37 / 67
怖い人が来ました
「じゃあ、クロヴィス様。シエル様も、いってらっしゃい」
「行ってくる。留守は頼んだ」
「アリスティアお兄ちゃん、行ってきまーす!」
今日はクロヴィス様とシエル様が二人揃ってお出かけ。僕はお留守番だ。
「さて、何をしようかな」
マリスビリーの淹れてくれる紅茶を飲みながら、何をするか考える。すると、部屋のドアがノックされた。
「はい、どうぞー」
「失礼致します。…アリスティア様。今お客様がいらっしゃいまして」
「お客様ですか?」
「ご当主様のご友人の方なのですが、今日はアリスティア様に用があると仰られていまして」
「じゃあ、今行きますね」
お客様を迎える支度をして、ポールさんとリュック、マリスビリーと一緒に応接間に向かう。
「お待たせ致しました。はじめまして、アリスティア・ベレニス・カサンドルです」
「ふーん…あんたがねぇ…」
ジロジロと不躾な視線を送られる。な、なに?
「あんたの国では、黒髪や黒い瞳は呪われてるんだろ」
冷たい声に息がつまる。なんだか、この人は怖い。
「呪われた黒って言うんだっけ?よくもまあ、そんな人間がクロヴィスの嫁に来たよな」
…僕だって、望んで呪われた黒を宿しているわけじゃない。酷いよ。
「…デイモン様。失礼ですが、アリスティア様に対してあんまりな態度では?」
ポールさんが庇ってくれて、少しだけ息が楽になる。でも、やっぱり怖い。
「本当のことだろ?身を引けよ。別に、カサンドル家で無くてもあんたの国の有力貴族と婚姻を結べればクロヴィスは困らないんだから。クロヴィスの足を引っ張るなよ」
「…ぼ、僕は、クロヴィス様もシエル様も大好きだから。婚約者でいたいです」
「あんたの都合なんか知らない。クロヴィスはモテるし、すぐにあんたの代わりなんか見つかる。身を引けって言ってるんだから荷物まとめてさっさと出て行け」
デイモン様と呼ばれたこの人のあんまりにも冷たい空気に、蛇に睨まれた蛙のように動けなくなる僕。リュックがそんな僕とデイモン様との間に入ってくれた。
「あんたこそ、さっきからなんなんだ?アリスティア様が言い返さないからって言いたい放題だな。いくらご当主様のご友人でも、やっていいことと悪いことはあるだろ」
「俺はクロヴィスのために言ってるんだ!」
「そんなの知るか。アリスティア様のことを傷つけるだけならさっさと帰れ。もう二度と来るな」
「俺はクロヴィスの親友だ!」
「だからなんだ。アリスティア様はご当主様の婚約者だぞ」
「呪われた黒のくせに!」
僕は、泣くのを必死に堪えるので精一杯。呪われた黒のくせに、なんて。僕だって、そんな自分が嫌なのに。わかってるよ、僕がクロヴィス様に相応しくないことくらい。でも僕はこの政略結婚に足を突っ込んだ以上もう祖国においそれとは帰れないし、何より僕はクロヴィス様とシエル様が好き。大好き。今更さようならなんて辛すぎるよ。
僕はとうとう我慢ならず、涙をこぼしてしまう。
「泣けばそれで済むと思ってんのか?いいからさっさと国にでも帰れよ!」
「…随分と好き勝手なことを言ってくれるな」
「クロヴィス!?お前シエルと出掛けてたんじゃ…」
「デイモンお兄ちゃん。僕もいるよ」
「シエル…」
クロヴィス様とシエル様が、怒り心頭な様子でデイモン様に詰め寄る。でも僕はそれどころじゃない。
「クロヴィス様…シエル様ぁ…」
「アリスティアお兄ちゃん、大丈夫!?」
「アリス、いきなり知らない奴に責められて怖かっただろう。もう大丈夫だ」
「ふぇ…うん、だ、大丈夫です。ちょっと怖かっただけで、リュックが守ってくれました」
「リュック、よくやった」
リュックと僕の頭を乱暴に撫でるクロヴィス様。すごく救われる思いになった。
「さて。どういうことか、教えてもらおうか?デイモン」
「…っ!」
デイモン様のお顔が、青ざめた。
「行ってくる。留守は頼んだ」
「アリスティアお兄ちゃん、行ってきまーす!」
今日はクロヴィス様とシエル様が二人揃ってお出かけ。僕はお留守番だ。
「さて、何をしようかな」
マリスビリーの淹れてくれる紅茶を飲みながら、何をするか考える。すると、部屋のドアがノックされた。
「はい、どうぞー」
「失礼致します。…アリスティア様。今お客様がいらっしゃいまして」
「お客様ですか?」
「ご当主様のご友人の方なのですが、今日はアリスティア様に用があると仰られていまして」
「じゃあ、今行きますね」
お客様を迎える支度をして、ポールさんとリュック、マリスビリーと一緒に応接間に向かう。
「お待たせ致しました。はじめまして、アリスティア・ベレニス・カサンドルです」
「ふーん…あんたがねぇ…」
ジロジロと不躾な視線を送られる。な、なに?
