異世界恋愛の短編集

下菊みこと

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前世の記憶を断罪後に思い出した悪役令嬢ですが、むしろ結果オーライじゃない?と思い始めました。(4/3 結末追加)

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わたくしはリーシュ。

この乙女ゲームの世界の悪役令嬢だ。

わたくしは今の今まで公爵家で生まれ育ち甘やかされてきた。

けれど愛情をかけてもらっていたわけではなく、家族仲は冷たかった。

そんなわたくしは高飛車で傲慢で最悪な性格に育ち、やがて貴族の子女の通う学園で聖女である平民の少女を虐めた。

結果国を守る聖女を害した罪で婚約者だった王太子殿下からこちらの有責で婚約破棄された。

婚約破棄に際して、わたくしの私財全てを投じて賠償をした。

結果的に実家の公爵家の懐は痛まなかったのは良かったが、醜聞は広がってしまったしわたくしは無一文になった。

家族にはそのことで見限られ、貴族籍は奪われなかったものの分籍して勘当された。

その際に父の持て余していた伯爵位を継がせてくれたのと領地とは名ばかりの僻地の砂漠を与えられたのは温情なのか、なんなのか…。

そこまで来て、絶望して自害を図って失敗した時にようやく前世の記憶を思い出した。

地球という世界の日本という国で幸せに生きて死んだ、女の子の記憶。

最後は孫に看取られて幸せに死んだおばあちゃんになっていた。

それを思い出して、吹っ切れた。

「むしろ結果オーライじゃない?いくらわたくしの性格が最悪とはいえ、他の女…それも聖女に手を出して恋仲になる王太子なんて願い下げよ!虐めはどんな理由があれ良くないけれど、他に婚約者がいる男に手を出した聖女に制裁を下す権利くらい浮気された女にはあるはずだわ!まあいじめに関しては、いつか罪滅ぼしはするけれど…それだけよ。わたくしを見捨てた家族は…まあ迷惑をかけてしまったから仕方がないわね。あとで罪滅ぼしできるよう頑張りましょう」

ということで、新生したわたくし、頑張りますわ!

