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悪役令嬢に代わりをやってくれと乞われたので、全力で代わりになって差し上げましょう!
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ある日、転んで頭を打った。
気付いたら、悪役令嬢に憑依していた。
何を言っているかわからないと思うが安心して欲しい。
私もさっぱりわからない。
「…ということで、多分幽霊で貴女に憑依してしまったナミと申します」
「これはこれはご丁寧に…わたくし、侯爵家の娘のヴィクトリカと申します」
憑依先の女の子はすごくいい子だ。
悪役令嬢だと思えないほどに。
だが悪役令嬢だ。
というか、「悪役に仕立て上げられた」令嬢だ。
男爵家の娘がヴィクトリカちゃんの婚約者に手を出して、挙句ヴィクトリカちゃんに虐められたとあちこちで吹聴しているらしい。
もちろん冤罪だ。
「でもわたくし、悪役令嬢とか向いてなくて…」
「だろうね、そんな感じする」
「でも、わたくしむしろアナスタジア様を応援しているんです。婚約者のことは別にそんなに好きじゃないし、恋に真っ直ぐな女の子って、可愛いじゃないですか」
「その子は可愛いと思えないけど、まあそうだね」
「だから、どうせ憑依したんなら悪役令嬢の代役をお願いできませんか?」
とんでもないことを依頼された。
私は。
「おっけー!」
即答した。
その日からは私はヴィクトリカちゃんの身体でアナスタジアを虐めまくった。
教科書をビリビリに破いて捨てたり、魔術で本人を水浸しにしたり、すれ違い様突然肩タックルを決めたり、階段から突き落としたり、カバンの中に芋虫を入れたり…etc。
結果。
「嘘ついてごめんなさいぃー!もうしないから許してぇ!!!」
魔術でファイヤーボールを顔面に向けてぶつけた時に、土下座で謝られた。
なお顔面中火傷の跡がすごかったけれど、光魔術で治してあげたから今は痛くも痒くもないはずだ。
顔も可愛いまんまに戻ってる。
なのに泣きじゃくるから、お望み通りにしてあげたのに何が不満なのかわからなくて困惑する。
「いいよいいよ、大丈夫。気にしないで」
「あ、ありがとうございま…」
「これからも適度に虐めてあげるからさ」
「!??」
それからも私は、靴に画鋲を刺したり、通りすがりにお尻に蹴りを入れたり、熱々の紅茶を頭にぶっかけたり、雷魔術で軽く感電させたりと様々な虐めを行った。
結果、いつのまにか自称ヒロインは表舞台に出てこなくなった。
「あれぇ?やりすぎたかな」
「清々しいいじめっぷりでしたわ。ちょっと可哀想なくらい。でも、スカッとしました」
「ヴィクトリカちゃんがいいならいっか!」
「最高でした!」
「じゃあ次の標的に移るね」
次の標的?
と頭の中で首を傾げるヴィクトリカちゃんに、心の中で微笑む。
「婚約者さぁ、ヴィクトリカちゃんが虐めなんてしてないって言った時信じてくれなかったんでしょ?だから好きじゃなくなったって話だよね?」
「え、はい」
「仕返し、ちゃんとしよ?」
「え…いいんでしょうか…」
「いいのいいの」
そして私は、アナスタジアにやった虐めの大半を粗方ヴィクトリカちゃんの婚約者にもやった。
やはり奴も雷魔術で感電させた辺りで音を上げて、ヴィクトリカちゃんに一言詫びてから教会に出家して貴族社会からいなくなった。
ヴィクトリカちゃんの婿を新しく探さねばならないが、ヴィクトリカちゃんはとても真面目で女侯爵になるための勉強もしているので婿は本当に婿に来るだけでいい。
だからまあ、良い人も見繕えるだろう。
「ということで悪役令嬢代行サービス、どうだった?」
「おかげさまでとても楽しませていただきました」
「スカッとした?」
「かなり。さすがに一部同情もしましたけれど」
ヴィクトリカちゃんはすっきりした様子。
私もとてもすっきりした。
だが、タイムリミットらしい。
「ヴィクトリカちゃん、私誰かに呼ばれてる感じがするからもういくね」
「はい、刺激的な日々をありがとうございました」
「またいつかね」
「はい、またいつか」
そして私は、長い眠りから目を覚ました。
結果から言うと、私は半年ほど意識不明だったらしい。
だが目覚めたので、父も母も大変喜んでくれた。
あの不思議体験がただの夢なのか、そうでないのかは今となってはわからない。
ただ、楽しかったのだけは覚えている。