「あんたの国では、黒髪や黒い瞳は呪われてるんだろ」
冷たい声に息がつまる。なんだか、この人は怖い。
「呪われた黒って言うんだっけ?よくもまあ、そんな人間がクロヴィスの嫁に来たよな」
…僕だって、望んで呪われた黒を宿しているわけじゃない。酷いよ。
「…デイモン様。失礼ですが、アリスティア様に対してあんまりな態度では?」
ポールさんが庇ってくれて、少しだけ息が楽になる。でも、やっぱり怖い。
「本当のことだろ?身を引けよ。別に、カサンドル家で無くてもあんたの国の有力貴族と婚姻を結べればクロヴィスは困らないんだから。クロヴィスの足を引っ張るなよ」
「…ぼ、僕は、クロヴィス様もシエル様も大好きだから。婚約者でいたいです」
「あんたの都合なんか知らない。クロヴィスはモテるし、すぐにあんたの代わりなんか見つかる。身を引けって言ってるんだから荷物まとめてさっさと出て行け」
デイモン様と呼ばれたこの人のあんまりにも冷たい空気に、蛇に睨まれた蛙のように動けなくなる僕。リュックがそんな僕とデイモン様との間に入ってくれた。
「あんたこそ、さっきからなんなんだ?アリスティア様が言い返さないからって言いたい放題だな。いくらご当主様のご友人でも、やっていいことと悪いことはあるだろ」
「俺はクロヴィスのために言ってるんだ!」
「そんなの知るか。アリスティア様のことを傷つけるだけならさっさと帰れ。もう二度と来るな」
「俺はクロヴィスの親友だ!」
「だからなんだ。アリスティア様はご当主様の婚約者だぞ」
「呪われた黒のくせに!」
僕は、泣くのを必死に堪えるので精一杯。呪われた黒のくせに、なんて。僕だって、そんな自分が嫌なのに。わかってるよ、僕がクロヴィス様に相応しくないことくらい。でも僕はこの政略結婚に足を突っ込んだ以上もう祖国においそれとは帰れないし、何より僕はクロヴィス様とシエル様が好き。大好き。今更さようならなんて辛すぎるよ。
僕はとうとう我慢ならず、涙をこぼしてしまう。
「泣けばそれで済むと思ってんのか?いいからさっさと国にでも帰れよ!」
「…随分と好き勝手なことを言ってくれるな」
「クロヴィス!?お前シエルと出掛けてたんじゃ…」
「デイモンお兄ちゃん。僕もいるよ」
「シエル…」
クロヴィス様とシエル様が、怒り心頭な様子でデイモン様に詰め寄る。でも僕はそれどころじゃない。
「クロヴィス様…シエル様ぁ…」
「アリスティアお兄ちゃん、大丈夫!?」
「アリス、いきなり知らない奴に責められて怖かっただろう。もう大丈夫だ」
「ふぇ…うん、だ、大丈夫です。ちょっと怖かっただけで、リュックが守ってくれました」
「リュック、よくやった」
リュックと僕の頭を乱暴に撫でるクロヴィス様。すごく救われる思いになった。
「さて。どういうことか、教えてもらおうか?デイモン」
「…っ!」
デイモン様のお顔が、青ざめた。
あなたにおすすめの小説
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
婚約破棄された悪役令息は隣国の王子に持ち帰りされる
kouta
BL
婚約破棄された直後に前世の記憶を思い出したノア。
かつて遊んだことがある乙女ゲームの世界に転生したと察した彼は「あ、そういえば俺この後逆上して主人公に斬りかかった挙句にボコされて処刑されるんだったわ」と自分の運命を思い出す。
そしてメンタルがアラフォーとなった彼には最早婚約者は顔が良いだけの二股クズにしか見えず、あっさりと婚約破棄を快諾する。
「まぁ言うてこの年で婚約破棄されたとなると独身確定か……いっそのこと出家して、転生者らしくギルドなんか登録しちゃって俺TUEEE!でもやってみっか!」とポジティブに自分の身の振り方を考えていたノアだったが、それまでまるで接点のなかったキラキライケメンがグイグイ攻めてきて……「あれ? もしかして俺口説かれてます?」
おまけに婚約破棄したはずの二股男もなんかやたらと絡んでくるんですが……俺の冒険者ライフはいつ始まるんですか??(※始まりません)
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
主人公の義弟兼当て馬の俺は原作に巻き込まれないためにも旅にでたい
発光食品
BL
『リュミエール王国と光の騎士〜愛と魔法で世界を救え〜』
そんないかにもなタイトルで始まる冒険RPG通称リュミ騎士。結構自由度の高いゲームで種族から、地位、自分の持つ魔法、職業なんかを決め、好きにプレーできるということで人気を誇っていた。そんな中主人公のみに共通して持っている力は光属性。前提として主人公は光属性の力を使い、世界を救わなければいけない。そのエンドコンテンツとして、世界中を旅するも良し、結婚して子供を作ることができる。これまた凄い機能なのだが、この世界は女同士でも男同士でも結婚することが出来る。子供も光属性の加護?とやらで作れるというめちゃくちゃ設定だ。
そんな世界に転生してしまった隼人。もちろん主人公に転生したものと思っていたが、属性は闇。
あれ?おかしいぞ?そう思った隼人だったが、すぐそばにいたこの世界の兄を見て現実を知ってしまう。
「あ、こいつが主人公だ」
超絶美形完璧光属性兄攻め×そんな兄から逃げたい闇属性受けの繰り広げるファンタジーラブストーリー
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている
香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。
異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。
途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。
「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!
【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました