異世界恋愛の短編集

下菊みこと

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世界の滅亡の危機に際して準備が良すぎるお嬢さんのお話

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俺の婚約者は変わり者である。

俺、現在五歳。

婚約者、現在三歳。

なのに婚約者は、俺ですら魔力操作に苦戦しているのにもう魔力操作をマスターしている。

彼女曰く、世界の危機に備えてらしい。

女の子らしい夢物語だ。

世界を救う聖者様ごっこだろう。

だから俺は、そんな彼女に付き合った。

そしたら大変なことがわかった。

彼女の魔力操作の上達方法は、命懸けのものだった。

一歩間違えれば魔力で自分の体が吹き飛ぶ訓練。

そりゃあ上達するわけだ。

だが俺は、そんな彼女を止めるどころか一緒に訓練を開始した。

大人には内緒だ。

幼さからくる慢心や、物語の勇者への憧れもあったと思う。

そして俺と彼女は、俺が七歳彼女が五歳になる頃には魔力操作が完璧どころか、防御魔術と攻撃魔術のエキスパートとなった。

両親や彼女の両親は揃って喜んだ。

もちろん魔力操作や魔術を隠れて学んでいただけではない。

勉強もした。

彼女は三歳の頃から、何故だか貴族学園の卒業生レベルの知識を持ち合わせていた。

俺は隠れて彼女に勉強を教わっていた。

何故隠れてかと言えば、プライドが邪魔したのだ。

年下の女の子に頼るなんて恥ずかしい…だが、婚約者はそんな俺の心すら見透かしていた。

恥ずかしいことなど何もない、だって貴方はこの国の王子様で、民を将来導くためにお勉強するのだからと言ってくれた。

俺はその言葉でやる気が出て、俺が七歳彼女が五歳になる頃には彼女と同じだけの知識をインプットできた。

彼女曰く、幼いうちは覚えがいいからインプットもしやすく理解さえしていれば忘れることもそうそうないらしい。

ということで俺たちカップルは、俺が七歳彼女が五歳にして最強の天才カップルとなった。

両親や彼女の両親に俺たちの真の実力を示したのは、ちょうど彼女の誕生日の次の日。

両家の家族は大変喜んだ。

そして俺たちは、幼いうちは勉強を免除されることになった。

というより、勉強しないといけないことがなかったので自由になったのだ。

さて、自由になった五歳の彼女は大胆な行動に出た。

俺と二人で、こっそり冒険者としてクエストをこなすようになったのだ。

それも、SSSランクのクエストばかり。

つまり、邪竜討伐や邪神討伐の依頼…ということだ。

まあ俺も彼女も強いので、タッグを組めばどの依頼も楽勝だったのだが。

両家の家族にはもちろんすぐバレて反対されたが、力があるのは証明済みだし困っている民を助けたいと彼女が泣けば許された。

俺は冒険者業が楽しかったから続けたが、なぜそんなことを彼女がするのか…困っている民を助けたいというのが本音なのはわかるが、別の目的もあると踏んで彼女に尋ねた。

彼女曰く、彼女が十六歳になる頃魔神復活が果たされるらしい。

それを再び封印するには、魔神と戦って弱らせたところに封印の呪具を使う必要がある…らしい。

封印の呪具を作るアイテムを集めるついでに、クエストをクリアして人助けもする…つまり全部世界のため、人々のためだと。

彼女の夢物語はまだまだ続くらしいと、俺は笑って彼女に付き合った。

そして俺が十八歳、彼女が十六歳になる頃、彼女はようやく全てのアイテムを集め封印の呪具を伝説の錬金術師に作らせた。

驚くべきことに、放浪の伝説の錬金術師の居場所を彼女は把握していた。

そして、本当に封印の呪具というものは存在して彼女の集めたアイテムで錬成された。

そしてその直後、魔神復活が成された。

俺は彼女と共に魔神の元へ行き、復活したばかりでまだ悪いことを成せていなかった魔神を封印した。

結果的に言えば、楽勝だった。

ついでに魔神の配下の魔族も根絶やしにした。

これで今後千年は大丈夫だろうと婚約者は笑った。

何故ここまで的確に動けたのか、準備が良すぎると彼女に言えば…彼女は笑った。

