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楽しいデート
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朝を迎えて、俺はイザベルと午前中の平民達への治癒を頑張った。そして、イザベルにデートのお誘いをする。
「今日も良く頑張ったな、イザベル」
「ありがとうございます、ユルリッシュ様。ユルリッシュ様もお疲れ様です」
「ありがとう。それでな、イザベル。今日の午後なんだが星辰語の翻訳は少しお休みして、一緒に出かけないか?」
「え?」
「夫婦の親睦を深めることも大切だろう」
そう言えば、イザベルは嬉しそうにしてくれた。
「ぜひご一緒したいです!」
「それは良かった。じゃあ、早速だが今から行こうか」
「はい!」
イザベルと手を繋いで大聖堂を出る。
「今日は飲食店街に行こう。聖都の飲食店街は賑やかで美味しいところばかりだから、イザベルもきっと気に入る」
「はい、ユルリッシュ様!」
イザベルの手を引いて、俺は飲食店街に向かった。
「わあ…!」
「な、賑やかだろう?」
「すごい…!」
「神官達もよく利用するからな。味は保証する。俺もたまに来るから、顔見知りも多いぞ」
「そうなんですね!」
興味津々の様子のイザベルを、微笑ましく思う。
「こっち側が大体ご飯、おかず系で、向こうに行くとスイーツ系が多いな」
「スイーツ系!」
「はは、楽しみは後にとっておこう。甘い物は別腹だしな」
「はい!まずはご飯やおかず系ですね!」
「まずはどの店がいいかな…うん、じゃああの店から行こうか」
イザベルの手を引いて、オススメのお店に行く。
「よう、俺が来てやったぞ」
「お!聖王猊下!いらっしゃいませ!あ、もしかして噂の奥様とご一緒に?」
「えっと、えへへ。イザベルと申します。ユルリッシュ様の妻です」
「おおー!これは別嬪さんを捕まえましたなー」
「だろう。自慢の妻だ」
さすがはこの店の主、見る目がある。
「うちの自慢の妻に、一番にこの店のタコスを食べさせてやりたいと思ってな。美味いのを頼むぞ」
「おお…!そりゃ光栄ですな。ちょっとお待ち下さい」
目の前でタコスを調理してもらう。
「どうぞ!」
「ありがとう。ほら、イザベル。食べてみろ。俺も食べる、いただきます」
「はい、ユルリッシュ様!いただきます!」
豪快に一口食べるイザベル。表情がキラキラしてる。可愛い。
「わあ…すごく美味しいです!お肉の旨味がガツンと来て、ソースの美味しさも追いかけてきて、トルティーヤの香りも鼻腔をくすぐりますね!」
「おお!奥様わかってくださいますか!」
「とっても美味しいのはわかります!」
「でしょうでしょう。いやぁ、奥様は本当に素晴らしい方ですな」
「だろう。うちの妻以上に良い女はいない」
俺の言葉に、店主は目をパチクリする。
「ありゃ、こりゃあベタ惚れですな」
「こんな素晴らしい妻がいて、惚れるなった方が無理だろう」
「そりゃ確かに」
照れた様子のイザベルも可愛い。が、人前でからかうのは可哀想だろう。ぐっと我慢する。
「じゃあイザベル。次はあっちのお店に行こう」
「まいどありー!末永くお幸せに!」
「ありがとうございました!ご馳走さまでした!」
食べ終わると、イザベルを連れて次のお店に行く。
「次はホットドッグだ!」
「聖王猊下いらっしゃいませ!あ、奥様ですか?美人さんですねー!」
人当たりの良い店主が出迎える。
「ああ、自慢の妻のイザベルだ。丁重に扱えよ」
「イザベルです。よろしくお願いします」
「あらご丁寧に。店主のルナです。よろしくお願いしますね!」
「それよりホットドッグを寄越せ。ここのは美味しいから、妻に食べさせてやりたいんだ」
「あら嬉しい!作りたてお出ししますね」
目の前で調理してもらって、受け取る。
「どうぞ、奥様。聖王猊下も」
「いただきます」
「いただきます!」
イザベルと一緒に食べる。途端にイザベルが笑顔になる。
「すごく美味しいです!このケチャップってもしかして手作りですか?ケチャップからもうすごく美味しい!」
「あ、わかります!?そう、ケチャップから手作りしてるんですよ!うちのこだわりです!」
「やっぱり!このケチャップも個別で売ってもめちゃくちゃ売れそうですよね!」
「奥様!大好き!企業秘密のケチャップだから売ったりしないんですけど、そこまで褒められると嬉しい!」
「イザベル、飲食店街はなかなかいいだろう」
