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断罪後の王子様の罪滅ぼしのお話
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俺は一国の王子だった。
美しい婚約者がいた。
なにをやらせても完璧な女だった。
俺はその女が気に入らなかった。
完璧すぎるから。
「それがそもそもの、間違いだった」
美しいのは、俺を好きでいてくれて…俺に好かれたいとおしゃれしてくれていたから。
なにをやらせても完璧なのは、努力していたから。
彼女はこんなどうしようもない俺を心から慕ってくれていた。
なのに俺は彼女を冷遇した。
そして俺は…こともあろうに、平民出身の聖女と恋に落ちた。
「いや、恋に落ちたのではなく籠絡されたのだ」
平民出身の聖女は、可憐な女だった。
だが可憐な顔の裏で恐ろしいことをしていた。
俺の婚約者に虐められていると「偽証」したのだ。
俺はそれにまんまと騙されて、公衆の面前で婚約者を断罪して婚約破棄した。
だが、俺の弟…優秀で俺より先に生まれていればと惜しまれるほどの男だったのだが、奴が「偽証」の証拠を持って颯爽と現れた。
「そして俺と聖女は、逆に男に断罪された」
結果俺は廃嫡され、爵位ももらえず僻地の地方領主となることが決まった。
もちろん監視付きだ。
聖女は教会の奥に幽閉された。
国のために一生を捧げることを【制約魔法】によって定められて。
婚約者…いや、元婚約者はまだ婚約の決まっていない弟と再婚約した。
「弟はきっと、この時のためにわがままを言って婚約者を作らなかったのだろう」
あの男はきっと、俺がいつかやらかすのをわかっていたのだろう。
実際そうなった。
さて、俺は今から地方の領地に行く。
爵位はなく、私財も元婚約者への賠償金でほぼ底を尽きており、持っているのは与えられた地方の領地とそこにある屋敷とその設備だけ。
あと…元婚約者から贈られた、魔力回復薬二本と治癒薬三本。
「なぜ彼女は、これを俺に最後になってくれたんだろう」
答えは、領地に着いたらわかった。
領地に着いて馬車を降りたら、ぼろぼろの姿の領民たちに土下座で出迎えられた。
何事かと思ったが、どうやらこの領地は今大変なことになっているらしい。
【魔獣の大量発生】
村の狩人も、怪我をして動けないらしい。
人喰いの魔獣は幸いいないが、それでも獣害は発生する。
食うつもりはなくとも攻撃してくる魔獣は多く、領民たちはみんな怪我だらけだ。
前の領主はなにもしてくれなかったのだと皆嘆く。
だから、新しい領主である俺だけが頼りらしい。
「…」
元婚約者のくれた魔力回復薬と治癒薬を見つめる。
これがあれば、怪我をしても即死しなければ死なないだろう。
使い果たした魔力が完全回復する薬と、四肢の欠損ですら癒す万能薬。
ならば。
「俺が魔獣を討伐してこよう」
領民たちが騒めく。
そんな領民たちに、俺は元王族だから魔術を使えることを伝えた。
そして魔獣は死んだのを確認してから村の広場に転移させるので、血抜きなどの処理をして肉を保存して、他の皮や牙などの素材も別途保存してほしいと伝えた。
それらは全て、商人ギルドに売るとも伝えた。
そしてそれで得たお金を、みんなで分け合おうと約束もした。
「さて、魔獣退治だ」
剣術や魔術は習得している。
元婚約者にやれと口うるさく言われていたから、いやでも習得してしまった。
とはいえ実戦経験はない。
それでもやるしかないのだ。
「…っ」
村近辺の森に入る。
一歩足を踏み入れただけで、まるで異世界のような感覚。
魔力探知の魔術で魔獣を探すと、あちこちにウジャウジャいた。
それを一匹一匹、命懸けで確実に仕留めていく。
当然怪我をした、腹に風穴が空いたり、手足が吹っ飛んだりした。
「…はぁっ、はぁっ」
それでもその度に、彼女にもらった治癒薬を少しずつ飲んで身体を回復させては魔獣を狩る。
気付けば領地に来て【二度目の】朝を迎えて、三本もあった治癒薬は底を尽きていた。
幸い、魔力回復薬はまだかろうじてあと一口分残っているが。
「さて」
