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結婚式はなんと一週間後らしい
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「イザベルー!」
「おはようございます、聖王猊下」
「おはよう!今日もいい朝だな!」
求婚された次の日、朝から聖王猊下が来た。
「結婚に必要な書類の準備が整ったぞ!」
「はやっ」
「あとはイザベルの兄殿と兄嫁殿、それとイザベルのサインをもらうだけだ!結婚式の日に書いてくれればいいからな!」
「は、はい」
「それと結婚式の日取りが決まったぞ!」
ニコニコと嬉しそうな聖王猊下。
「い、いつですか?」
「一週間後だ!」
誰かこの人の暴走を止めてはくれないか。
「一週間後…じゅ、準備は?」
「そんなもの大聖堂の神官が全員総出で行なっているから問題ない」
「その間ほかの仕事は?」
「全て俺が肩代わりした!その上で全部片付けてきた!問題ない!」
無駄にハイスペック。亀の甲より年の功か。それともハーフエルフだからか。
「どのくらいの規模になります?」
「国中の貴族を招待するぞ!」
「え、もしかして」
「お前の元婚約者とその浮気相手も来る。だが、安心しろ。お前には俺がついてる。絶対守るし、泣かせない。むしろそいつらの悔しがる姿を余興だと思って楽しめばいい」
自信満々の聖王猊下。見た目は子供だけど、なぜかたしかな安心感がある。
「…聖王猊下がそうおっしゃるなら、信じます」
「大船に乗ったつもりでいるといい!」
「でも、急な招待で皆様来てくださるでしょうか?」
「うん?来るに決まってるだろう?俺達夫婦の結婚式以上に優先することなどなにもないだろう」
ああ、どうしてこの人はこんなに天上天下唯我独尊思考なのか。
頼りになる上かっこよくてハイスペックな、神秘的な美しさの美少年。
そんな聖王猊下なのに、言動はわがままっ子である。
「それよりもイザベル。俺と親睦を深めよう!差し当たっては、うちの猫でも愛でないか?」
「猫?」
「にゃあん」
ああ、そう言えば星辰の神々に猫を庇護する神様もいたなぁ、なんて現実逃避しつつ。聖王猊下の着ているローブのフードに隠れていた猫ちゃんを、聖王猊下と愛でることにした。
「このお猫様はなんて名前ですか?」
「バステトだ」
「星辰の神々の一柱の名前ですね」
「ああ。とても賢く勇敢な子だからな。ぴったりだろう」
我が事のように誇らしげな聖王猊下に、少し微笑ましい気持ちになる。
「そうですね。バステト様は愛らしいにゃんこ様です」
「ゴロゴロゴロ…」
「褒められているのがわかるのか、バステト。ご機嫌だな」
「ゴロゴロゴロ…」
喉を鳴らすバステト様に、聖王猊下もご満悦。バステト様はバステト様で、出会ったばかりの私にお腹を見せて撫でさせてくれる。懐っこいなぁ。
「ああ、そうそう。皇帝陛下が言ってたぞ」
「?」
「いつ結婚するのか心配だった大叔父を引き取ってくれてありがとう、だとさ」
「そ、そうですか」
反応しづらい。なんと言えば正解なのか。
「俺からもお礼を言おう。本当にありがとう、イザベル」
「え?」
「こんなにも賢くて優秀で、可愛らしい娘を嫁にもらえるなんて楽しみだ」
「…」
聖王猊下の言葉は、正直言って今の私には救いだった。浮気されて捨てられて、なのに相手は幸せそうで。そんな状況で、私を肯定してくれる聖王猊下。嫁にもらえるのが楽しみなんて、そんなことを言われて嬉しくないわけがない。
まあ、そんなことを言ってくれる人が見た目は子供だから脳がバグりそうなんだけど。
「結婚したら、バステトのことも一緒に可愛がってくれ」
「それはもちろんです」