彼女には、この世界とよく似た世界の物語を読んだという前世の記憶があるらしい。

その話では、魔神が復活してからヒロインとやらが封印の呪具を作り魔神を封じるまでの間にたくさんの人が死ぬのだとか。

だから未然に防ぎたかったのだと。

本当は、彼女こそが聖女なのかもしれないと思った。














国に帰ると、大変なことになっていた。

聖女が現れていたらしい、これは婚約者にも聞いていたことなので問題ない。

問題は、聖女が贅沢三昧で男癖が悪いこと。

世界を救う聖女なのだからと彼女はちやほやされ、甘やかされ、男を侍らせていた。

婚約者は、もしかしたら彼女も婚約者と同じように前世の記憶を持つのかもしれないと言った。

なるほど、納得だ。

聖女に悪い記憶があるからそっちに人格を引っ張られたというなら納得だ。

ところが俺と婚約者が魔神を封印した証…魔神の角を持って国に戻ったら聖女は今までのわがままを糾弾された。

聖女は婚約者を罵ったが、婚約者はそんな聖女を憐んでいた。

なんて優しい子だろうか。

こんな国を乱す悪女にすら同情する辺り、優しすぎる。

そして聖女は大人の話し合いの元、結果的に教会の奥に療養と称して閉じ込められ、国のために祈りを捧げる毎日を強要されることになったらしい。

その後も俺は変わらず婚約者と仲良く過ごしている。

この幸せが壊れないように、俺は良い男で居続けようと誓った。













わたくしは、二度目の人生を送っている。

一度目の人生で、わたくしは悪役令嬢というものだった。

誰にも愛されず、我儘放題で、この世界のヒロインだという聖女も虐めた。

結果一度目の人生では、聖女をいじめた罪で処刑された。

わたくしはただ、誰にでも愛されるあの女が羨ましかっただけなのに。

処刑される直前、あの女は語った。

この世界が物語の世界だということ、魔神復活に際して彼女が世界の防御システムに聖女として選ばれたこと。

そんな「彼女」の身体にこの男好きな女が「憑依」したこと。

そんなの処刑されるわたくしにはどうでもよかったが、なんとなくその話には聞き入ってしまった。

この世界を救うには魔神の封印の呪具を作る必要がある。

必要なアイテムはあれとこれとそれ…と聞いてもないのに彼女は語った。

わたくしはそれを覚える気はなかったが、記憶力が良すぎるせいで一度で覚えてしまった。

これは昔からの悪癖。

そしてその後、わたくしは一度目の人生を終えた。

と思ったら、三歳の頃に戻っていた。

…わたくしは、これをあの「いけ好かない女」をざまぁするチャンスだと思った。

婚約者、五歳。

わたくし、三歳。

その頃にわたくしは彼の目の前で魔力操作を完璧にして見せた。

世界の危機に備えて、と言えば彼は微笑ましそうにわたくしを見た。

まあ、さもありなん。

世界を救う聖者様ごっこだと思われているのだろう。

そして人の良い彼は、そんなわたくしに付き合った。

命懸けの魔力操作の上達訓練に。

一歩間違えれば魔力で自分の体が吹き飛ぶ訓練。

でも彼はわたくしに付き合った。

大人には内緒で。

幼さからくる慢心や、物語の勇者への憧れもあったのだろう。

そしてわたくしたちは、彼が七歳わたくしが五歳になる頃には防御魔術と攻撃魔術のエキスパートとなった。

両親や国王陛下、王妃殿下は揃って喜んだ。

もちろん魔力操作や魔術を隠れて学んでいただけではない。

勉強も彼に課した。

わたくしは三歳の頃から、前回の人生の記憶のおかげで貴族学園の卒業生レベルの知識を持ち合わせていた。

わたくしは婚約者である第一王子に隠れて勉強を教えた。

何故隠れてかと言えば、彼のプライドを慮ってだ。

年下の女の子に頼るなんて恥ずかしい…そう思うだろうとわかっていたから。

わたくしはそんな彼に、恥ずかしいことなど何もない、だって貴方はこの国の王子様で、民を将来導くためにお勉強するのだからと言って励ました。

結果彼はその言葉でやる気が出て、彼が七歳わたくしが五歳になる頃にはわたくしと同じだけの知識をインプットできた。

幼いうちは覚えがいいからインプットもしやすく、理解さえしていれば忘れることもそうそうない。

