田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと

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俺の主人はお人好し

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俺はリュック。とある国の出身らしい母に女手一つで育ててもらった。なんでも、由緒正しい血筋の男の子供が出来たらしく、殺される前に逃げてきたんだって。それが俺らしい。

そんな母を最近亡くし、頼る場所もなくスラム街に紛れて生活していた。なにも食べられず数日が過ぎると、いい加減ご飯を食べたくて引ったくりをすることにした。良心は咎めたけど、言ってる場合じゃなかった。

「それはお可哀想に。けれど、アリスティア様を傷つける理由にはなりませんね」

「…うん、俺もそう思う」

「素直でよろしい」

俺はその後、引ったくりは成功したけどあのお兄さんに取り返された。とりあえず捕まっちゃいけないと思ってお兄さんを突き飛ばして逃げたら、別のお兄さんに捕まった。

「お兄さん、ではなくご当主様とアリスティア様です」

「あ…うん、気をつける」

それで、アリスティア様が俺を気にしてくれてここに連れてこられて、何故かお風呂に入れられている。

「そうですな。湯加減もいいでしょう?」

「すごく気持ちいい」

「汚れも大分落ちましたな。そろそろ上がりましょうか」

「うん」

俺はポールさんという人に連れられてお風呂を上がる。体を拭いて、ポールさんがくれた綺麗な子供服を着せてもらった。ポールさんの小さな頃のやつらしい。ポールさん、物持ちいいなぁ。

「さて。魔法で髪を乾かして梳かしましょうか」

「ありがとう」

ポールさんに、俺の青い髪を乾かして梳かしてもらう。俺の金の目に映るのはシワだらけの優しい手。

「さて、次はお食事です。といっても、しばらく何も食べてないようなのでまずはパン粥からですよ」

「うん、いただきます」

ポールさんが持ってきてくれたパン粥は、何故かすごく美味しく感じた。

「すごく美味しい」

「それは良かった」

「ポールさん、俺、アリスティア様に助けてもらって、こうしていられるんだよね?」

「そうですね」

「俺、アリスティア様のために何が出来るかな。俺学がないし、出来るのは魔法と身体を動かすくらいで…」

ポールさんはぽんぽんと俺の頭を撫でる。

「大丈夫。お役に立てると思いますよ。アリスティア様は魔法が使えません。だから、そんなアリスティア様を守る護衛になりなさい」

「…俺でいいの?」

「身体は小さいですが、魔法が使えれば問題ありません。その身体では盾にはなりませんが、治癒魔法や保護魔法などを覚えればすごく役立つかと」

「あ…俺、どっちも使えるよ!」

「…本当ですか?」

パン粥を食べ終わるとご馳走さまをして、ポールさんに治癒魔法と保護魔法を見てもらう。

「…ふむ。質を上げる必要はありますが、確かに使えていますね。ある程度鍛錬を積ませてからと思いましたが、アリスティア様がベッドの上から解放されるころには護衛としてつけましょうか」

「本当!?アリスティア様の役に立てる!?」

「ええ。アリスティア様はおそらく数日はベッドの上で生活になるので、その間に治癒魔法と保護魔法の特訓をしましょう。使えるなら、質を上げればいいだけですからすぐ身につきます」

ということで俺は、頑張って鍛えて治癒魔法と保護魔法の質を上げた。なんとかアリスティア様に仕え始める日の前日の夜、ポールさんから合格をもらった。これでアリスティア様の役に立てる。もちろんもっと鍛錬を重ねて、護衛としてより自分を磨いていくつもりだ。

「というわけで、アリスティア様の護衛になった。名前はリュック。あと、アリスティア様。助けてくれてありがとう。迷惑かけてごめん。怪我はもう大丈夫か?」

「大丈夫大丈夫!リュックっていうのかぁ、良い名前だね」

「そ、そうかな。ところで、アリスティア様は魔法が使えないって聞いたけど、なんで使えないんだ?」

「僕、呪われた黒をこの身に宿しているから。僕の祖国の守り神様が、昔黒髪に黒い目の異世界からきた聖女様に国を荒らされて怒ったんだって。それから守り神様は、黒を身に宿す者には奇跡の力…魔法を授けなくなった。その呪いは、祖国を出ても変わらなかった。そのせいで両親に嫌われて、田舎の爺ちゃん婆ちゃん家で育ったんだ」

「え…」

心優しいアリスティア様にそんな過去があったなんて…!

「まあ、不便は感じないんだけどね。マリスビリー達がいるし」

「そ、そっか。ごめんね、アリスティア様。俺、そんな苦労して育ってきたアリスティア様に…」

「いいのいいの!反省できて偉いよ!」

アリスティア様は優しい。心がポカポカした。

「俺、頑張って鍛えてアリスティア様のお役に立つから。見ててね」

「わかった!」

この人に出会えて良かった。
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