まずは無一文で領地とは名ばかりの土地だけを持つこの現状をなんとかしなければ。

であれば。

「悪役令嬢リーシュは潜在魔力量が聖女に匹敵するほど多い…これを使わない手はないわ」

わたくしは現在持つ魔力の全てを消費した。

この後魔力が完全回復するまでは二十四時間…一日必要になるけれど、まあ大丈夫。

わたくしが魔力の全てを消費して何をしたかといえば、砂漠の地質改善。

この国における普通の土地と変わらない地質にした。

これで開墾もできるし家や商店などの建物も建てられる。

まあ、今日はここまでね。

「さて、ガチで無一文だから食べるものも何もないわね。寝ましょう」

わたくしは元砂漠だったわたくしの新しい土地の真ん中で、大の字になって寝た。















目が覚めたら魔力が完全回復していた。

どうやら一日中寝ていたらしい。

疲れてたからな…。

さて、魔力が完全回復しているなら話が早い。

魔力をまた全て消費して、居住区とすると決めた場所にある程度建物を建てて家具や食器や衣服も用意して、それ以外の土地を開墾して色々な植物を育てた。

これを全部魔法でやったので魔力はまた底を尽きて明日まで何もできないが、まあこれでいい。

「わたくしのための立派なお屋敷も作れましたし、これで万全ですわね!」

居住区に建てたお屋敷には、水道を水魔法で通してあるし家具や食器やドレス、それから保存食も用意されているので生活には困らない。

いやぁ、魔術って便利。

ちなみにこの世界における魔術は魔力とイメージが全てで、イメージできることで魔力が足りていればなんでもありだ。

ただし貴族の血筋の者しか魔力を発現しないが。

そして貴族は、極力魔力を使わずに領地を発展させることこそ美徳という変な価値観を持っている。

わたくしには知ったこっちゃないが、ここまで魔力をフル活用して領地を盛り上げたわたくしは後で陰でこそこそ言われるだろう。

ということで今日は保存食を食べて水道水を飲んでやり過ごした。

お風呂に入って、一人でも工夫すればなんとか着れるデザインのシンプルな寝巻きを着て寝た。

さて、忙しくなるのは明日からだ。















魔力が完全回復するには二十四時間が必要だ。

そしてわたくしは今日も二十四時間ぐっすり寝ていたらしい。

魔力がまた完全回復している。

現在昼の十二時。

もう魔力をフル活用する予定はないので、お昼ご飯は優雅に魔術で用意したフルコースのお料理と紅茶にした。

最高だった。

さて、お膳立ては昨日までで済んだしそろそろ行動しなければ。

魔術でお風呂に入り、魔術で豪華なドレスに着替え、ドレスで装飾品も用意して身に着けて、わたくしは外に出た。

すると、予想外のことが起こった。

元々わたくしは、貧民街に行って領民になってくれる人を募集しようとしていたのだが。

屋敷から出ると、明らかに貧民街から出て来たであろうぼろぼろの人たちが屋敷の周りに集まっていた。

そして目の前で土下座した。

「えっえっえっ…」

「ご事情はお伺いしています、お嬢様!」

「お嬢様が追放された理由も、お嬢様がたった数日で魔力をフル活用して領地をここまで育てたのも!」

「あ、あらそう…」

耳が早い…まあいいけれど。

それだけわたくしがしたこと…聖女へのいじめや、砂漠を一大都市…とまではいかなくとも立派な村にしたことはセンセーショナルなことだったのだ。

「たしかにお嬢様のしたことは悪いことだが、心を入れ替えてここまで領地を発展させたお嬢様はすごい!」

「ええ、ありがとう」

「お嬢様、どうか我々をお嬢様の領民にしてください!」

「え、いいの?一度罪人として裁かれたわたくしの領民になってくださるの?」

「もちろんです!住む者のいないこの土地を、俺たちに守らせてください!」

これはありがたい。

あちらから来てくれるとは。

それならば。

「ええ、みんなよろしくね」

「はい!」

こうしてわたくしは、領民も難なく手に入れた。

とりあえず全員に居住区に建てた家を与えて、お風呂に入らせて着ていた服は捨てさせて新たな服を与えて清潔にさせた。

そして全員分のご飯を魔術で与えてやれば、彼らの私への忠誠心は一日目にしてマックスとなった。

そしてアフターケアとして、彼らにしばらく分の保存食も魔術で作って配った。

ちなみにわたくしが魔術で作った保存食は当然、わたくしのイメージを元に作られているので普通に美味しい。

一般的な不味い保存食とは違う。

なのでみんな大変に喜んだ。

これで彼らもわたくしもしばらく衣食住には困らない。

ということで安心して生活できる。

そしてわたくしはまだまだ残っている魔力の半分を駆使して魔術で作った適当な宝石類をちょうど通りかかった旅の商人に売った。

結果領地経営に必要な費用やわたくしが暮らしていくのに必要な費用、村の領民たちがそれぞれ商売やら農業やら色々始めるのに必要な初期費用も稼げた。

領民たちのための初期費用はもちろん彼らに渡す。

彼らはそれを駆使して、商売を始めたり開墾しておいた土地で農業を始めたり、酪農を始めたり、わたくしのお屋敷でメイドや執事として働いたり、色々な形で生活を始めた。

全て優秀で忠誠心溢れる領民たちが頑張ってくれることになったので、わたくしはあとはこの地を治る伯爵として書類仕事をするだけとなった。

僻地の砂漠だったこの土地は、半年後には一大都市にまでなっていた。

税金も出来る限り最大限少ない金額に設定したのに、がっぽり入ってくる。

わたくしはその税金を余らせていた。

領地経営にも、わたくしの生活にも、将来に備えての貯蓄分にも、国への税金分にも、お金はすでに充分。

なので余らせていたお金を以前迷惑をかけた「元家族」に返した。

育ててくれたお礼と迷惑をかけたお詫びだと言えば受け取られた。

まあ、元々お金持ちの実家だったから端金かもしれないけれど。

それと、聖女にも「元家族」に返したのと同じだけの金額を贈った。

虐めなんてして迷惑をかけたお詫びだと。

彼女は戸惑いつつも、仲直り出来て嬉しいですと世迷言を言って受け取った。

それと、王太子の婚約者としてわたくしを教育してくれていた王家にも改めて「元家族」に返したのと同じだけの金額を献上した。

王妃殿下はそんなわたくしに複雑な目を向けたが、知らない。

これで義理は果たした。

あとは本気で自由だー!

