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お互いシスコン万歳な姉妹
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エヴリーヌ・フォセット。公爵令嬢である彼女は、割と唐突に前世の記憶を取り戻した。そしてその記憶によると、どうやらエヴリーヌは悪役令嬢らしい。
前世で家族を愛し、家族を大切に守り、良い行いをしてきた結果、好きな世界に転生する権利を得られたらしい。彼女が選んだのは大好きな乙女ゲームの世界。しかし、彼女はヒロインではなく悪役令嬢に転生していた。それも、ヒロインの姉。最後は身分剥奪の上国外追放されるラスボス悪役令嬢だ。
「私、幸せですわ!」
「お姉様?どうしたの?」
「こんなに可愛い妹がいて、とても幸せなのですわ!」
「ふふ。私もお姉様の妹で幸せ!」
だが彼女はこのように、心から喜んでいた。ヒロインである妹、エルヴィール・フォセットがとても可愛くて仕方ないからである。母から受け継いだストロベリーブロンドの髪に、父から受け継いだ珍しい赤色の瞳、ぷっくりとした血色のいい唇、歯並びの良く小さな口、高い鼻、将来は絶対に、守ってあげたくなるタイプの、小さくスレンダーな身体になるであろう愛くるしい体格。性格もとても純粋で誰にでも分け隔てなく優しく、愛くるしい。
むしろ自分がエルヴィールの中身にならなくてよかったと神に感謝するほどだ。
弟であるガハリエ・フォセットも父から受け継いだ烏の濡れ羽色の髪と赤色の瞳、高い鼻、薄い唇、歯並びの良い可愛いお口、将来は背が高くちょうどいい体格になるであろう身体つき。幼い頃から正義感に溢れ、優しい性格。もう本当に二人とも可愛くて仕方ないというのが、エヴリーヌの本音である。
もちろんエヴリーヌだって、父から受け継いだ烏の濡れ羽色の髪、母から受け継いだ青い瞳、高い鼻に蠱惑的な唇、将来はぼんきゅっぼんなナイスバディ確定の体格。ラスボス悪役令嬢に相応しい見た目である。さらに、皆から愛されてすくすくと健やかに成長できた。両親もこの兄弟を分け隔てなく接して愛した。エヴリーヌは妹や弟を可愛がるたび褒められた。
…だから、エヴリーヌは考えた。
ー妹の将来のために、婚約者である王子様を完璧王子に育てようと!
…意味がわからない。でも、エヴリーヌなりに考えた結果の答えである。
幸いにしてエヴリーヌには弟がいるので公爵家の跡継ぎは心配要らない。もしエヴリーヌが婚約者であるフレデリク王太子に振られた後修道院に入っても問題ないと踏んでの考えだ。
フレデリクは誰にでも分け隔てなく接する、優しくて正義感溢れる優しい王太子。甘々溺愛系で、エヴリーヌが乙女ゲームをプレイした時には身悶えするほどときめいたものだ。この男なら安心して妹であるエルヴィールを任せられる。
でも、ひとつだけ欠点がある。それはお花畑思考の持ち主であるということ。乙女ゲームでも、ヒロインの姉であるエヴリーヌと円満に婚約解消して、ヒロインであるエルヴィールと婚約出来ると考えていたほど。ちょっと引く。
だからそういうお花畑な考え方だけ矯正しつつ、乙女ゲーム通りの完璧王太子になっていただきましょうという作戦だ。ちなみに、エヴリーヌは婚約者であるのに自分がフレデリクと結婚するなんて一切考えていない。略奪してもらう気満々である。
ということで早速、五歳の頃からフレデリクの完璧王太子計画をスタートさせたエヴリーヌ。フレデリクは学力も魔術も武術も十分に天才の域にあるが、勉強をして更なる高みを目指さなければならない。そこでエヴリーヌは、子供ならではの距離感の近さで毎日フレデリクを応援し、行き詰まった時には励まし、時には叱り、時には元気付け、やる気を出させ、自信を持たせ、完璧王太子に仕立て上げる。
「エヴリーヌ!僕、頑張ったよ!見ててくれた?」
「もちろんですわ!さすがフレデリク様!素晴らしい剣技でしたわ!」
「ふふ、そっか…!じゃあ、もっと頑張らないとね」
「ええ、応援しておりますわ!フレデリク様!」
「うん、ありがとう!」
フレデリク完璧王太子計画を始めてから早数年。もう十五歳になったエヴリーヌ。フレデリクは目的通り、才もありながら自信に満ち溢れた、お花畑思考は捨てつつ、誰にでも分け隔てなく優しい、正義感の強い素晴らしい王太子となった。ここまでくると怖い。
