田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと

文字の大きさ
3 / 67

色々あって婚約が成立しました

姉様に早速お返事を書いて、縁談を快諾した。姉様は喜んでくれて、僕を呼び戻す手紙をくれた。僕は転移魔法も使えないので、姉様に迎えに来てもらって執事のマリスビリーも連れて少ない荷物で侯爵家に転移した。姉様は膨大な魔力を持つので簡単らしい。

「姉様、…僕、お父様とお母様に挨拶した方がいいでしょうか?」

「要らないんじゃない?あの人たち私のことも貴方のことも、結局は自分達の駒としか認識してないわよ。私は侯爵家を継ぐのが夢だったから別にいいけど、使えないとか言われて捨てられた貴方は違うでしょ。無視でいいのよ、無視」

ということで僕は侯爵家で、両親と顔を合わせることもなく数日過ごした。そこで怖いことを言われる。

「え、公爵様には性別を隠して嫁ぐ!?」

「嫁いじゃえば大丈夫よ。初夜をなんだかんだと理由をつけて、どうにかして避ければ問題ないわ」

「そういう問題!?」

「そういう問題よ。そもそも貴方、私そっくりだもの。絶対バレないわよ」

「い、いいのかなぁ…」

やっぱり公爵様を騙すようで悪いけど、これも姉様のため家の為だ。なんとか初夜を回避しつつ上手く立ち回るほかに、僕に選択肢はない。

「さあ。顔合わせ兼入籍までの数日間に、お化粧と女性版のマナーなんかを覚えましょうね」

「待って顔合わせ兼入籍!?そんなスピード婚なの!?」

「ちなみに結婚式はされないそうだから安心なさい」

「不安しかないよー!?」

そんなこんなで顔合わせ当日になってしまった。公爵様のところまで姉様に転移魔法で送ってもらった。もちろん僕は姉様主導でばっちりメイクして女装している。

「じゃあ、顔合わせ頑張ってね」

「頑張ってきますね、姉様」

「大丈夫、貴方は黒だけど私に似て誰よりも可愛いわ。自信を持って」

「はい…!」

とはいえ、僕は黒髪。そもそも男だし、不安は不安だ。だけれども姉様のため。頑張るしかない!

ということでお見合い会場となる公爵家に招待され、ドナシアン様と顔合わせする。緊張する。ドキドキしていたのだけれど、ポールさんという執事長が僕を一目見て止まった。

「…アリスティア様」

「は、はい!」

「申し訳ございませんが、貴方は男性ですか?カサンドル家には呪われた黒を宿すご令息がいるとのことですが」

心臓が一瞬、止まったかと思った。

どうしようどうしようと、頭の中がぐるぐると回る。でも、もうバレたらどうしようもない。両親にはなんて言おう。姉様はどうなるだろう。

「アリスティア様。大丈夫です、落ち着いてください。ゆっくり深呼吸して」

ポールさんは僕を安心させるように優しく微笑んだ。

「ご当主様に御報告して、判断を仰ぎましょう。どのようなご事情があるかは存じませんが、悪いようにはならないかもしれませんよ」

「え…」

そして、ポールさんはドナシアン様の待つ部屋に先に入る。しばらくすると、ポールさんに迎えられてドナシアン様の待つ応接間に僕も入った。目の前には銀髪に青の瞳のきりっとした顔立ちの人。男の僕からみてもとてもかっこいい。

「あ、あの、お初にお目にかかります!アリスティア・ベレニス・カサンドルです、よろしくお願いします」

「丁寧な挨拶ありがとう。クロヴィス・シリル・ドナシアンだ。よろしく頼む。…さて、君の処遇だが」

どくんどくんと、心臓が跳ねる音が聞こえる。

「まずは、私の弟と会ってみてくれないか?」

「え、もちろんいいですけど何故?」

ドナシアン様は少し気まずそうな表情になる。

「私には歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵である父の、正妻との唯一の子だ。父と正妻の間には長らく子供ができなくて、待望の嫡男だった。しかし父と正妻は弟が生まれてすぐに亡くなった。正当な継承権を持つ弟があまりにも幼く家を継げないため、私は妾腹でありながら爵位を継承したんだ。」

「それは大変でしたね…!でも、弟さんに頼れるお兄さんがいてよかった…」

「…ありがとう。君は優しいんだな。それだから、私の後に爵位を継ぐのは私の子供ではなく弟になる。つまり、私には子供は必要ないんだ。その分、弟と仲良くして欲しい。その上で君の処遇を決めようと思う」

「わ、わかりました!よろしくお願いします!」

「…君が男性というのも驚いたが、こちらもその辺りの事情を伏せていて申し訳無かった。だから、君だけを一方的に責める気はないから安心してほしい」

お互いに、色々複雑な事情があるらしい。弟さんと仲良くできるといいな。

「ありがとうございます。よろしくお願いします!」

「こちらこそ。シエル、聞こえていただろう。おいで」

「はい、お兄様!」

そうしててちてち歩いてきたのは、まだ小さな男の子。銀髪に青の瞳で、ドナシアン様の小さい版って感じ。

「シエル・マチュー・ドナシアン、五歳です!よろしくお願いします!」

「うわあ可愛い!僕はアリスティア。アリスティア・ベレニス・カサンドルだよ。シエル様、よろしくね!」

「アリスティアお兄ちゃん、よろしくお願いします!!!」

可愛い。すごく可愛い!