「元家族」に返したのと同じだけの金額が、まだ余りとして手元にある。

ということで。

爵位を売ってでも生活費を稼ぐ必要がある貴族から子爵位を買って、その爵位をわたくしの執事として常にそばにいる男…ルイに継がせた。

「お嬢様、あの、何故俺なんかにこんな…」

「ルイ、わたくしと婚約しない?」

「え!?」

「わたくしほら、いくらわたくしの性格の悪さと素行の悪さが原因とは言え…婚約者に裏切られた形になったでしょう?原因はわたくしよ?でも男性不信にもなるわよ…」

「あー…それで、何故私なのです?」

ルイの目を真っ直ぐに見て告げる。

「ルイなら、裏切らない。この半年でそう確信したからよ。もう爵位も受け取ってしまったのだし、大人しくわたくしのものになりなさい」

「…ふふっ、仕方のない方だ」

ルイはわたくしに跪く。

「永遠の忠誠と、愛を貴女に捧げます」

「わたくしも、貴方の献身に応え…貴方を愛するわ」

こうしてわたくしは、悪役令嬢断罪ルートの後に幸せを手に入れた。

なおその後、わたくしは前世の記憶を頼りに魔術を駆使して魔道具として「冷蔵庫」「洗濯機」「洗剤」「柔軟剤」「食洗機」「食器用洗剤」「自動掃除機」などを開発。

魔術はイメージと魔力が全てなので、具体的な構造なんぞもちろん覚えてなかったがなんとなくこんな道具!というイメージのおかげでなんとか形になった。

そして持てる魔力を総動員して量産した。

量産したから大丈夫と言って、我が村の商人に庶民向けに安く売らせた。

結果薄利多売で大儲け。

今回の収入はもう実家にも聖女にも王家にも渡さない。

だって義理はこの間果たしたもの!

でも領地経営にも、わたくしの生活にも、将来に備えての貯蓄分にも、国への税金分にも、お金はすでに充分。

領地経営だってきちんとやってるし、領民たちは真面目だから勤勉に働いてくれていて、もう私が手を貸さずとも村はうまく回っている。

ならばわたくしのすべきことは一つ!

「全員揃って見返してやりますわー!」

わたくしは王都にいる王族や貴族連中に、わたくしがどれだけ成功したか見せつけに行った。

正式に伯爵として招待されたパーティーで、わたくしはルイを連れ回す。

陰でこそこそ魔力を使うなんてとか言ってた奴らも、わたくしの派手だが品のある高級なドレス、装飾品、そして隣に侍らせる我が婚約者ルイの見目麗しさに度肝を抜かれていた。

ルイは絶世の美男子だから。

ルイにももちろんばっちりお金をかけておしゃれさせたから、その輝きはますます光る。

聖女は悔しそうに歯噛みしてこちらを見ていたし、王太子殿下はそんな聖女を見て傷ついた顔をした。

国王陛下と王妃殿下の反応は逃がした魚は大きい…という様子。

実家の家族はどこかほっとした顔をしていた。

何故かは知らない。

ということで、わたくしが羨ましくて羨ましくて仕方がない貴族連中からのやっかみは受けたが全力で見返してやった。

わたくしの完全勝利!

その後貴族内での価値観は大きく変わったらしく、領地や領民たちのために魔術を扱うことこそ美徳とされるようになった。

そのため我が国は他国より豊かになり、貧民や棄民とされる人々にまで社会から救いの手が差し伸べられる国となった。

豊かさから社会保障制度も充実し始め、国民の健康と幸福が重視されるようになり、「最も幸せな国」とまで呼ばれるようになった。

わたくしはいつからか、そんな国を導いた「第二の聖女」と呼ばれるようになり…ルイは、そんなわたくしをいつでも守ってくれている。

わたくしは今、とっても幸せだわ。

まさに幸せになることこそ復讐、ね?
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