だが、そろそろ学園生活も始まる。エルヴィールとも良い仲になるだろう…とエヴリーヌは勝手に思っている。それを悲しく思う自分に気が付いたエヴリーヌは少し戸惑う。
「エヴリーヌ?どうかした?」
「フレデリク様!すみません、少し考え事をしておりましたの」
「…何か悩み?僕で良ければ相談に乗るよ?」
「え、えっと…わかりましたわ…あの、その、妹のことで…」
フレデリクはエヴリーヌが話しやすいようにと、その背中をさすりながら聞く。
「エルヴィールのことで?どうしたの?」
「その…フレデリク様はいつ頃、エルヴィールと良い仲になるのかしらと」
「え?」
エヴリーヌの言葉に、フレデリクの雰囲気が変わる。怒っているのだと、鈍いエヴリーヌにも分かる。
「ねえ、エヴリーヌ。まさかとは思うけど、君は自分よりエルヴィールの方が王太子妃に相応しいと考えているの?」
「え、ええ。フレデリク様にはエルヴィールの方が…」
がしっ、とエヴリーヌの肩を真顔で掴むフレデリク。エヴリーヌは肩が痛いがそれどころではなかった。
「エヴリーヌには僕が浮気する男に見えるの?」
「い、いえ、そんなことはございませんわ!」
「ならその妄想は今すぐ忘れて。僕はエヴリーヌ一筋だからね?他の女性にうつつを抜かすことはないからね?いいね?」
「は、はい…」
あまりの剣幕に思わず頷くエヴリーヌ。
「わかってくれてよかった。僕はエヴリーヌ以外に妃も側室も持つ気はないからね。安心してね」
なんだかいつのまにか、すごく愛されていたかも知れないとようやく気づくエヴリーヌ。エルヴィールの恋のお相手はどうしようと悩む。でも、内心フレデリクの気持ちがすごく嬉しい。いつのまにか、エヴリーヌもフレデリクに惹かれていたのだ。
…そして学園生活が始まり一年が経ち、物語は幕を開けた。エルヴィールももちろん入学した。エルヴィールの皆からの評価は愛らしいご令嬢。なぜなら、あの容姿にあの性格だから。エルヴィールはみんなから愛されてとても幸せそうだ。
そして、エルヴィールはエヴリーヌが心配しなくとも別の攻略対象者と恋に落ちた。どうやらすぐに相思相愛になり、らぶらぶいちゃいちゃな様子だ。エヴリーヌも一安心である。エヴリーヌも、フレデリクからの寵愛を受け、フレデリクと相思相愛でとても幸せだ。
「お姉様!一緒に学食に行きましょう!」
「もちろん!可愛い妹と学園生活を送れて、幸せなのだわ!」
「ふふ、お姉様ったら!私もお姉様と一緒に学園生活を送れて嬉しい!」
シスコンだけは、二人とも治りそうにないがそこはご愛嬌である。
前世で家族を愛し、家族を大切に守り、良い行いをしてきた結果、好きな世界に転生する権利を得られたらしい。彼女が選んだのは大好きな乙女ゲームの世界。しかし、彼女はヒロインではなく悪役令嬢に転生していた。それも、ヒロインの姉。最後は身分剥奪の上国外追放されるラスボス悪役令嬢だ。
「私、幸せですわ!」
「お姉様?どうしたの?」
「こんなに可愛い妹がいて、とても幸せなのですわ!」
「ふふ。私もお姉様の妹で幸せ!」
だが彼女はこのように、心から喜んでいた。ヒロインである妹、エルヴィール・フォセットがとても可愛くて仕方ないからである。母から受け継いだストロベリーブロンドの髪に、父から受け継いだ珍しい赤色の瞳、ぷっくりとした血色のいい唇、歯並びの良く小さな口、高い鼻、将来は絶対に、守ってあげたくなるタイプの、小さくスレンダーな身体になるであろう愛くるしい体格。性格もとても純粋で誰にでも分け隔てなく優しく、愛くるしい。
むしろ自分がエルヴィールの中身にならなくてよかったと神に感謝するほどだ。
弟であるガハリエ・フォセットも父から受け継いだ烏の濡れ羽色の髪と赤色の瞳、高い鼻、薄い唇、歯並びの良い可愛いお口、将来は背が高くちょうどいい体格になるであろう身体つき。幼い頃から正義感に溢れ、優しい性格。もう本当に二人とも可愛くて仕方ないというのが、エヴリーヌの本音である。
もちろんエヴリーヌだって、父から受け継いだ烏の濡れ羽色の髪、母から受け継いだ青い瞳、高い鼻に蠱惑的な唇、将来はぼんきゅっぼんなナイスバディ確定の体格。ラスボス悪役令嬢に相応しい見た目である。さらに、皆から愛されてすくすくと健やかに成長できた。両親もこの兄弟を分け隔てなく接して愛した。エヴリーヌは妹や弟を可愛がるたび褒められた。
…だから、エヴリーヌは考えた。
ー妹の将来のために、婚約者である王子様を完璧王子に育てようと!