残っていた魔力を使い、魔力探知の魔術を使う。
領地の近くには、魔獣は確認できない。
「はは、ははは!やった!やってやったぞ!」
彼女のおかげだ。
元婚約者に、助けられた。
…胸が痛むのは、今更だ。
村に戻ると、みんなが大量の保存した肉と素材たちと一緒に待っていてくれた。
俺は最後に残った一口分の魔力回復薬を飲んで、領民たちを治癒した。
動けなくなった狩人ももちろん治癒した。
そしてその狩人の伝手で、商人ギルドに肉や素材を適正価格で売った。
そして領民たちと魔獣討伐で得た金品を分け合った。
「みんな、心から感謝してくれたな」
結果領民たちは、地方の村人とは思えないほどの大金持ちとなった。
だが彼らは生活スタイルを大きくは変えず、贅沢は程々にして、勤勉に働く。
俺もただの地方の領主にしてはかなりの大金持ちとなったが、生活に必要なお金と将来に向けての貯蓄と、領地経営に必要なお金と税金を国に払う分を残して…あとは全部国に寄付した。
両親にも弟にも、弟の婚約者となった彼女にも迷惑をかけすぎたから。
お詫びのつもりだった。
「俺に男爵位を叙爵する?」
「はい」
どうしてそうなったのかといえば、魔獣討伐で国の安寧に貢献し、国に寄付までしたからだという。
父上と母上…いや、国王陛下と王妃殿下の親心だろうか、しかし俺はそれを固辞した。
俺は爵位も持たない、ただの地方領主でいい。
その方が、また勘違いして増長することもないだろう。
そうすると、叙爵する代わりに魔獣討伐の恩賞として欲しいものはないかと聞かれた。
「なら俺は…欲しい女がいます」
俺は、女を欲した。
俺が欲した女は、聖女リリス。
俺の元婚約者を「偽証」で「悪役令嬢」に仕立て上げた悪女だ。
そして、国のために祈り続けることを【制約魔法】によって義務付けられた哀れな聖女でもある。
彼女は俺のところに来てからも毎日のように国のために一日の大半祈り続け、祈りが終わると泣き暮らす。
俺はそんな彼女を献身的に支えた。
「大丈夫だ、リリス。贅沢はさせてやれないが、俺がお前を守るよ」
「どうして…」
「同じ【罪を背負った者】同士だからだよ。一緒に立ち直ろう。それまで支えるから」
「アダムさまぁっ…」
…そう言えば、聖女が来てから久々に人に名前を呼んでもらえた気がする。
それが嬉しくて、俺は彼女の額にキスをした。
泣き暮らすだけだったリリスは、やがて泣かなくなった。
一日の大半を国のために祈り過ごすのは変わらないが、今では自ら率先して国の安寧を願っている。
おかげで最近は、国内では魔獣の獣害は発生していない。
獣害以外の災害も確認されていない。
「リリスのおかげで今日も国は平和だな」
「えへへ」
はにかむ彼女は可愛らしい。
彼女は最近、明るくなった。
制約魔法によって一日の自由時間は少ない彼女だが、その少ない自由時間は俺とこうして話をするのが日課になっている。
断罪劇をしようとして、逆に断罪された俺たちだけれど。
罪を償う機会を、こうして与えられた。
今は二人で、罪を雪ぎながら生きている。
「リリス、今度領民たちが俺たち夫婦の結婚を祝してパーティーをしてくれるらしい。結婚式も必要がないからと挙げなかったけれど、せっかくだから祝ってもらおう」
「え、いいの!?」
キラキラと目を輝かせるリリスの頬に、キスをした。
「もちろんだ。みんなの善意だからな」
「やったぁ!!!」
「嬉しいものだな、人から慕われるというのは」
「…うん!」
ちなみに俺はこの地方の領地に送られる際、余計な争いを生まないため断種されている。
そして聖女であるリリスは、聖女でい続けるために処女でなくてはならない。
これも【制約魔法】で定められている。
俺たち夫婦には、子供はやってこない。
でも。
「息子の歓迎会も合わせてやるそうだ」
「楽しみね!」
領内の孤児院から一人の男児を、家を継がせるために迎え入れた。
爵位のない地方領主とはいえ、いなくなると困るのは領民たちだからな。
どうか俺とリリスに似ないで、まともに育ってくれることを祈る。
「なあ、リリス」
「うん?」
「今、俺は幸せだ。リリスは?」
「私も幸せよ」
「なら良かった」
