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皇帝陛下は僕を人質に欲しいんだね
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「人質として、バルム坊を寄越せ」
「それは…っ」
「出来ぬのか?私に歯向かうか?」
「…っ」
「出来ます、僕、人質になります」
僕がそう言うと、にーにーは苦しそうな顔で僕を見る。
皇帝陛下は、一つ頷いた。
「バルム坊の方が余程肝が座っているな」
「にーにーは僕のこととなると冷静でいられないので」
「愛されているな、バルム坊」
「はい」
満面の笑みで答えると、皇帝陛下は破顔した。
「うはははは!面白い子供だ。フェーダがハマるのも無理はない」
「…バルム」
「大丈夫だよ、にーにー。僕にはうさぎちゃんもいるしベルクさんもいるもの」
「…ん?ああ、そちらの護衛か」
「ベルクさんは連れて行ってもいいですよね?」
皇帝陛下は少し迷った後答えた。
「好きにせよ」
「よかった」
「だが、バルム坊を迎える準備はしてあるが護衛の方は準備はしていない。今から準備させよう」
皇帝陛下のその一言で、皇帝陛下のそばに控えていた人が慌ただしく動き出す。
「フェーダ、しばらくの間バルム坊は預かる」
「…いつまでですか」
「そなたの熱が冷めるまで、だな」
無理だ。
にーにーの僕への熱が冷めることは永遠にない。
だからにーにーは顔をさらに青くする。
「…本当に、そこまで入れ上げているのだな」
「皇帝陛下…」
「よい。そなたに人間味が出てきたのは良いことだ。私としても、なんとかしてみよう」
「なんとか?」
「そなたらの仲を引き裂かんとするものを、だ」
…皇帝陛下は、僕たちのことはそこまで悪く思ってない……の?
「このままではバルム坊もお前も危うい。物理的に引き離すが、なにも私はお前たちを引き裂く気はない」
「ですが…」
「私も読んだのだ、二人の本を」
「…!」
「さすがにあれを読むとなぁ…引き離せんよ。今は物理的に引き離すが、少しの辛抱だ。待っておれ。私からリュキア教を説得してみよう」
皇帝陛下は案外、話のわかる人のようです。
「…バルムを、よろしくお願いします」
「ああ、任せろ。人質とはいえ、優しく扱うと約束しよう」
「はい…」
「よろしくお願いします、皇帝陛下」
「うむうむ、バルム坊は本にあった通りのいい子だの」
皇帝陛下は満足そうに笑う。
「では、そういうことで。フェーダ、お前は帰っていいぞ」
「皇帝陛下、せめて馬車まで見送りしてもいいですか?」
「よいぞ。連れ帰らないよう見張りはつけるが」
「じゃあにーにー、馬車まで一緒に行こう」
「…うん」
にーにーと手を繋いで馬車へ向かう。
にーにーとはここで、一度お別れだ。
でも、今生の別ではない。
きっと、大丈夫。
「それは…っ」
「出来ぬのか?私に歯向かうか?」
「…っ」
「出来ます、僕、人質になります」
僕がそう言うと、にーにーは苦しそうな顔で僕を見る。
皇帝陛下は、一つ頷いた。
「バルム坊の方が余程肝が座っているな」
「にーにーは僕のこととなると冷静でいられないので」
「愛されているな、バルム坊」
「はい」
満面の笑みで答えると、皇帝陛下は破顔した。
「うはははは!面白い子供だ。フェーダがハマるのも無理はない」
「…バルム」
「大丈夫だよ、にーにー。僕にはうさぎちゃんもいるしベルクさんもいるもの」
「…ん?ああ、そちらの護衛か」
「ベルクさんは連れて行ってもいいですよね?」
皇帝陛下は少し迷った後答えた。
「好きにせよ」
「よかった」
「だが、バルム坊を迎える準備はしてあるが護衛の方は準備はしていない。今から準備させよう」
皇帝陛下のその一言で、皇帝陛下のそばに控えていた人が慌ただしく動き出す。
「フェーダ、しばらくの間バルム坊は預かる」
「…いつまでですか」
「そなたの熱が冷めるまで、だな」
無理だ。
にーにーの僕への熱が冷めることは永遠にない。
だからにーにーは顔をさらに青くする。
「…本当に、そこまで入れ上げているのだな」
「皇帝陛下…」
「よい。そなたに人間味が出てきたのは良いことだ。私としても、なんとかしてみよう」
「なんとか?」
「そなたらの仲を引き裂かんとするものを、だ」
…皇帝陛下は、僕たちのことはそこまで悪く思ってない……の?
「このままではバルム坊もお前も危うい。物理的に引き離すが、なにも私はお前たちを引き裂く気はない」
「ですが…」
「私も読んだのだ、二人の本を」
「…!」
「さすがにあれを読むとなぁ…引き離せんよ。今は物理的に引き離すが、少しの辛抱だ。待っておれ。私からリュキア教を説得してみよう」
皇帝陛下は案外、話のわかる人のようです。
「…バルムを、よろしくお願いします」
「ああ、任せろ。人質とはいえ、優しく扱うと約束しよう」
「はい…」
「よろしくお願いします、皇帝陛下」
「うむうむ、バルム坊は本にあった通りのいい子だの」
皇帝陛下は満足そうに笑う。
「では、そういうことで。フェーダ、お前は帰っていいぞ」
「皇帝陛下、せめて馬車まで見送りしてもいいですか?」
「よいぞ。連れ帰らないよう見張りはつけるが」
「じゃあにーにー、馬車まで一緒に行こう」
「…うん」
にーにーと手を繋いで馬車へ向かう。
にーにーとはここで、一度お別れだ。
でも、今生の別ではない。
きっと、大丈夫。
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