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余った魔法薬を売り捌く

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どんどん魔法薬を作るので、配っても配っても余ります。ということで、冒険者ギルドに持っていって売ることにしました。ルナさんに任せました。

「お嬢様、かなりの高値で売れましたよ!」

「それは良かった」

さて、この売り上げですが、どうするかというと。

「ルナさん、この売り上げなんですが、半分を薬草の購入にあててくれますか?」

「はい、もちろんです!残りの半分は、ドレスや装飾品を買いますか?」

「いえ。…持って行きたいところがあるんです。連れて行ってくれますか?」

「お嬢様自らですか?私は構いませんけど…どこに行きます?」

「この間の、馬車の件」

「!」

「神父様の所に行きます」

「で、でも…あれはあの子供が急に飛び出してきたから…お嬢様は何も悪くありません!」

「…はい」

そう、飛び出した私が悪い。

「でも、どうしても行きたいんです。会って、謝りたい」

勝手に死んでしまったことを。

「お嬢様…わかりました…お嬢様がそうなさりたいなら…」

ー…

「着きましたよ、お嬢様」

「…懐かしい」

「え?」

「なんでもありませんよ。行きましょう」

私は教会に併設された孤児院の門をくぐる。神父様とシスターは私達…というかルナさんを見て険しい顔をしたものの、客間に通してくれた。

「…お久しぶりですね、私達の可愛い子を轢き殺しておいて今更なんの御用です?」

「ちょっと!せっかくお嬢様が貴方達に謝りたいと直接赴いたのになによその言い草!」

「謝る?今更ですか?」

いつも優しかった神父様が、珍しく怒りを露わにしている。それだけ悲しませてしまったんだよね。

「神父様…シスターも…本当にごめんなさい」

私はソファーから立ち上がって、深々とお詫びをする。

「お嬢様!そこまですることないです!あの子供が勝手に馬車に突っ込んできたのに!」

「あの子が何の理由もなくそんなことするはずない!」

「本当のことよ!」

「嘘です!」

「…猫が」

「…?」

「猫が轢かれそうになったのを、咄嗟に庇ったそうです」

「お嬢様?どこでそれを…お嬢様が傷つくから、言わないようにと口止めしたはずですのに…」

「…!…あの子は…そういう、ことでしたか。失礼な態度をとってすみませんでした」

神父様とシスターが深々と頭を下げて謝ってくれる。

「私こそ…本当にごめんなさい。神父様やシスター、皆を悲しませてしまって」

「…」

「これ、受け取ってくれませんか。お金で解決することじゃないのはわかってます。けど、孤児院の経営に少しでも役立てて欲しいんです」

「…ありがとうございます、受け取ります。…あの子の最期を、教えてくださってありがとう…本当に、ありがとうございました。これであの子たちにも、あの子の最期を伝えられる。どれだけ優しい子なのか、教えてあげられる」

「一つだけ聞いてもいいですか?」

「なんでしょうか?」

私は神父様に近寄って耳元で囁く。

「ライトはテオと仲直りできましたか?…照れ隠しに暴言を吐いていて、心配だったんです」

「え…」

「神父様、教えてください」

にっこりと笑う。神父様は泣き出した。

「ああ…神よ、神よ!ありがとうございます、主に感謝します!」

いきなり泣き出した神父様に困惑するシスターとルナさん。神父様は私を抱きしめた。

「お嬢様!?お嬢様になにを…!」

「神父様、どうなされたんですか!?」

「ルナさん、いいの。…神父様」

「…すみません、取り乱しました」

神父様は優しく身体を離す。ルナさんも矛を収めてくれた。

「テオとライトは相変わらず仲良しですよ。ただ、最近は…元気はありませんが」

「…そうですか」

「でも、ええ。あの子たちは強いですから。すぐには無理でもいつかきっと立ち直れます。だから…貴女は心配せず、幸せに生きてください」

「はい。…また、来てもいいですか?」

「もちろんです。貴女なら歓迎しますよ」

「ありがとうございます、神父様」

「お嬢様…?」

「神父様?」

私達がいつのまにか仲良くなったのを見て、シスターもルナさんもぽかんとする。

「じゃあ、そろそろ帰りますね。ルナさん、行きましょう」

「はい、お嬢様」

こうして私は、神父様にだけ秘密を共有したのでした。
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