イザベルに良いところを見せたくて、自慢してみる。
「はい!すごく最高です!」
「実は聖都内に飲食店街を導入したのは俺だ」
「おおー!さすがユルリッシュ様!」
「よっ!聖王猊下!」
「ふふん、もっと褒めてもいいぞ」
イザベルがいい反応をくれるので、こちらとしても嬉しい。
「さて、次はどの店に行くかな」
「毎度ありがとうございます!また奥様と来てくださいねー!」
「わかったわかった」
「ご馳走さまでした!」
俺はやや迷って、イザベルをルーローハンのお店に連れていく。イザベルはルーローハンを知らないらしく、少し首を傾げている。
「ルーローハン…ルーローハン…」
「大陸の左端の方の国の食べ物らしいぞ。とにかくガッツリ食べられてすごく美味しいから、試してみろ。まあ、ガッツリし過ぎてお腹いっぱいになるけどな」
「大陸の左端…!あのキラキラした文化のところですね!」
「キラキラした?ああ、民族衣装とか結構派手だよな」
「個人的にはすごく好きです!」
そんなことを話していたら、ちょうどその民族衣装が目に入った。
「聖王猊下ー、今日はうちで食べていきます?」
「ああ、店の前で話し込んで悪いな。もちろん食べる」
「お隣の女性は美人さんですねー、奥様ですか?」
「自慢の妻だ」
「イザベルです、よろしくお願いします」
人当たりがいい店主。ニコニコとイザベルを褒めてくれる。
「イザベル様かぁ。こりゃまた人気の出そうな聖妃様だ」
「だろう?」
「えへへ、ありがとうございます」
「今ルーローハンをお出しするのでちょいとお待ち下さいね」
ルーローハンが出てくる。イザベルが豪快に一口食べる。瞬間、パッと笑顔になった。
「おおー!美味しい!初めて食べましたけど、なんとなく本場の味感ありますね!」
「わかる。このルーローハン、めちゃくちゃ外国感あるよな」
「そりゃあ本場の人間が作ってますんでね」
「まあそうか」
「味がしっかり染みた玉子がまた美味しいです!」
イザベルがそう言うと、店主は吹き出した。
「ふはっ…聖妃様、すごく美味しそうに食べてくれますね!作った甲斐がある!」
「え、えへへ…」
「その玉子も結構こだわってるんですよ!褒めていただけて本当に嬉しいです!ありがとうございます!」
「こ、こちらこそです!」
「おい、俺の妻だぞ。少し馴れ馴れしいぞ」
ちょっとムッとする。なんか仲良くてムカつく。俺の妻だぞ、やらないぞ。
「おや、ヤキモチですか?聖妃様、愛されてますねー!」
「いえいえいえ…」
「自慢の妻だ。愛さないわけがない」
俺の孤独をわかってくれる、埋めてくれる、最愛の人だ。
「…ご馳走さま。今日も美味かった」
「ご馳走さまでした!美味しかったです!」
「まいどありー!」
イザベルの手を引いて、つぎのお店に行く。
「結構お腹いっぱいになったし、次はスイーツ系に行こうか」
「はい、ユルリッシュ様!」
「じゃあ、まずは生チョコから食べて行こうか」
「生チョコ!」
「美味しいお店があるからな。楽しみにしていてくれ」
チョコレート専門の屋台に行く。なんでも、チョコレートは魔法で冷やして溶けるのを防止しているらしい。屋台だから色々工夫しているようだ。
「いらっしゃいませ!あ、聖王猊下!横にいるのは聖妃様ですか?」
「ああ。俺の妻は可愛いだろう」
「ものすごく!初めまして、聖妃様!」
「初めまして、イザベルです。よろしくお願いします」
「タバサです、よろしくお願いします!」
優しい女性の店主は、イザベルとも相性が良いだろう。
「うちのイザベルにここの生チョコを食わせてやって欲しい。もちろん俺も食べる」
「はい、ではどうぞ」
早速生チョコを食べてみる。
「いただきます」
「いただきます!」
口に入れた瞬間、ふわっと溶けた。
「わあ…!美味しい!チョコレートと生クリームの香り、口溶け、全てが完璧ですね!」
「そうだな。クリーミーでコクがあり、すごく美味しい。甘過ぎずくど過ぎない絶妙な甘さも素晴らしいだろう?」
「はい!さすがユルリッシュ様のオススメのお店です!」
「照れますねー」
美味しかったけれど、その分パクパク食べてしまいすぐ無くなってしまった。
「お土産に持ち帰り用も包んでくれ」
「はーい」
「イザベル、明日の三時のおやつはこれにしよう」
「はい、ユルリッシュ様!」
そしてお持ち帰り用の生チョコも包んでもらって、屋台を後にする。
「次はあのケーキ屋のティラミスにしよう」
「ティラミス!」
「驚くほど美味しいぞ」
イザベルの手を引いて、ケーキ屋さんに来た。ここはマジックアイテムの『クーラーボックス』という物を使ってケーキを保存している。
「いらっしゃいませ、聖王猊下。いつものですか?」
「いや、今日はティラミスをくれ」
「いつもの?」
「聖王猊下はよくチーズテリーヌをよく召し上がられるのですよ」
「え、美味しそう」
イザベルの好みを考えるとティラミスがいいかと思っていたが、キラキラした目のイザベルに両方でもいいかと考え直す。
「…やっぱり両方くれ。二人分な」
「かしこまりました」
「ありがとうございます、ユルリッシュ様」
「我が最愛の妻のためだからな」
イザベルは俺の言葉に頬を染める。人前じゃなかったら存分に可愛がるのに。
「お待たせ致しました。ティラミスと、チーズテリーヌです」
「ありがとうございます、いただきます!」
「いただきます」
まずはティラミスから一口。イザベルの表情がすごく良い。気に入ったようでなによりだ。
「美味しい!チーズと生クリームがすごく濃厚ですね!」
「洋酒の香りがまた良いよな」
「最高ですね!今まで食べてきたティラミスと比べても歴代最高かも!」
「だろう?」
次はチーズテリーヌ。イザベルは美味しそうに食べてくれている。可愛い。
「美味しい!半熟トロトロで美味しいです!」
「使っている食材は全て聖都に隣接する村の契約農家から買っているらしいな」
「そうなんですか!?」
「はい、いずれもこだわりの食材です」
「すごい!だからこんなに美味しいんですね!」
イザベルの言葉に気を良くした店主。オススメメニューまで紹介し始める。
「もしよろしければ、ホットチョコレートもお出ししましょうか?美味しいですよ」
「え、飲みたいです!」
「なら、それも二人分頼む」
「はい、お待ち下さいね」
しばらく待つとホットチョコレートが出された。
「どうぞ」
「ありがとうございます!」
一口飲む。この香りがたまらない。
「…!香りがすごく良いです!とっても美味しい!」
「甘さもちょうどいいな」
ゆっくりと味わって飲んで、でもすぐに無くなってしまった。
「美味しかったです!ご馳走さまでした!」
「また来る」
「ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております」
イザベルを連れて、今度はプリンと杏仁豆腐の専門店に来た。
「プリンと杏仁豆腐…どっちもプルプルで甘いデザートですね!」
「ここのは本当にプルップルで味も最高だから、きっと気にいるぞ」
「わーい!」
「いらっしゃい。おお、聖王猊下ですか」
「よう。プリンと杏仁豆腐二人分くれ」
店主は俺と同年代の男性。すっと、プリンと杏仁豆腐を出してくれた。
「どうぞ」
「いただきます」
「ありがとうございます、いただきます!」
まずは杏仁豆腐から。ぱくりと一口食べて、イザベルがまた笑顔になった。
「プルップル!とろっとろ!これぞ杏仁豆腐って味ですね!」
「つるっといけるよな。甘いけど甘過ぎないのもいい」
「こんなに美味しい杏仁豆腐があるなんて、感動しました!」
「それは良かった」
次はプリン。一口食べれば、イザベルは蕩けそうな表情。
「こっちもプルプル!その上上品なお味ですね!」
「甘過ぎない味付け、プルプルな食感、最高に美味しいよな」
「大人向けのプリンですね!」
「じゃあ、イザベル。お腹いっぱいだし、そろそろ帰ろうか」
「はい、ユルリッシュ様」
イザベルと手を繋いで帰る。
「また今度、一緒に来よう」
「はい、ユルリッシュ様!」
「でも、今度は商店街巡りもいいかもな」
「商店街!」
「聖都の商店街は、色々売っていて面白いぞ」
商店街と聞いて嬉しそうなイザベルに、心から癒される。可愛い。
「楽しみです!」
「近いうちにまた誘うよ。イザベルと一緒に来るだけで、こんなに楽しいとは思わなかったからな」
「ふふ、私も楽しかったです!」
そうこうしているうちに、大聖堂についてしまった。デートもこれで終わり。でも、初めてのイザベルとのデートはものすごく幸せだった。
「今日は楽しかったな、イザベル」
夫婦の寝室で、二人でベッドに横たわってそんな話をする。
「すごく楽しかったです!ありがとうございます、ユルリッシュ様。ユルリッシュ様と一緒にいると、すごく楽しいことばかりです!」
「はは、それは良かった。俺も、イザベルと一緒にいると幸せだ」
…なんだか、イザベルがちょっと落ち着きがない?
