異世界恋愛の短編集

下菊みこと

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悪役令嬢に転生したので、コツコツ周りからの好印象ゲットできるよう頑張ります

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〝聖女は明日の夢を見る〟

人気同人乙女ゲームだ。

その悪役令嬢、ミュウ。

彼女はまさしく悪役令嬢だった。

暴言、暴力、その他諸々を駆使して主人公を追い詰める悪役令嬢。

そんな彼女に、私は転生していた。

「…ばぶー!?(えー!?)」

ある日階段を踏み外して転げ落ちた私は、目を覚ますと赤ちゃんになっていた。

赤ちゃんの身体で、耳でなんとか情報収集をした結果上記の結論に至った。

私は今、悪役令嬢ミュウだ。

多分、転生したんだろう。

元のミュウの魂も感じない。

ならば、これからどうしていけば良いだろう。

「ばぶぅ…」

悪役令嬢にならずに済めば、もちろんそれが一番なのだが。

例え悪役令嬢に仕立て上げられても、なんとかできるよう努めるのも大事ではなかろうか。

家族や友人、婚約者や他の攻略対象と仲良くなりつつ、領民たちからの評価もあげつつ、ヒロインが登場したら優しくしつつ。

悪役令嬢に仕立て上げられた場合に備えてレベル上げもしておく。

うん、完璧。

だからそのためにも、赤ちゃんのうちは魔力の扱いをマスターするため〝体内での魔力循環〟の特訓をし続けよう。




























赤ちゃんの頃から体内での魔力循環を練習し続けてはや七年。

七歳になった私は喋れるようになり歩けるようになり、字も絵も書けるようになり、知識チートを見せつけて勉強は足りない知識や技能以外ほぼ免除され、特に魔術を重点的に教えてもらえるようになった。

「お嬢様は本当に天才でいらっしゃる。この歳でここまでの知識を持つとは…」

「お褒めいただき光栄ですわ」

魔術を身につけ、勉強をほぼ免除されているため暇な私は領民たちの元へ毎日通った。

そして教えてもらった祝福を与える魔術で、領民たちの健康を守り、家畜たちも健康を維持して、農作物たちも良品質なものが良く育つようにした。

そして農作物の収穫の時期には魔術を駆使して、本来重労働である収穫の作業を短時間で一気に終わらせることに貢献した。

結果領民たちからはもちろん感謝され崇拝され、両親と兄からも褒められてさらに大切にされるようになった。

「お嬢様はなんて慈悲深い!」

「お嬢様万歳!」

「お嬢様万歳!」

「ミュウ、最近のお前の評判はすごいな」

「わたくしは娘の貴女が誇らしいわ」

「さすが俺の自慢の妹だな」

「えへへ、ありがとうお兄様」

さらに魔術を使うのでレベル上げにもなる、一石二鳥。

これで家族と領民の懐柔はOK。

さらに、父と母から紹介された「お友達」…乙女ゲーム内での「取り巻き」たちにも色々した。

この取り巻きたちはいざ悪役令嬢リーフィアが断罪されると手のひらを返す奴らなので…なんとしてでも私に心酔させて信用できる人間に叩き直さなければいけない。

そこで私は「お友達」と遊んでいる最中にわざと怪我をした。

彼女たちは自分のせいでと焦る。

家族にまで責任が及ぶことを幼いながらに危惧しているのだ。

そんな「お友達」に私は微笑む。

「このくらい大丈夫よ。お父様とお母様にお咎め無しにしてもらえるようお願いするわ」

「ミュウ様…!」

「ありがとうございます、ミュウ様っ!」

「このご恩は忘れません!」

なんというマッチポンプ。

自分でわざと怪我をしておいて、それを咎めないと慈悲深く微笑んでみせるなんて。

だがそれに気付かない「お友達」たちは、私に心酔した眼差しを向けた。

それ以降は、貴族なのに貧しい生活を送る子には私のお小遣いの中から援助を、劣等感に苦しむ子にはその時々で欲しがっている優しい言葉を、家族の不仲に困っている子にはご家族の仲を私が直々に取り持って手助けを。