あんなに刺激的な日々は他にないだろう。
退屈な日々に刺激を求めていた私にあんな娯楽を提供してくれたヴィクトリカちゃんが幸せになってくれることを、切に願う。
幽霊に助けられた。
悪役令嬢と吹聴され、疲れ切っていたわたくし。
そんなわたくしに憑依した幽霊は、手加減なしで悪役令嬢を遂行して私を悪者に仕立て上げた子を返り討ちにしてくれた。
そして元婚約者にも同じことをしてお灸を据えてくれて、結果私は元婚約者と縁を切れた。
今は新たなご縁があって、別の男性と婚約している。
「…ということがわたくしの身に起きたことですわ。信じられます?」
「君の言うことなら信じるさ」
「…まあ、本当に?」
「なんたって愛する人の言葉だからね」
新たな婚約者は、わたくしに自らプロポーズしてくださった方で…このまま行けば恋愛結婚、ということになる。
「あの時の君はすごく苛烈だったから、何事かと思ったけど…そう言う事情だったんだね」
「はい」
「でもあの時の君も変わらず好きだったけれど。いつもずっと、目で追ってた」
「…て、照れますわ」
「照れる姿も可愛い」
いつもストレートに言葉をくれる婚約者。
そんな婚約者…レオナルド様がとても好きだ。
「レオ様、その」
「うん?なにかな」
「わたくし、そんな真っ直ぐに言葉をくれるレオ様が…とても、大好きです」
「!!!」
レオ様に抱きしめられる。
「え、え」
「君はどうしてそんなにも可愛いの!」
「そ、そんな風に言われると…わたくしどうしたらいいのか…」
「愛してる!本当に、その幽霊には感謝しかないな…」
「ふふ、そうですわね」
幽霊さん、聞こえていますか?
わたくし、貴女には本当に感謝していますの。
今のこの幸せは、すべて貴女のおかげですわ。
本当に、ありがとう。
ヴィクトリカちゃんの夢を久しぶりに見た。
婚約者とラブラブイチャイチャしていて、微笑ましかった。
このご利益で私にも恋人できないかな、なんてちょっと思うけれど。
とりあえず、幸せそうで何よりです。
気付いたら、悪役令嬢に憑依していた。
何を言っているかわからないと思うが安心して欲しい。
私もさっぱりわからない。
「…ということで、多分幽霊で貴女に憑依してしまったナミと申します」
「これはこれはご丁寧に…わたくし、侯爵家の娘のヴィクトリカと申します」
憑依先の女の子はすごくいい子だ。
悪役令嬢だと思えないほどに。
だが悪役令嬢だ。
というか、「悪役に仕立て上げられた」令嬢だ。
男爵家の娘がヴィクトリカちゃんの婚約者に手を出して、挙句ヴィクトリカちゃんに虐められたとあちこちで吹聴しているらしい。
もちろん冤罪だ。
「でもわたくし、悪役令嬢とか向いてなくて…」
「だろうね、そんな感じする」
「でも、わたくしむしろアナスタジア様を応援しているんです。婚約者のことは別にそんなに好きじゃないし、恋に真っ直ぐな女の子って、可愛いじゃないですか」
「その子は可愛いと思えないけど、まあそうだね」
「だから、どうせ憑依したんなら悪役令嬢の代役をお願いできませんか?」
とんでもないことを依頼された。
私は。
「おっけー!」
即答した。
その日からは私はヴィクトリカちゃんの身体でアナスタジアを虐めまくった。
教科書をビリビリに破いて捨てたり、魔術で本人を水浸しにしたり、すれ違い様突然肩タックルを決めたり、階段から突き落としたり、カバンの中に芋虫を入れたり…etc。
結果。
「嘘ついてごめんなさいぃー!もうしないから許してぇ!!!」
魔術でファイヤーボールを顔面に向けてぶつけた時に、土下座で謝られた。
なお顔面中火傷の跡がすごかったけれど、光魔術で治してあげたから今は痛くも痒くもないはずだ。
顔も可愛いまんまに戻ってる。
なのに泣きじゃくるから、お望み通りにしてあげたのに何が不満なのかわからなくて困惑する。
「いいよいいよ、大丈夫。気にしないで」
「あ、ありがとうございま…」
「これからも適度に虐めてあげるからさ」
「!??」
それからも私は、靴に画鋲を刺したり、通りすがりにお尻に蹴りを入れたり、熱々の紅茶を頭にぶっかけたり、雷魔術で軽く感電させたりと様々な虐めを行った。
結果、いつのまにか自称ヒロインは表舞台に出てこなくなった。
「あれぇ?やりすぎたかな」
「清々しいいじめっぷりでしたわ。ちょっと可哀想なくらい。でも、スカッとしました」
「ヴィクトリカちゃんがいいならいっか!」
「最高でした!」
「じゃあ次の標的に移るね」
次の標的?