「…これは驚いた。シエルは、普段人見知りなんだが。シエルが自分から挨拶しに行くなんてな」

「だってアリスティアお兄ちゃんの感情の色、とっても綺麗で純粋な好意に溢れてるんだもん!」

シエル様がそう言うと、ドナシアン様は目を見開いて驚いている。この国の王家の血筋の人は、たまに人の感情の色が見える特性を持つことがあるらしい。シエル様もそうなんだろうな。

「…君もシエルを気に入ってくれたんだな。ありがとう」

「だって可愛いんですもん」

「…よし、決めた。シエルという跡取りがもういるし、私としては家同士の婚姻という事実だけがあれば良い。普段は人見知りのシエルが、ここまで気に入ったわけだしな。婚姻はとりあえず先延ばしにして、婚約だけしておこう。これからは女装もしなくていいから、公爵家で暮らすといい。侯爵家には、帰りづらいだろう?」

「…よ、よかったぁ。ありがとうございます、ドナシアン様」

「クロヴィスでいい。私もアリスと呼ぶ」

ということで、僕はシエル様に気に入られたおかげもあり、男であることがバレたら捨てられると思いきやそのまま婚約して公爵家で暮らすことになった。

僕の後ろで控えていたマリスビリーも一安心、という顔だ。緊張しいなマリスビリーは公爵家で上手くやっていけるかな。僕も、呪われた黒の上だけれども使用人のみんなは受け入れてくれるかな。

とにかく、田舎の爺ちゃんと婆ちゃん、侯爵家の姉様にも婚約をして婚姻は引き伸ばしになったことを伝える手紙を出した。あとは荷物だけど、あんまり持ってきてないけど大丈夫かな。

「ああ、一緒に住むのに必要なものはある程度こちらで揃えるから安心して今日から住んで欲しい」

すごい。クロヴィス様はエスパーみたい。

「私はエスパーじゃない」

やっぱりエスパーだと思う。
感想 19

あなたにおすすめの小説

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

婚約破棄された悪役令息は隣国の王子に持ち帰りされる

kouta
BL
婚約破棄された直後に前世の記憶を思い出したノア。 かつて遊んだことがある乙女ゲームの世界に転生したと察した彼は「あ、そういえば俺この後逆上して主人公に斬りかかった挙句にボコされて処刑されるんだったわ」と自分の運命を思い出す。 そしてメンタルがアラフォーとなった彼には最早婚約者は顔が良いだけの二股クズにしか見えず、あっさりと婚約破棄を快諾する。 「まぁ言うてこの年で婚約破棄されたとなると独身確定か……いっそのこと出家して、転生者らしくギルドなんか登録しちゃって俺TUEEE!でもやってみっか!」とポジティブに自分の身の振り方を考えていたノアだったが、それまでまるで接点のなかったキラキライケメンがグイグイ攻めてきて……「あれ? もしかして俺口説かれてます?」 おまけに婚約破棄したはずの二股男もなんかやたらと絡んでくるんですが……俺の冒険者ライフはいつ始まるんですか??(※始まりません)

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

主人公の義弟兼当て馬の俺は原作に巻き込まれないためにも旅にでたい

発光食品
BL
『リュミエール王国と光の騎士〜愛と魔法で世界を救え〜』 そんないかにもなタイトルで始まる冒険RPG通称リュミ騎士。結構自由度の高いゲームで種族から、地位、自分の持つ魔法、職業なんかを決め、好きにプレーできるということで人気を誇っていた。そんな中主人公のみに共通して持っている力は光属性。前提として主人公は光属性の力を使い、世界を救わなければいけない。そのエンドコンテンツとして、世界中を旅するも良し、結婚して子供を作ることができる。これまた凄い機能なのだが、この世界は女同士でも男同士でも結婚することが出来る。子供も光属性の加護?とやらで作れるというめちゃくちゃ設定だ。 そんな世界に転生してしまった隼人。もちろん主人公に転生したものと思っていたが、属性は闇。 あれ?おかしいぞ?そう思った隼人だったが、すぐそばにいたこの世界の兄を見て現実を知ってしまう。 「あ、こいつが主人公だ」 超絶美形完璧光属性兄攻め×そんな兄から逃げたい闇属性受けの繰り広げるファンタジーラブストーリー

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている

香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。 異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。 途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。 「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!

【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。 ⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました