しい恋を探さなきゃ」
元は王太子殿下の寿命が尽きるまで、変装用の魔法でおばあちゃんの姿になっても寄り添うつもりでいたけれど。こんなにも早く新しい恋のチャンスが来るなんて。
「恋してみたい?」
「もちろんよ!魔王の娘である私を射止めるような素敵な人に出会えるならね」
「ふふ、お姉様頑張れー!」
弟妹達に色々と応援されつつ、私の魔族としての人生が始まった。
「…まあ。私に人間の国の王子様が求婚?」
「ああ。お前が人間のフリをしている時に出会った男らしい。人間の国で突如行方不明になった…と思われていたお前のことをずっと探していたそうだ。お前の正体を知ってもお前を諦められないらしい。人間の国と仲良くしたいパパとしては、願ったり叶ったりなんだが…どうする?」
「私としてもありがたいお話ですけれど、とりあえず釣書はありませんの?」
「あるぞ。見るか?でもパパとしてはお前がお嫁さんに行ってしまうと思うとちょっと寂しいよ」
「見るに決まっていますわ、パパ。貸してくださいまし。今までだって離れて暮らしてきたのですもの。これからだって、お嫁さんに行ったって私達はずっと家族ですわ」
私の言葉に感動するパパから釣書を奪い取って、中身を見る。
「…まあ!なんてこと!」
なんと私に求婚してくれたのは、私の初恋の人だとわかった。
「どうした?」
「この方、私が密かにずっと想いを寄せていた方ですわ!魔族の私では結婚は難しいだろうと、諦めていましたのに!」
「それは本当か!?急いで了承の返事を出そう!娘の恋が叶い、人間の国との交流も叶う!やる気が出てきたぞー!」
そして私は、新たな婚約を結んだ。
「君が魔族だなんて、びっくりだけど…君の美しさは変わらないね。君はやはり誰よりも綺麗だ。また会えて本当に良かった」
「わ、私も…貴方と再会出来て嬉しいですわ」
照れて髪を弄る私に、彼は微笑む。
「そんな清純なところも可愛らしいよ」
「はうっ」
「ずっと君に恋してた。これからは愛していいかな?」
「も、もちろんですわ。私も…お慕いしておりますわ」
もごもごとどもってしまう私。けれど彼は呆れた表情など一切見せず、ただ微笑んで嬉しそうにしてくれた。
「魔王陛下も我が国や周辺国との平和なやり取りを本気で目指してくださっているみたいだし、この婚約がその一助となれば嬉しいね」
「ええ、そうですわね」
「魔王陛下や魔王国は、敵に回すと恐ろしいが味方になってくださるならこれ以上ないほど心強い」
「うふふ。それはそうでしょうね」
私は思わず笑う。魔王国を自国の後ろ盾にするなんて、そうそう無い発想。さすがは彼だ。
「国内では僕らの婚約は賛否両論があるけれど、僕は個人的にも第五王子という立場で考えてもやっぱりいい話だと思うんだ」
「ええ。魔王国は私の嫁ぐ貴方の国に、大きな支援をするでしょうね。例えば、我が魔王国でしかとれない貴重な鉱石の提供ですとか」
「うん。だから、今は君を否定する声があってもいずれそれは覆されるだろう。それまでは色々言われるかもしれないけれど、君のことは僕が守るから。幸せなお嫁さんにすると約束する。僕と結婚してください」
「ええ、もちろんですわ」
初恋はこうして実り、私達は晴れて結ばれることができた。今はまさに幸せの絶頂。この幸せを手放さないように、私も第五王子妃として精進していくつもりだ。
「お前のようなどこの馬の骨ともわからない女と結婚など出来るか!」
私は身寄りのない孤児。それを戦場で、公爵であるお父様に拾われた娘。
ー…そういうことになっている。
だから、彼の反応はある意味当たり前なのだ。
「公爵家も、お前が居なくなれば清々するだろうな!」
「そうかもしれません」
「私は聖女候補であるミレイユと結婚する。お前は貴族籍を剥奪させてもらう!そして国外追放処分だ!」
「そうですか」
ああ、結局こうなるのか。可哀想に。
「お、王太子殿下!大変です!」
「む?どうした?」
「魔獣の群れが今、我が国に向かって怒り狂うような猛々しさで迫っています!」
「なに!?す、すぐに父上と作戦会議だ!…ああ、お前はさっさと帰れ!邪魔だ!」
「はい、失礼致します」
そして私は、公爵家の屋敷に戻った。
公爵家では、既にお父様が王太子殿下の婚約破棄宣言を把握していた。
「よく頑張ったね。これまで人間のフリをするのは大変だっただろう」
「はい、お父様。でも、もうすぐパパが迎えに来てくれますから」
「人間のことを学ばせたいと、魔王陛下から娘である君を託されたのに。こんなことになって申し訳ない」
「いえ。この十八年、人の子として生きてきて人間の良いところもたくさん見てきました。すごく勉強になりました。これからは魔王国で、たくさんの人間の国との穏やかな協力関係の一助となれるよう頑張りますわ」
私がそう言えば、お父様は私を抱きしめる。