と頭の中で首を傾げるヴィクトリカちゃんに、心の中で微笑む。
「婚約者さぁ、ヴィクトリカちゃんが虐めなんてしてないって言った時信じてくれなかったんでしょ?だから好きじゃなくなったって話だよね?」
「え、はい」
「仕返し、ちゃんとしよ?」
「え…いいんでしょうか…」
「いいのいいの」
そして私は、アナスタジアにやった虐めの大半を粗方ヴィクトリカちゃんの婚約者にもやった。
やはり奴も雷魔術で感電させた辺りで音を上げて、ヴィクトリカちゃんに一言詫びてから教会に出家して貴族社会からいなくなった。
ヴィクトリカちゃんの婿を新しく探さねばならないが、ヴィクトリカちゃんはとても真面目で女侯爵になるための勉強もしているので婿は本当に婿に来るだけでいい。
だからまあ、良い人も見繕えるだろう。
「ということで悪役令嬢代行サービス、どうだった?」
「おかげさまでとても楽しませていただきました」
「スカッとした?」
「かなり。さすがに一部同情もしましたけれど」
ヴィクトリカちゃんはすっきりした様子。
私もとてもすっきりした。
だが、タイムリミットらしい。
「ヴィクトリカちゃん、私誰かに呼ばれてる感じがするからもういくね」
「はい、刺激的な日々をありがとうございました」
「またいつかね」
「はい、またいつか」
そして私は、長い眠りから目を覚ました。
結果から言うと、私は半年ほど意識不明だったらしい。
だが目覚めたので、父も母も大変喜んでくれた。
あの不思議体験がただの夢なのか、そうでないのかは今となってはわからない。
ただ、楽しかったのだけは覚えている。
あんなに刺激的な日々は他にないだろう。
退屈な日々に刺激を求めていた私にあんな娯楽を提供してくれたヴィクトリカちゃんが幸せになってくれることを、切に願う。
幽霊に助けられた。
悪役令嬢と吹聴され、疲れ切っていたわたくし。
そんなわたくしに憑依した幽霊は、手加減なしで悪役令嬢を遂行して私を悪者に仕立て上げた子を返り討ちにしてくれた。
そして元婚約者にも同じことをしてお灸を据えてくれて、結果私は元婚約者と縁を切れた。
今は新たなご縁があって、別の男性と婚約している。
「…ということがわたくしの身に起きたことですわ。信じられます?」
「君の言うことなら信じるさ」
「…まあ、本当に?」
「なんたって愛する人の言葉だからね」
新たな婚約者は、わたくしに自らプロポーズしてくださった方で…このまま行けば恋愛結婚、ということになる。
「あの時の君はすごく苛烈だったから、何事かと思ったけど…そう言う事情だったんだね」
「はい」
「でもあの時の君も変わらず好きだったけれど。いつもずっと、目で追ってた」
「…て、照れますわ」
「照れる姿も可愛い」
いつもストレートに言葉をくれる婚約者。
そんな婚約者…レオナルド様がとても好きだ。
「レオ様、その」
「うん?なにかな」
「わたくし、そんな真っ直ぐに言葉をくれるレオ様が…とても、大好きです」
「!!!」
レオ様に抱きしめられる。
「え、え」
「君はどうしてそんなにも可愛いの!」
「そ、そんな風に言われると…わたくしどうしたらいいのか…」
「愛してる!本当に、その幽霊には感謝しかないな…」
「ふふ、そうですわね」
幽霊さん、聞こえていますか?
わたくし、貴女には本当に感謝していますの。
今のこの幸せは、すべて貴女のおかげですわ。
本当に、ありがとう。
ヴィクトリカちゃんの夢を久しぶりに見た。
婚約者とラブラブイチャイチャしていて、微笑ましかった。
このご利益で私にも恋人できないかな、なんてちょっと思うけれど。
とりあえず、幸せそうで何よりです。
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