「…どうした?イザベル」
「えっと…」
「なんだ、言ってみろ」
「…その、あんまりにもユルリッシュ様が優しいから、勘違いしてしまいそうというか」
「勘違い?」
なんのことだろうか。
「その、ユルリッシュ様に愛されてるのかなぁ…みたいな…」
「?イザベルは俺に愛されているだろう?」
なにを当たり前のことを言ってるんだ?
「博愛精神的な意味じゃなくて、あの…恋愛感情で」
「…だから、その意味で愛されているだろう?」
「え?」
まさか…わかってないのか?
「…?」
あ、わかってないな。よしわかった。
「…よし、イザベル。寝るのは少し後にしよう。少し話し合いが必要らしい」
にっこり笑って言う。なるべく優しく、わかりやすく伝える。
「あのな、イザベル。俺はイザベルが好きだぞ?」
イザベルの表情を見て、これは強引に伝えた方がいいかなぁとも思った。
「今日も良く頑張ったな、イザベル」
「ありがとうございます、ユルリッシュ様。ユルリッシュ様もお疲れ様です」
「ありがとう。それでな、イザベル。今日の午後なんだが星辰語の翻訳は少しお休みして、一緒に出かけないか?」
「え?」
「夫婦の親睦を深めることも大切だろう」
そう言えば、イザベルは嬉しそうにしてくれた。
「ぜひご一緒したいです!」
「それは良かった。じゃあ、早速だが今から行こうか」
「はい!」
イザベルと手を繋いで大聖堂を出る。
「今日は飲食店街に行こう。聖都の飲食店街は賑やかで美味しいところばかりだから、イザベルもきっと気に入る」
「はい、ユルリッシュ様!」
イザベルの手を引いて、俺は飲食店街に向かった。
「わあ…!」
「な、賑やかだろう?」
「すごい…!」
「神官達もよく利用するからな。味は保証する。俺もたまに来るから、顔見知りも多いぞ」
「そうなんですね!」
興味津々の様子のイザベルを、微笑ましく思う。
「こっち側が大体ご飯、おかず系で、向こうに行くとスイーツ系が多いな」
「スイーツ系!」
「はは、楽しみは後にとっておこう。甘い物は別腹だしな」
「はい!まずはご飯やおかず系ですね!」
「まずはどの店がいいかな…うん、じゃああの店から行こうか」
イザベルの手を引いて、オススメのお店に行く。
「よう、俺が来てやったぞ」
「お!聖王猊下!いらっしゃいませ!あ、もしかして噂の奥様とご一緒に?」
「えっと、えへへ。イザベルと申します。ユルリッシュ様の妻です」
「おおー!これは別嬪さんを捕まえましたなー」
「だろう。自慢の妻だ」
さすがはこの店の主、見る目がある。
「うちの自慢の妻に、一番にこの店のタコスを食べさせてやりたいと思ってな。美味いのを頼むぞ」
「おお…!そりゃ光栄ですな。ちょっとお待ち下さい」
目の前でタコスを調理してもらう。
「どうぞ!」
「ありがとう。ほら、イザベル。食べてみろ。俺も食べる、いただきます」
「はい、ユルリッシュ様!いただきます!」
豪快に一口食べるイザベル。表情がキラキラしてる。可愛い。
「わあ…すごく美味しいです!お肉の旨味がガツンと来て、ソースの美味しさも追いかけてきて、トルティーヤの香りも鼻腔をくすぐりますね!」
「おお!奥様わかってくださいますか!」
「とっても美味しいのはわかります!」
「でしょうでしょう。いやぁ、奥様は本当に素晴らしい方ですな」
「だろう。うちの妻以上に良い女はいない」
俺の言葉に、店主は目をパチクリする。
「ありゃ、こりゃあベタ惚れですな」
「こんな素晴らしい妻がいて、惚れるなった方が無理だろう」
「そりゃ確かに」
照れた様子のイザベルも可愛い。が、人前でからかうのは可哀想だろう。ぐっと我慢する。
「じゃあイザベル。次はあっちのお店に行こう」
「まいどありー!末永くお幸せに!」
「ありがとうございました!ご馳走さまでした!」
食べ終わると、イザベルを連れて次のお店に行く。
「次はホットドッグだ!」
「聖王猊下いらっしゃいませ!あ、奥様ですか?美人さんですねー!」
人当たりの良い店主が出迎える。
「ああ、自慢の妻のイザベルだ。丁重に扱えよ」
「イザベルです。よろしくお願いします」
「あらご丁寧に。店主のルナです。よろしくお願いしますね!」
「それよりホットドッグを寄越せ。ここのは美味しいから、妻に食べさせてやりたいんだ」
「あら嬉しい!作りたてお出ししますね」
目の前で調理してもらって、受け取る。
「どうぞ、奥様。聖王猊下も」
「いただきます」
「いただきます!」
イザベルと一緒に食べる。途端にイザベルが笑顔になる。
「すごく美味しいです!このケチャップってもしかして手作りですか?ケチャップからもうすごく美味しい!」
「あ、わかります!?そう、ケチャップから手作りしてるんですよ!うちのこだわりです!」
「やっぱり!このケチャップも個別で売ってもめちゃくちゃ売れそうですよね!」
「奥様!大好き!企業秘密のケチャップだから売ったりしないんですけど、そこまで褒められると嬉しい!」
「イザベル、飲食店街はなかなかいいだろう」
イザベルに良いところを見せたくて、自慢してみる。
「はい!すごく最高です!」
「実は聖都内に飲食店街を導入したのは俺だ」
「おおー!さすがユルリッシュ様!」
「よっ!聖王猊下!」
「ふふん、もっと褒めてもいいぞ」
イザベルがいい反応をくれるので、こちらとしても嬉しい。
「さて、次はどの店に行くかな」
「毎度ありがとうございます!また奥様と来てくださいねー!」
「わかったわかった」
「ご馳走さまでした!」
俺はやや迷って、イザベルをルーローハンのお店に連れていく。イザベルはルーローハンを知らないらしく、少し首を傾げている。
「ルーローハン…ルーローハン…」
「大陸の左端の方の国の食べ物らしいぞ。とにかくガッツリ食べられてすごく美味しいから、試してみろ。まあ、ガッツリし過ぎてお腹いっぱいになるけどな」
「大陸の左端…!あのキラキラした文化のところですね!」
「キラキラした?ああ、民族衣装とか結構派手だよな」
「個人的にはすごく好きです!」
そんなことを話していたら、ちょうどその民族衣装が目に入った。
「聖王猊下ー、今日はうちで食べていきます?」
「ああ、店の前で話し込んで悪いな。もちろん食べる」
「お隣の女性は美人さんですねー、奥様ですか?」
「自慢の妻だ」
「イザベルです、よろしくお願いします」
人当たりがいい店主。ニコニコとイザベルを褒めてくれる。
「イザベル様かぁ。こりゃまた人気の出そうな聖妃様だ」
「だろう?」
「えへへ、ありがとうございます」
「今ルーローハンをお出しするのでちょいとお待ち下さいね」
ルーローハンが出てくる。イザベルが豪快に一口食べる。瞬間、パッと笑顔になった。
「おおー!美味しい!初めて食べましたけど、なんとなく本場の味感ありますね!」
「わかる。このルーローハン、めちゃくちゃ外国感あるよな」
「そりゃあ本場の人間が作ってますんでね」
「まあそうか」
「味がしっかり染みた玉子がまた美味しいです!」
イザベルがそう言うと、店主は吹き出した。
「ふはっ…聖妃様、すごく美味しそうに食べてくれますね!作った甲斐がある!」
「え、えへへ…」
「その玉子も結構こだわってるんですよ!褒めていただけて本当に嬉しいです!ありがとうございます!」
「こ、こちらこそです!」
「おい、俺の妻だぞ。少し馴れ馴れしいぞ」
ちょっとムッとする。なんか仲良くてムカつく。俺の妻だぞ、やらないぞ。
「おや、ヤキモチですか?聖妃様、愛されてますねー!」