「今までありがとう。亡くした娘にそっくりな君との生活は、実に温かかった」
「私も、パパが大好きですがお父様も大好きですわ!」
そして、迎えがきた。
「お待たせ、可愛い可愛い我が娘よ。パパが迎えにきたよ」
「パパ!」
パパに抱きつけば軽々と抱えられる。
「公爵、今までご苦労だった。娘を傷つけた王族と、それを守ろうとした騎士たちの被害は甚大だがそれ以外には手は出していない。だが、トップである王族が全員居なくなった今こそ、国を乗っ取る好機だぞ」
「では、私もそちらの準備を進めます」
「乗っとったら、うちの国と仲良くして欲しい」
「はい、乗っ取ることができた暁には、ぜひ」
こうしてお父様とはお別れして、私は魔王国に帰った。そして、人間の国での様々な出来事を数日かけてパパやママ、弟妹たちに事細かく説明した。
「お姉様、人間の国のお話は面白いね!」
「そうだね」
「これから先は、長く人間たちと仲良くしていきましょうね」
「はーい!」
こうして私は魔王国に戻り、魔王国で生活するようになった。人間の国と違って瘴気が濃いけれど、私にはこの空気がとても落ち着く。
「ふふ。さて、私も新しい恋を探さなきゃ」
元は王太子殿下の寿命が尽きるまで、変装用の魔法でおばあちゃんの姿になっても寄り添うつもりでいたけれど。こんなにも早く新しい恋のチャンスが来るなんて。
「恋してみたい?」
「もちろんよ!魔王の娘である私を射止めるような素敵な人に出会えるならね」
「ふふ、お姉様頑張れー!」
弟妹達に色々と応援されつつ、私の魔族としての人生が始まった。
「…まあ。私に人間の国の王子様が求婚?」
「ああ。お前が人間のフリをしている時に出会った男らしい。人間の国で突如行方不明になった…と思われていたお前のことをずっと探していたそうだ。お前の正体を知ってもお前を諦められないらしい。人間の国と仲良くしたいパパとしては、願ったり叶ったりなんだが…どうする?」
「私としてもありがたいお話ですけれど、とりあえず釣書はありませんの?」
「あるぞ。見るか?でもパパとしてはお前がお嫁さんに行ってしまうと思うとちょっと寂しいよ」
「見るに決まっていますわ、パパ。貸してくださいまし。今までだって離れて暮らしてきたのですもの。これからだって、お嫁さんに行ったって私達はずっと家族ですわ」
私の言葉に感動するパパから釣書を奪い取って、中身を見る。
「…まあ!なんてこと!」
なんと私に求婚してくれたのは、私の初恋の人だとわかった。
「どうした?」
「この方、私が密かにずっと想いを寄せていた方ですわ!魔族の私では結婚は難しいだろうと、諦めていましたのに!」
「それは本当か!?急いで了承の返事を出そう!娘の恋が叶い、人間の国との交流も叶う!やる気が出てきたぞー!」
そして私は、新たな婚約を結んだ。
「君が魔族だなんて、びっくりだけど…君の美しさは変わらないね。君はやはり誰よりも綺麗だ。また会えて本当に良かった」
「わ、私も…貴方と再会出来て嬉しいですわ」
照れて髪を弄る私に、彼は微笑む。
「そんな清純なところも可愛らしいよ」
「はうっ」
「ずっと君に恋してた。これからは愛していいかな?」
「も、もちろんですわ。私も…お慕いしておりますわ」
もごもごとどもってしまう私。けれど彼は呆れた表情など一切見せず、ただ微笑んで嬉しそうにしてくれた。
「魔王陛下も我が国や周辺国との平和なやり取りを本気で目指してくださっているみたいだし、この婚約がその一助となれば嬉しいね」
「ええ、そうですわね」
「魔王陛下や魔王国は、敵に回すと恐ろしいが味方になってくださるならこれ以上ないほど心強い」
「うふふ。それはそうでしょうね」
私は思わず笑う。魔王国を自国の後ろ盾にするなんて、そうそう無い発想。さすがは彼だ。
「国内では僕らの婚約は賛否両論があるけれど、僕は個人的にも第五王子という立場で考えてもやっぱりいい話だと思うんだ」
「ええ。魔王国は私の嫁ぐ貴方の国に、大きな支援をするでしょうね。例えば、我が魔王国でしかとれない貴重な鉱石の提供ですとか」
「うん。だから、今は君を否定する声があってもいずれそれは覆されるだろう。それまでは色々言われるかもしれないけれど、君のことは僕が守るから。幸せなお嫁さんにすると約束する。僕と結婚してください」
「ええ、もちろんですわ」
初恋はこうして実り、私達は晴れて結ばれることができた。今はまさに幸せの絶頂。この幸せを手放さないように、私も第五王子妃として精進していくつもりだ。
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ほのぼので、親バカなパパ魔王様が可愛い︎💕«٩(*´ ꒳ `*)۶»💕姫さんは、初恋の人に貰われて幸せだね〜🎵(*´・д`)-д-)))ウンウン
感想ありがとうございます。ほのぼのしていただけましたら幸いです!