ということでわたくしたちカップルは、彼が七歳わたくしが五歳にして最強の天才カップルとなった。

両親や国王陛下、王妃殿下にわたくしたちの真の実力を示したのは、ちょうどわたくしの誕生日の次の日。

両家の家族は大変喜んだ。

そしてわたくしたちは、幼いうちは勉強を免除されることになった。

というより、勉強しないといけないことがなかったので自由になった。

これでお膳立てはできた。

さて、自由になったわたくし五歳は大胆な行動に出た。

婚約者と二人で、こっそり冒険者としてクエストをこなすようになったのだ。

それも、SSSランクのクエストばかり。

つまり、邪竜討伐や邪神討伐の依頼…ということだ。

わたくしはもちろんわたくしの育てた彼も強いので、タッグを組めばどの依頼も楽勝だった。

両家の家族にはもちろんすぐバレて反対されたが、力があるのは証明済みだし困っている民を助けたいとわたくしが泣けば許された。

困っている民を助けたい…なんて別に思っていない。

全てはあのいけ好かない聖女を貶めるため。

そのために、封印の呪具を早く作る必要がある。

つまり全ては、わたくしのため。

そして婚約者が十八歳、わたくしが十六歳になる頃、わたくしはようやく全てのアイテムを集め封印の呪具を伝説の錬金術師に作らせた。

放浪の伝説の錬金術師の居場所をわたくしは前回の人生での聖女との会話で把握していた。

そして封印の呪具をわたくしの集めたアイテムで錬成させた。

そしてその直後、魔神復活が成された。

わたくしは婚約者に助けを求め、魔神の元へ行き、復活したばかりでまだ悪いことを成せていなかった魔神を封印した。

結果的に言えば、楽勝だった。

ついでに魔神の配下の魔族も根絶やしにした。

これで今後千年は大丈夫だろう。

あの聖女の言うことが本当ならば。

何故ここまで的確に動けたのか、準備が良すぎると彼が私に問う。

わたくしは笑った。

笑って、嘘をついた。

わたくしには、この世界とよく似た世界の物語を読んだという前世の記憶がある、と。

何故嘘をついたかと言えば、わざわざ前世の悪行を口にしてイメージを落とす必要もないから。

前回人生で聖女はこの婚約者を籠絡して喜んでいた。

だから今回の人生では、わたくしがこの世界を救い、わたくしがこの婚約者を取り戻す。

そうして初めて、あの聖女を「貶める」という目的が果たされるのだ。
















国に帰ると、やはり大変なことになっていた。

聖女が現れていたらしい、これは前と同じなので問題ない。

聖女が贅沢三昧で男癖が悪いのもそのままだ。

元婚約者をチラッと見る。

前回の人生では、彼も「コレ」に引っかかっていたのよね…聖女の魅了の効果らしいけど。

世界を救う聖女なのだからと「アレ」はちやほやされ、甘やかされ、男を侍らせていた。

わたくしはあの女のことを、もしかしたら彼女もわたくしと同じように前世の記憶を持つのかもしれないと言った。

彼はそれを納得顔で聞いていた。

そんな彼に聖女は擦り寄ろうとしたが、彼は先に行動に出た。

婚約者がわたくしと共に魔神を封印した証…魔神の角を教会の聖王猊下に捧げれば、聖女は今までのわがままを糾弾された。

聖女は先に世界を救済したわたくしを原作改変なんて狡いと罵ったが、わたくしはそんな聖女を頭がおかしくなったのねと心底憐んだ…演技をした。

そうしたら余計にキレる聖女。

愉快愉快、そう言う反応大好物よ。

そしてあの阿婆擦れ聖女は大人の話し合いの元、結果的に教会の奥に療養と称して閉じ込められ、国のために祈りを捧げる毎日を強要されることになったらしい。

その後もわたくしは変わらず婚約者と仲良く過ごしている。

前回の人生では嫌われていたし、こんな穏やかな関係ではなかった。

けれど今回の人生では、それなりに愛着を感じるくらいには仲良くなった。

あの女への当てつけの為とはいえ、彼とのこの関係も悪くはない。

この幸せが壊れないように、わたくしは今後も良い子のフリを続けようと思う。

あと、婚約者が浮気をしないよう見張りもきっちりしなければ。
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