「いえいえいえ…」
「自慢の妻だ。愛さないわけがない」
俺の孤独をわかってくれる、埋めてくれる、最愛の人だ。
「…ご馳走さま。今日も美味かった」
「ご馳走さまでした!美味しかったです!」
「まいどありー!」
イザベルの手を引いて、つぎのお店に行く。
「結構お腹いっぱいになったし、次はスイーツ系に行こうか」
「はい、ユルリッシュ様!」
「じゃあ、まずは生チョコから食べて行こうか」
「生チョコ!」
「美味しいお店があるからな。楽しみにしていてくれ」
チョコレート専門の屋台に行く。なんでも、チョコレートは魔法で冷やして溶けるのを防止しているらしい。屋台だから色々工夫しているようだ。
「いらっしゃいませ!あ、聖王猊下!横にいるのは聖妃様ですか?」
「ああ。俺の妻は可愛いだろう」
「ものすごく!初めまして、聖妃様!」
「初めまして、イザベルです。よろしくお願いします」
「タバサです、よろしくお願いします!」
優しい女性の店主は、イザベルとも相性が良いだろう。
「うちのイザベルにここの生チョコを食わせてやって欲しい。もちろん俺も食べる」
「はい、ではどうぞ」
早速生チョコを食べてみる。
「いただきます」
「いただきます!」
口に入れた瞬間、ふわっと溶けた。
「わあ…!美味しい!チョコレートと生クリームの香り、口溶け、全てが完璧ですね!」
「そうだな。クリーミーでコクがあり、すごく美味しい。甘過ぎずくど過ぎない絶妙な甘さも素晴らしいだろう?」
「はい!さすがユルリッシュ様のオススメのお店です!」
「照れますねー」
美味しかったけれど、その分パクパク食べてしまいすぐ無くなってしまった。
「お土産に持ち帰り用も包んでくれ」
「はーい」
「イザベル、明日の三時のおやつはこれにしよう」
「はい、ユルリッシュ様!」
そしてお持ち帰り用の生チョコも包んでもらって、屋台を後にする。
「次はあのケーキ屋のティラミスにしよう」
「ティラミス!」
「驚くほど美味しいぞ」
イザベルの手を引いて、ケーキ屋さんに来た。ここはマジックアイテムの『クーラーボックス』という物を使ってケーキを保存している。
「いらっしゃいませ、聖王猊下。いつものですか?」
「いや、今日はティラミスをくれ」
「いつもの?」
「聖王猊下はよくチーズテリーヌをよく召し上がられるのですよ」
「え、美味しそう」
イザベルの好みを考えるとティラミスがいいかと思っていたが、キラキラした目のイザベルに両方でもいいかと考え直す。
「…やっぱり両方くれ。二人分な」
「かしこまりました」
「ありがとうございます、ユルリッシュ様」
「我が最愛の妻のためだからな」
イザベルは俺の言葉に頬を染める。人前じゃなかったら存分に可愛がるのに。
「お待たせ致しました。ティラミスと、チーズテリーヌです」
「ありがとうございます、いただきます!」
「いただきます」
まずはティラミスから一口。イザベルの表情がすごく良い。気に入ったようでなによりだ。
「美味しい!チーズと生クリームがすごく濃厚ですね!」
「洋酒の香りがまた良いよな」
「最高ですね!今まで食べてきたティラミスと比べても歴代最高かも!」
「だろう?」
次はチーズテリーヌ。イザベルは美味しそうに食べてくれている。可愛い。
「美味しい!半熟トロトロで美味しいです!」
「使っている食材は全て聖都に隣接する村の契約農家から買っているらしいな」
「そうなんですか!?」
「はい、いずれもこだわりの食材です」
「すごい!だからこんなに美味しいんですね!」
イザベルの言葉に気を良くした店主。オススメメニューまで紹介し始める。
「もしよろしければ、ホットチョコレートもお出ししましょうか?美味しいですよ」
「え、飲みたいです!」