罪は消えない。
償い続けるのが俺たちの人生だ。
それでも、俺たちは今…とても、幸せだ。
美しい婚約者がいた。
なにをやらせても完璧な女だった。
俺はその女が気に入らなかった。
完璧すぎるから。
「それがそもそもの、間違いだった」
美しいのは、俺を好きでいてくれて…俺に好かれたいとおしゃれしてくれていたから。
なにをやらせても完璧なのは、努力していたから。
彼女はこんなどうしようもない俺を心から慕ってくれていた。
なのに俺は彼女を冷遇した。
そして俺は…こともあろうに、平民出身の聖女と恋に落ちた。
「いや、恋に落ちたのではなく籠絡されたのだ」
平民出身の聖女は、可憐な女だった。
だが可憐な顔の裏で恐ろしいことをしていた。
俺の婚約者に虐められていると「偽証」したのだ。
俺はそれにまんまと騙されて、公衆の面前で婚約者を断罪して婚約破棄した。
だが、俺の弟…優秀で俺より先に生まれていればと惜しまれるほどの男だったのだが、奴が「偽証」の証拠を持って颯爽と現れた。
「そして俺と聖女は、逆に男に断罪された」
結果俺は廃嫡され、爵位ももらえず僻地の地方領主となることが決まった。
もちろん監視付きだ。
聖女は教会の奥に幽閉された。
国のために一生を捧げることを【制約魔法】によって定められて。
婚約者…いや、元婚約者はまだ婚約の決まっていない弟と再婚約した。
「弟はきっと、この時のためにわがままを言って婚約者を作らなかったのだろう」
あの男はきっと、俺がいつかやらかすのをわかっていたのだろう。
実際そうなった。
さて、俺は今から地方の領地に行く。
爵位はなく、私財も元婚約者への賠償金でほぼ底を尽きており、持っているのは与えられた地方の領地とそこにある屋敷とその設備だけ。
あと…元婚約者から贈られた、魔力回復薬二本と治癒薬三本。
「なぜ彼女は、これを俺に最後になってくれたんだろう」
答えは、領地に着いたらわかった。
領地に着いて馬車を降りたら、ぼろぼろの姿の領民たちに土下座で出迎えられた。
何事かと思ったが、どうやらこの領地は今大変なことになっているらしい。
【魔獣の大量発生】
村の狩人も、怪我をして動けないらしい。
人喰いの魔獣は幸いいないが、それでも獣害は発生する。
食うつもりはなくとも攻撃してくる魔獣は多く、領民たちはみんな怪我だらけだ。
前の領主はなにもしてくれなかったのだと皆嘆く。
だから、新しい領主である俺だけが頼りらしい。
「…」
元婚約者のくれた魔力回復薬と治癒薬を見つめる。
これがあれば、怪我をしても即死しなければ死なないだろう。
使い果たした魔力が完全回復する薬と、四肢の欠損ですら癒す万能薬。
ならば。
「俺が魔獣を討伐してこよう」
領民たちが騒めく。
そんな領民たちに、俺は元王族だから魔術を使えることを伝えた。
そして魔獣は死んだのを確認してから村の広場に転移させるので、血抜きなどの処理をして肉を保存して、他の皮や牙などの素材も別途保存してほしいと伝えた。
それらは全て、商人ギルドに売るとも伝えた。
そしてそれで得たお金を、みんなで分け合おうと約束もした。
「さて、魔獣退治だ」
剣術や魔術は習得している。
元婚約者にやれと口うるさく言われていたから、いやでも習得してしまった。
とはいえ実戦経験はない。
それでもやるしかないのだ。
「…っ」
村近辺の森に入る。
一歩足を踏み入れただけで、まるで異世界のような感覚。
魔力探知の魔術で魔獣を探すと、あちこちにウジャウジャいた。
それを一匹一匹、命懸けで確実に仕留めていく。
当然怪我をした、腹に風穴が空いたり、手足が吹っ飛んだりした。
「…はぁっ、はぁっ」
それでもその度に、彼女にもらった治癒薬を少しずつ飲んで身体を回復させては魔獣を狩る。
気付けば領地に来て【二度目の】朝を迎えて、三本もあった治癒薬は底を尽きていた。
幸い、魔力回復薬はまだかろうじてあと一口分残っているが。
「さて」
残っていた魔力を使い、魔力探知の魔術を使う。
領地の近くには、魔獣は確認できない。
「はは、ははは!やった!やってやったぞ!」
彼女のおかげだ。
元婚約者に、助けられた。
…胸が痛むのは、今更だ。
