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ねえ、にーにー、僕は寂しくないよ
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「バルム、バルム」
「はぁい、なぁににーにー?」
「今度はさ、国の南方まで出向かないといけないんだ。だから行き帰りに日程が掛かるから、帰ってくるまでの間寂しくないようにこれ」
にーにーからの突然のプレゼント。
それは可愛らしいうさぎのぬいぐるみ。
「え、可愛い!」
「それを俺だと思って毎日抱きしめていてよ」
「うん!」
そしてにーにーはプレゼントをくれたその足でそのまま慌ただしく、国の南方へ加護を与えに向かった。
「… ねえ、にーにー、僕は寂しくないよ」
うさぎちゃんを抱き抱えながらそう呟く。
それは精一杯の強がり。
「でもにーにーのお顔が見たいな」
ごろんとうさぎちゃんを抱きしめたままベッドに寝転ぶ。
「にーにーと一緒にいられない日はね、お勉強を頑張ってるよ。それから、お勉強の時間以外はこうしてゴロゴロしてる」
うさぎちゃんに話しかける。
「にーにーがいないとね、世界が色褪せて見えるけど…でも、自棄になったりせずににーにーの役に立てるように知識は蓄えてるからね。特に宗教関係。それ以外は何もやる気ないけど!」
にーにーの役に立てること以外でやる気になれることはない。
でもにーにーの役に立てることならやる気になる。
「でも…でもでも、やっぱり……早く帰ってきてね、にーにー」
そっとうさぎちゃんの額にキスをした。
「…バルムが可愛い」
うさぎのぬいぐるみに埋め込んでおいた盗聴器から聞こえる声が、俺を癒してくれる。
可愛い、可愛い、可愛い。
俺の可愛いバルム。
本来ならば一日たりとも離れたくないのに。
でもお役目だ、仕方がない。
「ああバルム。そんなに俺のために努力してくれていたなんて」
さすがに国の南方は時間がかかり過ぎるからとうさぎのぬいぐるみをプレゼントしたが、正解だったな。
あれを渡していなければ、俺の方が先に心が折れていた。
バルムとは本当に、一日たりとも離れたくないから。
それにしてもバルムは頑張り屋さんだなぁ。
可愛い、可愛い、可愛い。
「ああ、バルム。こちらでのお祈りも今終わったよ。早く帰るからね」
盗聴器の受信機を撫でて呟く。
バルムに早く会いたい。
「なるべく急いで帰ってくれ。バルムに会いたい」
馬車に乗り込む際にそう伝えておく。
その後もバルムの独り言を的確に拾う受信機に頬擦りしながら、帰路についた。
何日もかけて帰ると、涙目のバルムに抱きつかれて出迎えられた。
その日一日中幸せ気分だったのは言うまでもなく、その日一日中バルムを甘やかしまくったのもまた言うまでもないことだった。
「はぁい、なぁににーにー?」
「今度はさ、国の南方まで出向かないといけないんだ。だから行き帰りに日程が掛かるから、帰ってくるまでの間寂しくないようにこれ」
にーにーからの突然のプレゼント。
それは可愛らしいうさぎのぬいぐるみ。
「え、可愛い!」
「それを俺だと思って毎日抱きしめていてよ」
「うん!」
そしてにーにーはプレゼントをくれたその足でそのまま慌ただしく、国の南方へ加護を与えに向かった。
「… ねえ、にーにー、僕は寂しくないよ」
うさぎちゃんを抱き抱えながらそう呟く。
それは精一杯の強がり。
「でもにーにーのお顔が見たいな」
ごろんとうさぎちゃんを抱きしめたままベッドに寝転ぶ。
「にーにーと一緒にいられない日はね、お勉強を頑張ってるよ。それから、お勉強の時間以外はこうしてゴロゴロしてる」
うさぎちゃんに話しかける。
「にーにーがいないとね、世界が色褪せて見えるけど…でも、自棄になったりせずににーにーの役に立てるように知識は蓄えてるからね。特に宗教関係。それ以外は何もやる気ないけど!」
にーにーの役に立てること以外でやる気になれることはない。
でもにーにーの役に立てることならやる気になる。
「でも…でもでも、やっぱり……早く帰ってきてね、にーにー」
そっとうさぎちゃんの額にキスをした。
「…バルムが可愛い」
うさぎのぬいぐるみに埋め込んでおいた盗聴器から聞こえる声が、俺を癒してくれる。
可愛い、可愛い、可愛い。
俺の可愛いバルム。
本来ならば一日たりとも離れたくないのに。
でもお役目だ、仕方がない。
「ああバルム。そんなに俺のために努力してくれていたなんて」
さすがに国の南方は時間がかかり過ぎるからとうさぎのぬいぐるみをプレゼントしたが、正解だったな。
あれを渡していなければ、俺の方が先に心が折れていた。
バルムとは本当に、一日たりとも離れたくないから。
それにしてもバルムは頑張り屋さんだなぁ。
可愛い、可愛い、可愛い。
「ああ、バルム。こちらでのお祈りも今終わったよ。早く帰るからね」
盗聴器の受信機を撫でて呟く。
バルムに早く会いたい。
「なるべく急いで帰ってくれ。バルムに会いたい」
馬車に乗り込む際にそう伝えておく。
その後もバルムの独り言を的確に拾う受信機に頬擦りしながら、帰路についた。
何日もかけて帰ると、涙目のバルムに抱きつかれて出迎えられた。
その日一日中幸せ気分だったのは言うまでもなく、その日一日中バルムを甘やかしまくったのもまた言うまでもないことだった。
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