…意味がわからない。でも、エヴリーヌなりに考えた結果の答えである。
幸いにしてエヴリーヌには弟がいるので公爵家の跡継ぎは心配要らない。もしエヴリーヌが婚約者であるフレデリク王太子に振られた後修道院に入っても問題ないと踏んでの考えだ。
フレデリクは誰にでも分け隔てなく接する、優しくて正義感溢れる優しい王太子。甘々溺愛系で、エヴリーヌが乙女ゲームをプレイした時には身悶えするほどときめいたものだ。この男なら安心して妹であるエルヴィールを任せられる。
でも、ひとつだけ欠点がある。それはお花畑思考の持ち主であるということ。乙女ゲームでも、ヒロインの姉であるエヴリーヌと円満に婚約解消して、ヒロインであるエルヴィールと婚約出来ると考えていたほど。ちょっと引く。
だからそういうお花畑な考え方だけ矯正しつつ、乙女ゲーム通りの完璧王太子になっていただきましょうという作戦だ。ちなみに、エヴリーヌは婚約者であるのに自分がフレデリクと結婚するなんて一切考えていない。略奪してもらう気満々である。
ということで早速、五歳の頃からフレデリクの完璧王太子計画をスタートさせたエヴリーヌ。フレデリクは学力も魔術も武術も十分に天才の域にあるが、勉強をして更なる高みを目指さなければならない。そこでエヴリーヌは、子供ならではの距離感の近さで毎日フレデリクを応援し、行き詰まった時には励まし、時には叱り、時には元気付け、やる気を出させ、自信を持たせ、完璧王太子に仕立て上げる。
「エヴリーヌ!僕、頑張ったよ!見ててくれた?」
「もちろんですわ!さすがフレデリク様!素晴らしい剣技でしたわ!」
「ふふ、そっか…!じゃあ、もっと頑張らないとね」
「ええ、応援しておりますわ!フレデリク様!」
「うん、ありがとう!」
フレデリク完璧王太子計画を始めてから早数年。もう十五歳になったエヴリーヌ。フレデリクは目的通り、才もありながら自信に満ち溢れた、お花畑思考は捨てつつ、誰にでも分け隔てなく優しい、正義感の強い素晴らしい王太子となった。ここまでくると怖い。
だが、そろそろ学園生活も始まる。エルヴィールとも良い仲になるだろう…とエヴリーヌは勝手に思っている。それを悲しく思う自分に気が付いたエヴリーヌは少し戸惑う。
「エヴリーヌ?どうかした?」
「フレデリク様!すみません、少し考え事をしておりましたの」
「…何か悩み?僕で良ければ相談に乗るよ?」
「え、えっと…わかりましたわ…あの、その、妹のことで…」
フレデリクはエヴリーヌが話しやすいようにと、その背中をさすりながら聞く。
「エルヴィールのことで?どうしたの?」
「その…フレデリク様はいつ頃、エルヴィールと良い仲になるのかしらと」
「え?」
エヴリーヌの言葉に、フレデリクの雰囲気が変わる。怒っているのだと、鈍いエヴリーヌにも分かる。
「ねえ、エヴリーヌ。まさかとは思うけど、君は自分よりエルヴィールの方が王太子妃に相応しいと考えているの?」
「え、ええ。フレデリク様にはエルヴィールの方が…」
がしっ、とエヴリーヌの肩を真顔で掴むフレデリク。エヴリーヌは肩が痛いがそれどころではなかった。
「エヴリーヌには僕が浮気する男に見えるの?」
「い、いえ、そんなことはございませんわ!」
「ならその妄想は今すぐ忘れて。僕はエヴリーヌ一筋だからね?他の女性にうつつを抜かすことはないからね?いいね?」
「は、はい…」
あまりの剣幕に思わず頷くエヴリーヌ。
「わかってくれてよかった。僕はエヴリーヌ以外に妃も側室も持つ気はないからね。安心してね」
なんだかいつのまにか、すごく愛されていたかも知れないとようやく気づくエヴリーヌ。エルヴィールの恋のお相手はどうしようと悩む。でも、内心フレデリクの気持ちがすごく嬉しい。いつのまにか、エヴリーヌもフレデリクに惹かれていたのだ。
…そして学園生活が始まり一年が経ち、物語は幕を開けた。エルヴィールももちろん入学した。エルヴィールの皆からの評価は愛らしいご令嬢。なぜなら、あの容姿にあの性格だから。エルヴィールはみんなから愛されてとても幸せそうだ。
そして、エルヴィールはエヴリーヌが心配しなくとも別の攻略対象者と恋に落ちた。どうやらすぐに相思相愛になり、らぶらぶいちゃいちゃな様子だ。エヴリーヌも一安心である。エヴリーヌも、フレデリクからの寵愛を受け、フレデリクと相思相愛でとても幸せだ。
「お姉様!一緒に学食に行きましょう!」
「もちろん!可愛い妹と学園生活を送れて、幸せなのだわ!」
「ふふ、お姉様ったら!私もお姉様と一緒に学園生活を送れて嬉しい!」
シスコンだけは、二人とも治りそうにないがそこはご愛嬌である。
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