村に戻ると、みんなが大量の保存した肉と素材たちと一緒に待っていてくれた。
俺は最後に残った一口分の魔力回復薬を飲んで、領民たちを治癒した。
動けなくなった狩人ももちろん治癒した。
そしてその狩人の伝手で、商人ギルドに肉や素材を適正価格で売った。
そして領民たちと魔獣討伐で得た金品を分け合った。
「みんな、心から感謝してくれたな」
結果領民たちは、地方の村人とは思えないほどの大金持ちとなった。
だが彼らは生活スタイルを大きくは変えず、贅沢は程々にして、勤勉に働く。
俺もただの地方の領主にしてはかなりの大金持ちとなったが、生活に必要なお金と将来に向けての貯蓄と、領地経営に必要なお金と税金を国に払う分を残して…あとは全部国に寄付した。
両親にも弟にも、弟の婚約者となった彼女にも迷惑をかけすぎたから。
お詫びのつもりだった。
「俺に男爵位を叙爵する?」
「はい」
どうしてそうなったのかといえば、魔獣討伐で国の安寧に貢献し、国に寄付までしたからだという。
父上と母上…いや、国王陛下と王妃殿下の親心だろうか、しかし俺はそれを固辞した。
俺は爵位も持たない、ただの地方領主でいい。
その方が、また勘違いして増長することもないだろう。
そうすると、叙爵する代わりに魔獣討伐の恩賞として欲しいものはないかと聞かれた。
「なら俺は…欲しい女がいます」
俺は、女を欲した。
俺が欲した女は、聖女リリス。
俺の元婚約者を「偽証」で「悪役令嬢」に仕立て上げた悪女だ。
そして、国のために祈り続けることを【制約魔法】によって義務付けられた哀れな聖女でもある。
彼女は俺のところに来てからも毎日のように国のために一日の大半祈り続け、祈りが終わると泣き暮らす。
俺はそんな彼女を献身的に支えた。
「大丈夫だ、リリス。贅沢はさせてやれないが、俺がお前を守るよ」
「どうして…」
「同じ【罪を背負った者】同士だからだよ。一緒に立ち直ろう。それまで支えるから」
「アダムさまぁっ…」
…そう言えば、聖女が来てから久々に人に名前を呼んでもらえた気がする。
それが嬉しくて、俺は彼女の額にキスをした。
泣き暮らすだけだったリリスは、やがて泣かなくなった。
一日の大半を国のために祈り過ごすのは変わらないが、今では自ら率先して国の安寧を願っている。
おかげで最近は、国内では魔獣の獣害は発生していない。
獣害以外の災害も確認されていない。
「リリスのおかげで今日も国は平和だな」
「えへへ」
はにかむ彼女は可愛らしい。
彼女は最近、明るくなった。
制約魔法によって一日の自由時間は少ない彼女だが、その少ない自由時間は俺とこうして話をするのが日課になっている。
断罪劇をしようとして、逆に断罪された俺たちだけれど。
罪を償う機会を、こうして与えられた。
今は二人で、罪を雪ぎながら生きている。
「リリス、今度領民たちが俺たち夫婦の結婚を祝してパーティーをしてくれるらしい。結婚式も必要がないからと挙げなかったけれど、せっかくだから祝ってもらおう」
「え、いいの!?」
キラキラと目を輝かせるリリスの頬に、キスをした。
「もちろんだ。みんなの善意だからな」
「やったぁ!!!」
「嬉しいものだな、人から慕われるというのは」
「…うん!」
ちなみに俺はこの地方の領地に送られる際、余計な争いを生まないため断種されている。
そして聖女であるリリスは、聖女でい続けるために処女でなくてはならない。
これも【制約魔法】で定められている。
俺たち夫婦には、子供はやってこない。
でも。
「息子の歓迎会も合わせてやるそうだ」
「楽しみね!」
領内の孤児院から一人の男児を、家を継がせるために迎え入れた。
爵位のない地方領主とはいえ、いなくなると困るのは領民たちだからな。
どうか俺とリリスに似ないで、まともに育ってくれることを祈る。
「なあ、リリス」
「うん?」
「今、俺は幸せだ。リリスは?」
「私も幸せよ」
「なら良かった」
罪は消えない。
償い続けるのが俺たちの人生だ。
それでも、俺たちは今…とても、幸せだ。
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