「なら、それも二人分頼む」
「はい、お待ち下さいね」
しばらく待つとホットチョコレートが出された。
「どうぞ」
「ありがとうございます!」
一口飲む。この香りがたまらない。
「…!香りがすごく良いです!とっても美味しい!」
「甘さもちょうどいいな」
ゆっくりと味わって飲んで、でもすぐに無くなってしまった。
「美味しかったです!ご馳走さまでした!」
「また来る」
「ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております」
イザベルを連れて、今度はプリンと杏仁豆腐の専門店に来た。
「プリンと杏仁豆腐…どっちもプルプルで甘いデザートですね!」
「ここのは本当にプルップルで味も最高だから、きっと気にいるぞ」
「わーい!」
「いらっしゃい。おお、聖王猊下ですか」
「よう。プリンと杏仁豆腐二人分くれ」
店主は俺と同年代の男性。すっと、プリンと杏仁豆腐を出してくれた。
「どうぞ」
「いただきます」
「ありがとうございます、いただきます!」
まずは杏仁豆腐から。ぱくりと一口食べて、イザベルがまた笑顔になった。
「プルップル!とろっとろ!これぞ杏仁豆腐って味ですね!」
「つるっといけるよな。甘いけど甘過ぎないのもいい」
「こんなに美味しい杏仁豆腐があるなんて、感動しました!」
「それは良かった」
次はプリン。一口食べれば、イザベルは蕩けそうな表情。
「こっちもプルプル!その上上品なお味ですね!」
「甘過ぎない味付け、プルプルな食感、最高に美味しいよな」
「大人向けのプリンですね!」
「じゃあ、イザベル。お腹いっぱいだし、そろそろ帰ろうか」
「はい、ユルリッシュ様」
イザベルと手を繋いで帰る。
「また今度、一緒に来よう」
「はい、ユルリッシュ様!」
「でも、今度は商店街巡りもいいかもな」
「商店街!」
「聖都の商店街は、色々売っていて面白いぞ」
商店街と聞いて嬉しそうなイザベルに、心から癒される。可愛い。
「楽しみです!」
「近いうちにまた誘うよ。イザベルと一緒に来るだけで、こんなに楽しいとは思わなかったからな」
「ふふ、私も楽しかったです!」
そうこうしているうちに、大聖堂についてしまった。デートもこれで終わり。でも、初めてのイザベルとのデートはものすごく幸せだった。
「今日は楽しかったな、イザベル」
夫婦の寝室で、二人でベッドに横たわってそんな話をする。
「すごく楽しかったです!ありがとうございます、ユルリッシュ様。ユルリッシュ様と一緒にいると、すごく楽しいことばかりです!」
「はは、それは良かった。俺も、イザベルと一緒にいると幸せだ」
…なんだか、イザベルがちょっと落ち着きがない?
「…どうした?イザベル」
「えっと…」
「なんだ、言ってみろ」
「…その、あんまりにもユルリッシュ様が優しいから、勘違いしてしまいそうというか」
「勘違い?」
なんのことだろうか。
「その、ユルリッシュ様に愛されてるのかなぁ…みたいな…」
「?イザベルは俺に愛されているだろう?」
なにを当たり前のことを言ってるんだ?
「博愛精神的な意味じゃなくて、あの…恋愛感情で」
「…だから、その意味で愛されているだろう?」
「え?」
まさか…わかってないのか?
「…?」
あ、わかってないな。よしわかった。
「…よし、イザベル。寝るのは少し後にしよう。少し話し合いが必要らしい」
にっこり笑って言う。なるべく優しく、わかりやすく伝える。
「あのな、イザベル。俺はイザベルが好きだぞ?」
イザベルの表情を見て、これは強引に伝えた方がいいかなぁとも思った。
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