そんな風に必要なものを与え続けた。

最初の一撃で私に心酔してくれた彼女たちは、そんな私にさらに心酔した。

「ミュウ様は素晴らしいお方ですわ!」

「ミュウ様ほど素敵な方はいらっしゃらないわ!」

「ミュウ様は本当に至高のお方ですわ!」

これでもう、裏切られる心配はないだろう。

そして、婚約者とも仲良くした。

この婚約者は乙女ゲームでは傍若無人な〝ミュウ〟を嫌う設定だったが、優しく可愛らしく、淑女らしさはそのままにまるでヒロインのように振る舞っていたら私にゾッコンになった。

「ミュウ、君はどうしてそんなに優しいの」

「いやだわ、私はただしたいようにしているだけよ」

「ミュウ…なんて可愛い人なんだ!」

これで一安心。

とはいえゲームの強制力がある可能性も考えるとちょっと不安だけれど。

攻略対象たちも、全員幼馴染のような関係なので優しくしたら普通に友達として仲良くなった。

彼らとの関係はこの程度で十分。

さて、あとはヒロインだけど。

実はこちらにも接触してみた。

本来なら貴族の子女の通う学校に入学してから初めて会うはずなのだが、幼い今のうちに〝街に遊びに行く〟という口実で会いに行った。

そこでヒロインの反応を見てみたが、性悪転生ヒロイン…って雰囲気は一切なかった。

「初めまして、こんにちは。パンをいただけるかしら」

「いらっしゃいませ!どのパンにしますか?」

「…じゃあ、全部で」

「え」

「孤児院の子供達へのお土産なの」

「…あ、ありがとうございます!すごく助かります!!」

性悪転生ヒロインとかではなさそうなので、ヒロインのパン屋で私の領内の孤児院の子供たちに配るパンを大量に購入して少し援助…じゃないけど応援をしたら、ヒロインは甚く感動した様子で私に心酔してくれた。

ちょうど近くにもう一軒パン屋ができて、売り上げが下がって困っていたらしい。

そしてヒロインのパン屋で買ったパンを孤児院の子供たちに振る舞うと、孤児院の子供たちは相当美味しかったらしく私に懐いた。

「お嬢様、美味しいパンをありがとう!」

「お嬢様大好きー!」

「美味しい!本当に美味しいよ!」

「うふふ、みんないっぱい食べてね」

「はーい!」

またしても領内での評判が上がった。






























そしていざ、乙女ゲーム本編の学園生活が始まった。

私は知識チートがあるので学業は成績優秀、特に魔術などの実技科目はコツコツレベル上げをしてきた甲斐もありやはりもはや天才と呼ばれた。

そして学園生活の中で起こる様々なイベント…悪魔が目を覚ましてヒロインたちが討伐に向かったり、災害が発生して学園の生徒たちも救助に向かったりなども私が手伝えば瞬時に解決した。

そんな私に周りはますます心酔する。

ということで、私は見事に悪役令嬢ルートを回避して完璧令嬢ルートに入ったのだ!!!

そして学園の卒業式。

私は悪役令嬢という役目を果たさないまま、貴族学園を卒業した。

結果ヒロインは攻略対象と結ばれることはなく、魔法省に務めることが決まってその勤め先で見事イケメンをゲットしていた。

攻略対象者たちは全員、今では婚約者とラブラブだ。

学園に入学後、ヒロインが攻略対象者たちに興味なさそうなのを見てから私が色々助言した結果である。

そして私と婚約者。

こちらももちろんラブラブだ。

優しくて可愛い女の子の振る舞いをするのは正直少しだけ疲れる日もあるが、ロールプレイと思えば楽しい。

「ミュウ、そろそろ僕たちも結婚だね」

「そうね、アシル」

そう、ここまできた。

そろそろ私たちは結婚だ。

「楽しみだな」

「そうね、楽しみだわ」

前世ではあんまり良いことがなかった私。

でもここではお友達に囲まれて、家族から愛されて、領民たちから慕われて、そして婚約者から愛されている。

これ以上なく、幸せ。

「ねえ、アシル」

「うん?」

「幸せにしてくれて、ありがとう」

これは本心。

前世では幸せな人生は送れなくて、今世は悪役令嬢という役目を背負った子に生まれてしまった私にとって…愛してくれる人というのは非常に信頼できるし、安心できるし、その存在自体が幸福だ。

「…ミュウ、なんで君はそんなにも可愛いの」

ぎゅうぎゅうと抱きしめられる。

私はその逞しい腕の中で、ただ幸せを感じていた。
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