これで見た目が大人だったらなぁ…なんて、無い物ねだりもいいところか。
「おはようございます、聖王猊下」
「おはよう!今日もいい朝だな!」
求婚された次の日、朝から聖王猊下が来た。
「結婚に必要な書類の準備が整ったぞ!」
「はやっ」
「あとはイザベルの兄殿と兄嫁殿、それとイザベルのサインをもらうだけだ!結婚式の日に書いてくれればいいからな!」
「は、はい」
「それと結婚式の日取りが決まったぞ!」
ニコニコと嬉しそうな聖王猊下。
「い、いつですか?」
「一週間後だ!」
誰かこの人の暴走を止めてはくれないか。
「一週間後…じゅ、準備は?」
「そんなもの大聖堂の神官が全員総出で行なっているから問題ない」
「その間ほかの仕事は?」
「全て俺が肩代わりした!その上で全部片付けてきた!問題ない!」
無駄にハイスペック。亀の甲より年の功か。それともハーフエルフだからか。
「どのくらいの規模になります?」
「国中の貴族を招待するぞ!」
「え、もしかして」
「お前の元婚約者とその浮気相手も来る。だが、安心しろ。お前には俺がついてる。絶対守るし、泣かせない。むしろそいつらの悔しがる姿を余興だと思って楽しめばいい」
自信満々の聖王猊下。見た目は子供だけど、なぜかたしかな安心感がある。
「…聖王猊下がそうおっしゃるなら、信じます」
「大船に乗ったつもりでいるといい!」
「でも、急な招待で皆様来てくださるでしょうか?」
「うん?来るに決まってるだろう?俺達夫婦の結婚式以上に優先することなどなにもないだろう」
ああ、どうしてこの人はこんなに天上天下唯我独尊思考なのか。
頼りになる上かっこよくてハイスペックな、神秘的な美しさの美少年。
そんな聖王猊下なのに、言動はわがままっ子である。
「それよりもイザベル。俺と親睦を深めよう!差し当たっては、うちの猫でも愛でないか?」
「猫?」
「にゃあん」
ああ、そう言えば星辰の神々に猫を庇護する神様もいたなぁ、なんて現実逃避しつつ。聖王猊下の着ているローブのフードに隠れていた猫ちゃんを、聖王猊下と愛でることにした。
「このお猫様はなんて名前ですか?」
「バステトだ」
「星辰の神々の一柱の名前ですね」
「ああ。とても賢く勇敢な子だからな。ぴったりだろう」
我が事のように誇らしげな聖王猊下に、少し微笑ましい気持ちになる。
「そうですね。バステト様は愛らしいにゃんこ様です」
「ゴロゴロゴロ…」
「褒められているのがわかるのか、バステト。ご機嫌だな」
「ゴロゴロゴロ…」
喉を鳴らすバステト様に、聖王猊下もご満悦。バステト様はバステト様で、出会ったばかりの私にお腹を見せて撫でさせてくれる。懐っこいなぁ。
「ああ、そうそう。皇帝陛下が言ってたぞ」
「?」
「いつ結婚するのか心配だった大叔父を引き取ってくれてありがとう、だとさ」
「そ、そうですか」
反応しづらい。なんと言えば正解なのか。
「俺からもお礼を言おう。本当にありがとう、イザベル」
「え?」
「こんなにも賢くて優秀で、可愛らしい娘を嫁にもらえるなんて楽しみだ」
「…」
聖王猊下の言葉は、正直言って今の私には救いだった。浮気されて捨てられて、なのに相手は幸せそうで。そんな状況で、私を肯定してくれる聖王猊下。嫁にもらえるのが楽しみなんて、そんなことを言われて嬉しくないわけがない。
まあ、そんなことを言ってくれる人が見た目は子供だから脳がバグりそうなんだけど。
「結婚したら、バステトのことも一緒に可愛がってくれ」
「それはもちろんです」
これで見た目が大人だったらなぁ…なんて、無い物ねだりもいいところか。
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